生き残りBAD END

とぅるすけ

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終章

天雷走破

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 「んーー…遅くない? 瑛太と花麗…」

 家に残されたショウ達は瑛太と花麗、主にシェフの花麗の帰りを待っていた。

「そうだな…」

「心配になってきた…小雨! 楓彩をお願い! 彩楓! 真希菜! ちょっと付いてきて!」

 

 ショウ、彩楓、真希菜の3人は瑛太と花麗を探しに行くべく、家の敷地から出た。
 空はどんよりと暗くなり、夜の暗さと共に雲がかかっていた。

「うーん…どこいったのかな…」

「待ってください…生体反応を調べてみます…」

 と、真希菜が挙手した。
 真希菜は目を閉じて立ち止まった。

「……ここから東南…1km弱……電気エネルギーと生存者《サバイバー》反応を確認…」

「瑛太だ! 生存者《サバイバー》と交戦してるんだ」

「ただし、正確な位置までは分かりません…電子の嵐がこちらの捜索を妨害しています」

「まぁ、東南に進んでみよう」

 次の瞬間、雷鳴と共に大気が震える。

「──きゃあ!」

「「!!」」

 ショウの可愛らしい悲鳴を他所に彩楓と真希菜は音のする方を見る。
 
「あっちだ! 行くぞ! ショウムート!」

「う、うん…(今更だけど雷怖ぇな…)」




 数分前

 雷を纏った瑛太は臨の体を纏ったレヴィアタンを睨みつける。

「……(こっちは能力に慣れてるけどレヴィアタンは臨さんの能力に慣れてない! 能力の強さでは不利だ熟練度ならこっちが上だ!)」

「へぇ? そんなこと出来るんだ…」

 花麗は瑛太から少し離れてそれを見ていた。
 離れすぎて他の生存者《サバイバー》の餌食になりかねないからだ。

「覚悟しろ…レヴィアタン…(花麗を守るために…臨さん…あなたを殺す…!)」


 ────刹那

 瑛太の姿は閃光と共に消え、レヴィアタンの頬に強烈な右ストレートが入る。

「───!?」

 当てられたことは理解した、だが、瑛太の姿を目視できない。
 眩い閃光が目まぐるしくレヴィアタンの前を横切り続け、レヴィアタンを翻弄した。

「ちっ!! (速いな…目視できないどころか…眩しくて視界が塞がれる!)」

「行けるっ! このまま───」

「だけど…──」

 ────刹那

 レヴィアタンを中心に広大な範囲で重力が下へと変動し、巨大なクレーターが出来上がる。
 周囲の建物には亀裂が入り、割れた窓ガラスなどが狂気なって降り注ぐ。

「なっ!?」

 瑛太は見えない衝撃波から距離を取りながら、花麗を抱き抱えて大通りに出る。

「───瑛太!?」

 静電気で髪の毛を逆立てた花麗は状況がわからないまま下ろされた。

「なんて強力なんだ…!」

 先程までいた路地は周囲の建物の残骸で埋もれてしまった。
 
 次の瞬間、残骸が離散し、高く跳ね上がった瓦礫がまたもや雨のように降り注ぐ。
 瑛太は再度花麗を抱き抱えて瓦礫の雨を交わし続ける。

「くっ!!」

 瓦礫の雨が止み、少し落ち着いたのもつかの間、レヴィアタンは瓦礫の中から姿を現した。

「わぁー! びっくりした! まさかこんな事になるなんて!」

 楽しげに瓦礫を蹴散らしているレヴィアタン。

「バカだなー…そんなの連発されれば慣れるっつーの!!」

────刹那

 雷を纏った瑛太の高速パンチはレヴィアタンに見切られ、腹部へのミドルキックのカウンターを貰ってしまった。

「───とりゃー!」

「──ぐっ!!」

 瑛太の体は軽く吹き飛び、体制を立て直し次の攻撃に備えた。
 予測通りレヴィアタンの鋭い一突きが飛んでくる。
 瑛太はその一突きを体制を横に反らしてかわし、がら空きになった腹部へボディを入れた。

