雨梁探偵部事件ノート1 ~雨梁学園七不思議~

はぐるま さいき

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二章 神隠し

 一(side:一ノ瀬春香)

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 私の名前は一ノ瀬春香。自分で言うのも変な気がしますが、裕福な家庭に生を受けた根っからのお嬢様なんです。
 そんな私の朝は小鳥のさえずりと大きな洋風の窓から差し込む光で目が覚めるところから始まり、朝食は優雅にパンを食べて紅茶で一息、使用人の「そろそろお時間です」という言葉で学校へ出掛ける。なんて素敵なものでは決して無いんです。
 実際は、けたたましい目覚ましに何度も起こされ、布団の上で放心すること十数分。ふと時計を見ると大体六時二〇分過ぎ。急いで着替えて洗面所で最低限の身支度を整えますと、図ったようにママがご飯の準備を終えてくれています。それから「おはようございます」と「いただきます」が言い終わる前にご飯を食べ始めるんです。でも時間がなくて二膳しか食べられなくて。毎朝、明日は三膳食べる為に早起きしなくては、と思うんですが。なかなか早起きは三膳の得とはいかないですよね。
 ところで話は戻りますが、もちろん専属運転手なんていませんから学校までは持久走です。私の朝練はこの時点で始まったようなものですね。
 学校に着くのは大体六時五十五分。バレー部の朝練は七時からなので私が体育館に着くと皆は部活の準備を始めます。私は指図目鳩時計ですね。
 今日もいつもと変わらず、ご飯を二膳で済まして学校まで走っていきました。
 ただ、いつもと違ったのは私が体育館に着いた時。通常なら私が登校するまでは体育館を入ってすぐの所でお喋りなさってる先輩方と同級生の皆さんがいるんですが、今日は姿も話し声も感じられず妙に静かでした。
 走っている時は気付きませんでしたが、朝の学校って結構怖いんですよ。静かなことを意識すればする程要らない想像がふつふつと沸いてきます。同時に昨日のなっちゃんの話も頭を過ぎりますし。結局あの時話は中断されたまま続きを聞くことは無かったんですが、あの後どうなったんでしょう。考えると怖くなるので考えませんけど。
 意を決して、半開きになっていた体育館の扉を開けてみると、バレー部の皆さんは倉庫の前に集まっていました。私が入って来たことには誰も気付かなかったみたいです。
「おはようございます」
 暗い雰囲気を察しましたが耐えられず、わざといつもより明るく大きな声で挨拶をしました。皆さんは何だかぎょっと驚いたような反応を示されました。
 それから少し様子を伺ってから私は集団の一番後ろにいた美咲ちゃんと優奈ちゃんに近づきました。
「何かあったんですか?」
 先に口を開いたのは美咲ちゃんでした。
「なんか女の子のすすり泣きが聞こえるって」
「なら、早く出してあげないと」
 私は反射的に声に出していました。
「待って。春香ちゃん知らないの? 最近この学校出るんだよ」
 優奈ちゃんの声は少し震えているようです。
 私の頭に再び昨日のなっちゃんの怪談が浮かぶ。
 うーん、ここは優秀な先輩方に任せて避難しましょう。お手洗いにでも。
「わ、私、お手洗いに行ってきますわ」
 逃げようとすると美咲ちゃんに手を掴まれる。
「学校中どこでも出るんだよ」
 確かに、なっちゃんの話は階段でしたけど。
「でも、でも、い、いくらお化けさんでも一箇所にしか出れないんじゃないですか?」
 口ではそう言ってみたものの足はもう止まっていた。
「お化けが
 あぁ、聞きたくなかった。知りたくなかったです。私は美咲を睨みました。でも同時に凄く単純な疑問が浮かびました。
「なんで今更なんでしょう? この倉庫は今までもずっと使われてたわけですよね。急に怪談話が流行るのっておかしくないですか?」
 美咲ちゃんも優奈ちゃんも首を傾げていた。当然この時は私にも皆目見当がつきませんでした。
「あの~……」
 優奈ちゃんが恐る恐る口を開こうしたその瞬間でした。頼れる先輩達が開けた倉庫の扉の音が体育館に響いて、先輩達は中へと入って行きました。
 それから子供を連れて出てきてくれれば良かったのに。中には誰もいなかったそうです。きゃー怖いですわ。
 でも様子を見に来た顧問の先生に「サボんなや‼ はよ朝練せんかいっ‼」と怒鳴られたのはもっと怖かったです。ただ泣いてるだけなら実害無いですし、幽霊の方がマシですよね。
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