6 / 22
二章 神隠し
一(side:一ノ瀬春香)
しおりを挟む
私の名前は一ノ瀬春香。自分で言うのも変な気がしますが、裕福な家庭に生を受けた根っからのお嬢様なんです。
そんな私の朝は小鳥のさえずりと大きな洋風の窓から差し込む光で目が覚めるところから始まり、朝食は優雅にパンを食べて紅茶で一息、使用人の「そろそろお時間です」という言葉で学校へ出掛ける。なんて素敵なものでは決して無いんです。
実際は、けたたましい目覚ましに何度も起こされ、布団の上で放心すること十数分。ふと時計を見ると大体六時二〇分過ぎ。急いで着替えて洗面所で最低限の身支度を整えますと、図ったようにママがご飯の準備を終えてくれています。それから「おはようございます」と「いただきます」が言い終わる前にご飯を食べ始めるんです。でも時間がなくて二膳しか食べられなくて。毎朝、明日は三膳食べる為に早起きしなくては、と思うんですが。なかなか早起きは三膳の得とはいかないですよね。
ところで話は戻りますが、もちろん専属運転手なんていませんから学校までは持久走です。私の朝練はこの時点で始まったようなものですね。
学校に着くのは大体六時五十五分。バレー部の朝練は七時からなので私が体育館に着くと皆は部活の準備を始めます。私は指図目鳩時計ですね。
今日もいつもと変わらず、ご飯を二膳で済まして学校まで走っていきました。
ただ、いつもと違ったのは私が体育館に着いた時。通常なら私が登校するまでは体育館を入ってすぐの所でお喋りなさってる先輩方と同級生の皆さんがいるんですが、今日は姿も話し声も感じられず妙に静かでした。
走っている時は気付きませんでしたが、朝の学校って結構怖いんですよ。静かなことを意識すればする程要らない想像がふつふつと沸いてきます。同時に昨日のなっちゃんの話も頭を過ぎりますし。結局あの時話は中断されたまま続きを聞くことは無かったんですが、あの後どうなったんでしょう。考えると怖くなるので考えませんけど。
意を決して、半開きになっていた体育館の扉を開けてみると、バレー部の皆さんは倉庫の前に集まっていました。私が入って来たことには誰も気付かなかったみたいです。
「おはようございます」
暗い雰囲気を察しましたが耐えられず、わざといつもより明るく大きな声で挨拶をしました。皆さんは何だかぎょっと驚いたような反応を示されました。
それから少し様子を伺ってから私は集団の一番後ろにいた美咲ちゃんと優奈ちゃんに近づきました。
「何かあったんですか?」
先に口を開いたのは美咲ちゃんでした。
「なんか女の子のすすり泣きが聞こえるって」
「なら、早く出してあげないと」
私は反射的に声に出していました。
「待って。春香ちゃん知らないの? 最近この学校出るんだよ」
優奈ちゃんの声は少し震えているようです。
私の頭に再び昨日のなっちゃんの怪談が浮かぶ。
うーん、ここは優秀な先輩方に任せて避難しましょう。お手洗いにでも。
「わ、私、お手洗いに行ってきますわ」
逃げようとすると美咲ちゃんに手を掴まれる。
「学校中どこでも出るんだよ」
確かに、なっちゃんの話は階段でしたけど。
「でも、でも、い、いくらお化けさんでも一箇所にしか出れないんじゃないですか?」
口ではそう言ってみたものの足はもう止まっていた。
「お化けが一人とは誰も言ってないよ」
あぁ、聞きたくなかった。知りたくなかったです。私は美咲を睨みました。でも同時に凄く単純な疑問が浮かびました。
「なんで今更なんでしょう? この倉庫は今までもずっと使われてたわけですよね。急に怪談話が流行るのっておかしくないですか?」
美咲ちゃんも優奈ちゃんも首を傾げていた。当然この時は私にも皆目見当がつきませんでした。
「あの~……」
優奈ちゃんが恐る恐る口を開こうしたその瞬間でした。頼れる先輩達が開けた倉庫の扉の音が体育館に響いて、先輩達は中へと入って行きました。
それから子供を連れて出てきてくれれば良かったのに。中には誰もいなかったそうです。きゃー怖いですわ。
でも様子を見に来た顧問の先生に「サボんなや‼ はよ朝練せんかいっ‼」と怒鳴られたのはもっと怖かったです。ただ泣いてるだけなら実害無いですし、幽霊の方がマシですよね。