「──お?」

「──シッ!」

 ここぞとばかりに何発も叩き込んだ。
 だが、手応えがない。それを感じた時には遅かった。

「はい! おしまーい!」

 次の瞬間、瑛太の体は見えない衝撃波に吹き飛ばされた。
 どうやらレヴィアタンはギリギリの所で障壁を貼り防御していたようだ。

「ぬわっ!」
 
 上手く着地ができず、地面を滑ってしまった。

「!! (まずいな…ペースがあっという間に持ってかれた! このままじゃ───)」

「瑛太!!」

 瑛太が体制を立て直そうとした瞬間、花麗の叫びが聞こえ、とっさに振り返る。

────刹那

 思い一撃が瑛太の右頬を掠める。

「あ、あぶね…」

 瑛太は瞬時に強力な電磁気を発生させ起動をずらし、致命傷を避けた。

「お?」

 安心したのもつかの間、瑛太の体は何か見えないものに締め付けられ、宙に浮く。

「さっきのを最後にしてあげようと思ったのに…苦しいのが好きなんだね…!」

「…ぐっ…が…あ…あぁ…」

 瑛太の体が徐々に捻られていく。

「あぁぁぁ!!」

 悲痛な叫びと骨が折れていく嫌な音が辺りに響き渡る。


 その時だった。


 瑛太の体は無造作に落とされる。

「──ぐぁ!」

 瑛太は顔を上げて何が起こったのかレヴィアタンの方を見る。
 レヴィアタンと瑛太の間に両腕を広げて立つ猫耳と尻尾を生やした小さな体。

「み…花……麗……!」

「も、もうやめて…くれ…臨…」

「……花麗…ちゃん?」

 レヴィアタンの放っていた殺気が引いていく。

「もうやめて……」

 花麗の体が恐怖で震えているのが分かった。
 瑛太は立ち上がろうにも腰がやられてしまって立ち上がるどころか足に力が入らない。
 そして、

「お願いだから…見逃してくれ…臨…もう…」

「……そうだね…何やってんだろ…」

「…臨…」 

 レヴィアタンは優しい表情をする。
 次の瞬間、レヴィアタンの右手で作られた手刀は花麗の胸を貫いた。

「君の遊び相手をするのを忘れてたよーー!!」

「……っかひゅっ!!」

「!? 花麗!!!!」

 レヴィアタンは花麗の胸から腕を抜き取り、ミドルキックで華奢な花麗の体を瑛太の元へ吹き飛ばす。
 瑛太の視界には血を撒き散らしながらこちらへ転がる花麗。

「花麗! …おい!!」

 瑛太は動く上半身だけで花麗の元へ這いずる。

「しっかりしろ!!」

「え、瑛太……? うっ…い…たい…」

「大丈夫だ!ショウさんが治してくれる!」

 花麗は出血が酷く、目から光がみるみる無くなっていく。

「寝るな! しっかりしろ!」

「……なんだか……目がよく見え……ない……」

「あぁぁー…いいねぇ…愛せる人…泣かせてくれるねぇ…なんだか妬ましいよ…」

 レヴィアタンは静かに銀槍を引きずりながら歩み寄ってくる。
 瑛太は花麗の体をかばうように覆い被さり、レヴィアタンを睨む。

「アッチにはもちろん、この帝 臨にもそんな愛せる人はいない…ほんと妬ましい…」

 鉄を引きずる不快音は瑛太と花花麗の前で止まった。

「や、やめろ…!!」

「バイバイ…?」

 次の瞬間、眩いレーザーがレヴィアタンに直撃し、レヴィアタンの体は大いに吹き飛ぶ。

「ぐっ!!」

「神ヶ丘さん! 花麗さん!」

 そして瑛太の目の前に真希菜が着地した。

「ま、真希菜…さん…」

「瑛太! 花麗!!」

 遅れてショウと彩楓も駆けつけた。
 彩楓とショウ、真希菜は臨戦状態になり、レヴィアタンを見る。
 レヴィアタンは立ち上がり、3人を見るなり、

「はぁ、3対1はだるいな…よし! 帰ろっと…!」

 またもや人間離れした跳躍力でその場を離れ、一瞬で姿をくらませた。


「花麗! 目を開けろ!!」

 瑛太は立てないながら花麗の体を激しく揺すっていた。

「瑛太…離れて…」

 ショウは花麗の体に近づき瑛太を引き離して花麗の首元に触れ、脈を確認し、外傷、傷の深さを調べた。

「ショウさん! 花麗は!!」

「……彩楓…テレポート…帰ろう」

「ショウさん!!」

「……ごめんね…瑛太…」

 ショウは振り向きはしなかった。
 ただ花麗の体を優しく持ち上げて立っているだけだった。

「………そんな……」
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