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序5
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「どうしてだ? 何故お前がここにいるっっ!?」
私は全くバレていないとは断言できなかった。だが、隠密に事を進めようとしていたし、まさか決行日まで把握される程、筒抜けだとは思わなかった。
「あなた・・・・・・」
尚登はたらこ唇を太く分厚い舌でなめ回した。
「あなたはあやかしの中に間諜がいるとは考えなかったのですか? 凪紗さん」
「何っ!?」
いる訳がない。
あやかしは人間とは違って純粋な人達。
そんな者たちを疑うことなどできようがない。
「信じられない目ですね」
そのやりとりを影縫は目を細めながら、見ることしかできていない。
「ハハハ、その通りです。愚鈍なあやかしに間諜などいない。だとすればあやかしの中に人間が混じっていないとも限らないでしょ?」
しばらくの思考による硬直の後、理解した。
迂闊だった。変化の術か・・・・・・。
あやかし狩りの中に、暗部という、ごく一部しかしられていない謎の組織がある。
捕らえたあやかしに凄惨な実験をしていたとは聞いていたが、まさか人間を送りこんでいるなど知らなかった。そして、その組織の首領が尚登である。
「あなたが、あやかしに捕まり、誰に惹かれ、どう過ごしてきたなど全て手に取るように知っています。そして、あなたが都に戻って、あなたの父上、頭領に隠れてどんな活動をしてきたかも全て知っています。そして・・・・・・」
私は血走った目で尚登を睨みつける。
そんな私を侮蔑した視線で黄ばんだ歯を見せつけながら、尚登は言葉を続ける。
「あなたを心配して追ってきた、この化け物と会っていたことなど全てお見通しなんですよ」
もう可笑しくてたまらなかったのだろう。
尚登の哄笑は都全域に広がるようだった。
「もちろん爆弾は撤去させていただきました。ユーロピアンの技術は凄いですね。あやかしを屠るのに使わせてもらいますね。ありがとうございます」
あの強烈な光線もおそらく、ユーロピアンの物だろう。
あやかし狩りとユーロピアン。最悪の邂逅に私は泥土を噛みしめる。
「では、あなたの残念な頭で事情が飲み込めたところで・・・・・・」
尚登は動けない影縫に視線を移す。
「私はね。あなたの父上との義理もある。許嫁のあなたを殺したくない。だから未遂であることから、この件はなかったことにしたいのですよ」
私は足に力を込めて立ち上がった。
そして、すぐに動こうとしたところ、即座に後ろ屈強な男達に羽交い締めされる。
「離せ! 離せ!」
もがく私に尚登はある妖刀を掴んで、近づいた。
妖刀、小太刀合口拵え、村雨。
この刀は人間には普通の刃物程度の意味しか持たないが、あやかしにとっては絶大な効果を発揮する。
斬られたら血は止まることはなく、それこそ妖術でも用いなければ助からない。
「あなたは美しい人です。私はあなたとの婚約出来る日をずっと待ち望んでいました」
私は今、魅力的な恰好からほど遠い姿をしている。
頭巾を被り、小袖と裁付に、脚絆。すべて黒に統一されている。あやかし狩りの伝統的な装束の一つだ。
しかし、動けない私に尚登は頭巾をぞんざいに掴んで、投げ捨てる。
「美しい、実に美しい・・・・・・」
尚登は垂れ下がった目は蕩けそうな目つきになる。
私の顔がそんなにも好きなのだろう。
だが、私はそんなことに気を回している場合ではない、私の身に何が起ころうが、どうでもよく、それよりも影縫だった。なんとしてでも影縫を助け出したい。
そして、こんな状況に強いた尚登を強い憎しみを持って睨みつけていた。
私は全くバレていないとは断言できなかった。だが、隠密に事を進めようとしていたし、まさか決行日まで把握される程、筒抜けだとは思わなかった。
「あなた・・・・・・」
尚登はたらこ唇を太く分厚い舌でなめ回した。
「あなたはあやかしの中に間諜がいるとは考えなかったのですか? 凪紗さん」
「何っ!?」
いる訳がない。
あやかしは人間とは違って純粋な人達。
そんな者たちを疑うことなどできようがない。
「信じられない目ですね」
そのやりとりを影縫は目を細めながら、見ることしかできていない。
「ハハハ、その通りです。愚鈍なあやかしに間諜などいない。だとすればあやかしの中に人間が混じっていないとも限らないでしょ?」
しばらくの思考による硬直の後、理解した。
迂闊だった。変化の術か・・・・・・。
あやかし狩りの中に、暗部という、ごく一部しかしられていない謎の組織がある。
捕らえたあやかしに凄惨な実験をしていたとは聞いていたが、まさか人間を送りこんでいるなど知らなかった。そして、その組織の首領が尚登である。
「あなたが、あやかしに捕まり、誰に惹かれ、どう過ごしてきたなど全て手に取るように知っています。そして、あなたが都に戻って、あなたの父上、頭領に隠れてどんな活動をしてきたかも全て知っています。そして・・・・・・」
私は血走った目で尚登を睨みつける。
そんな私を侮蔑した視線で黄ばんだ歯を見せつけながら、尚登は言葉を続ける。
「あなたを心配して追ってきた、この化け物と会っていたことなど全てお見通しなんですよ」
もう可笑しくてたまらなかったのだろう。
尚登の哄笑は都全域に広がるようだった。
「もちろん爆弾は撤去させていただきました。ユーロピアンの技術は凄いですね。あやかしを屠るのに使わせてもらいますね。ありがとうございます」
あの強烈な光線もおそらく、ユーロピアンの物だろう。
あやかし狩りとユーロピアン。最悪の邂逅に私は泥土を噛みしめる。
「では、あなたの残念な頭で事情が飲み込めたところで・・・・・・」
尚登は動けない影縫に視線を移す。
「私はね。あなたの父上との義理もある。許嫁のあなたを殺したくない。だから未遂であることから、この件はなかったことにしたいのですよ」
私は足に力を込めて立ち上がった。
そして、すぐに動こうとしたところ、即座に後ろ屈強な男達に羽交い締めされる。
「離せ! 離せ!」
もがく私に尚登はある妖刀を掴んで、近づいた。
妖刀、小太刀合口拵え、村雨。
この刀は人間には普通の刃物程度の意味しか持たないが、あやかしにとっては絶大な効果を発揮する。
斬られたら血は止まることはなく、それこそ妖術でも用いなければ助からない。
「あなたは美しい人です。私はあなたとの婚約出来る日をずっと待ち望んでいました」
私は今、魅力的な恰好からほど遠い姿をしている。
頭巾を被り、小袖と裁付に、脚絆。すべて黒に統一されている。あやかし狩りの伝統的な装束の一つだ。
しかし、動けない私に尚登は頭巾をぞんざいに掴んで、投げ捨てる。
「美しい、実に美しい・・・・・・」
尚登は垂れ下がった目は蕩けそうな目つきになる。
私の顔がそんなにも好きなのだろう。
だが、私はそんなことに気を回している場合ではない、私の身に何が起ころうが、どうでもよく、それよりも影縫だった。なんとしてでも影縫を助け出したい。
そして、こんな状況に強いた尚登を強い憎しみを持って睨みつけていた。
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