そんな私の朝は小鳥のさえずりと大きな洋風の窓から差し込む光で目が覚めるところから始まり、朝食は優雅にパンを食べて紅茶で一息、使用人の「そろそろお時間です」という言葉で学校へ出掛ける。なんて素敵なものでは決して無いんです。
実際は、けたたましい目覚ましに何度も起こされ、布団の上で放心すること十数分。ふと時計を見ると大体六時二〇分過ぎ。急いで着替えて洗面所で最低限の身支度を整えますと、図ったようにママがご飯の準備を終えてくれています。それから「おはようございます」と「いただきます」が言い終わる前にご飯を食べ始めるんです。でも時間がなくて二膳しか食べられなくて。毎朝、明日は三膳食べる為に早起きしなくては、と思うんですが。なかなか早起きは三膳の得とはいかないですよね。
ところで話は戻りますが、もちろん専属運転手なんていませんから学校までは持久走です。私の朝練はこの時点で始まったようなものですね。
学校に着くのは大体六時五十五分。バレー部の朝練は七時からなので私が体育館に着くと皆は部活の準備を始めます。私は指図目鳩時計ですね。
今日もいつもと変わらず、ご飯を二膳で済まして学校まで走っていきました。
ただ、いつもと違ったのは私が体育館に着いた時。通常なら私が登校するまでは体育館を入ってすぐの所でお喋りなさってる先輩方と同級生の皆さんがいるんですが、今日は姿も話し声も感じられず妙に静かでした。
走っている時は気付きませんでしたが、朝の学校って結構怖いんですよ。静かなことを意識すればする程要らない想像がふつふつと沸いてきます。同時に昨日のなっちゃんの話も頭を過ぎりますし。結局あの時話は中断されたまま続きを聞くことは無かったんですが、あの後どうなったんでしょう。考えると怖くなるので考えませんけど。
意を決して、半開きになっていた体育館の扉を開けてみると、バレー部の皆さんは倉庫の前に集まっていました。私が入って来たことには誰も気付かなかったみたいです。
「おはようございます」
暗い雰囲気を察しましたが耐えられず、わざといつもより明るく大きな声で挨拶をしました。皆さんは何だかぎょっと驚いたような反応を示されました。
それから少し様子を伺ってから私は集団の一番後ろにいた美咲ちゃんと優奈ちゃんに近づきました。
「何かあったんですか?」
先に口を開いたのは美咲ちゃんでした。
「なんか女の子のすすり泣きが聞こえるって」
「なら、早く出してあげないと」
私は反射的に声に出していました。
「待って。春香ちゃん知らないの? 最近この学校出るんだよ」
優奈ちゃんの声は少し震えているようです。
私の頭に再び昨日のなっちゃんの怪談が浮かぶ。
うーん、ここは優秀な先輩方に任せて避難しましょう。お手洗いにでも。
「わ、私、お手洗いに行ってきますわ」
逃げようとすると美咲ちゃんに手を掴まれる。
「学校中どこでも出るんだよ」
確かに、なっちゃんの話は階段でしたけど。
「でも、でも、い、いくらお化けさんでも一箇所にしか出れないんじゃないですか?」
口ではそう言ってみたものの足はもう止まっていた。
「お化けが一人とは誰も言ってないよ」
あぁ、聞きたくなかった。知りたくなかったです。私は美咲を睨みました。でも同時に凄く単純な疑問が浮かびました。
「なんで今更なんでしょう? この倉庫は今までもずっと使われてたわけですよね。急に怪談話が流行るのっておかしくないですか?」
美咲ちゃんも優奈ちゃんも首を傾げていた。当然この時は私にも皆目見当がつきませんでした。
「あの~……」
優奈ちゃんが恐る恐る口を開こうしたその瞬間でした。頼れる先輩達が開けた倉庫の扉の音が体育館に響いて、先輩達は中へと入って行きました。
それから子供を連れて出てきてくれれば良かったのに。中には誰もいなかったそうです。きゃー怖いですわ。
でも様子を見に来た顧問の先生に「サボんなや‼ はよ朝練せんかいっ‼」と怒鳴られたのはもっと怖かったです。ただ泣いてるだけなら実害無いですし、幽霊の方がマシですよね。
0
あなたにおすすめの小説
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる