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三章 探求
八(side:高橋翼)
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「最低。マジふざけんなし。アンタらも他言したらマジぶっ殺すかんな」
鏡子さんはぐちゃぐちゃになったペットボトルを握りしめた。そうやって、口では努めて強がっているけどよ、それでも所詮は虚勢に過ぎないことは誰の目で見ても明らかだろうぜ。だって、顔を覗き込んで見れば恥じらいで頬は赤く目は少し潤んで今にも泣き出してしまいそうな表情をしているから。この人も乙女の恥じらいというものを少なからず持っているんだよな。そう考えてみると可愛いもんじゃねぇか。そこまでビビることねぇじゃん。少し緊張が和らいだ。
鏡子さんは目元を拭り鼻をすすっていた。
「あたし、マジで怒ってるから。美鈴みたいになりたくなかったら今日耳にしたことは忘れろよ。いいな?」
鏡子さんは言いながら後方を顎でしゃくった。後ろを見ると彩和ちゃんに隠れながらぶつぶつと文句を垂れる美鈴さんの姿がある。忘れかけてたけど、この人はペットボトルがあんなになるまで美鈴さんをぶん殴ってたんだよな。流血こそなかったもののどんな仕打ちを受けたかは説明するのも憚られる。
前言撤回だ。やっぱこの人怖いぜ。鏡子さんが一瞬でも可愛らしいと思ってしまったなんて恐ろしい間違いをしてしまった。完全に美鈴さんの言葉に惑わされてたろ。危うく浸食されるところだった。あれが可愛いはずがない。
美鈴さんの言葉を真に受けてはいけない。変な宗教より危ない。何てったって変な宗教より怪しい人達なんだから、この人達は。今回のことが終わったら絶対に関わらない。俺は強く心に誓った。
鏡子さんはずーっと脅迫染みたことを言い続けている。俺はそれが嫌で彩和ちゃんの方に目を背け視線を交差させる。彩和ちゃんからも「もう嫌だよ」とか「助けてよ」とかそんな感じが伝わってくる。言葉を交わさなくても視線を交わすだけでも良くわかる。斎藤努、古城悟、青木彩和、一ノ瀬春香、二宮夏海、三坂千秋の6人とは小学校からの付き合いで、その中でも彩和ちゃんと努と悟とはよくつるんでいた。だからよくわかる。
彩和ちゃんは鏡子さんと美鈴さんというおぞましいモンスター2人の間にいる分俺より不幸だな。でも面倒だから助けない。そもそも俺の手に負える相手じゃないし。
悪いな、頑張れと目で言ってから先頭を歩く努の方を向く。こいつだけは淡々と何も言わねぇし一度も振り返らずに美術室に歩を進めていた。てめぇの姫が救護要請を出しているってのに呑気なもんだ。
美術室は1階の端っこで3年A組とは反対の端なので何気に遠い。と言っても2分もかからない。このメンツでなけりゃだべってる間にすぐ到着しちまう距離だ。俺は黙って耐えることにした。
「もう五時四〇分だ。どうでもいいことをゆっくり話すような時間はない。僭越ですが先輩方はあまり余計なことをおっしゃらないで下さい」
毎度のことだ。努はこっちの状況なんてお構いなしで急に口を挟む。しかも敬い0の挑発だ。意識してなのか無意識なのかはこの際どっちでもいいけどよ。どっちにしても厄介だぜ、本当に。
でも鏡子さんの矛先が努に向いてくれるのはありがたいか。丁度良い避雷針になる。
案の定、鏡子さんは蛙を睨む蛇のような殺気を込めた眼光で努のことを狙っていた。努はと言うと、自分が蛙であることに気付いていないようで蛇に睨まれたところでビビる様子なんて微塵も見せなかった。
「失礼します」
鏡子さんが突っかかろうとした矢先、努の方がほんの少し早く美術室の扉を叩いていた。と同時に返事も待たずに美術室の中へと入っていった。傍若無人という言葉は神様がこいつのために作った言葉に違いない。後で雑学好きの悟にも教えてやろう。
鏡子さんはぐちゃぐちゃになったペットボトルを握りしめた。そうやって、口では努めて強がっているけどよ、それでも所詮は虚勢に過ぎないことは誰の目で見ても明らかだろうぜ。だって、顔を覗き込んで見れば恥じらいで頬は赤く目は少し潤んで今にも泣き出してしまいそうな表情をしているから。この人も乙女の恥じらいというものを少なからず持っているんだよな。そう考えてみると可愛いもんじゃねぇか。そこまでビビることねぇじゃん。少し緊張が和らいだ。
鏡子さんは目元を拭り鼻をすすっていた。
「あたし、マジで怒ってるから。美鈴みたいになりたくなかったら今日耳にしたことは忘れろよ。いいな?」
鏡子さんは言いながら後方を顎でしゃくった。後ろを見ると彩和ちゃんに隠れながらぶつぶつと文句を垂れる美鈴さんの姿がある。忘れかけてたけど、この人はペットボトルがあんなになるまで美鈴さんをぶん殴ってたんだよな。流血こそなかったもののどんな仕打ちを受けたかは説明するのも憚られる。
前言撤回だ。やっぱこの人怖いぜ。鏡子さんが一瞬でも可愛らしいと思ってしまったなんて恐ろしい間違いをしてしまった。完全に美鈴さんの言葉に惑わされてたろ。危うく浸食されるところだった。あれが可愛いはずがない。
美鈴さんの言葉を真に受けてはいけない。変な宗教より危ない。何てったって変な宗教より怪しい人達なんだから、この人達は。今回のことが終わったら絶対に関わらない。俺は強く心に誓った。
鏡子さんはずーっと脅迫染みたことを言い続けている。俺はそれが嫌で彩和ちゃんの方に目を背け視線を交差させる。彩和ちゃんからも「もう嫌だよ」とか「助けてよ」とかそんな感じが伝わってくる。言葉を交わさなくても視線を交わすだけでも良くわかる。斎藤努、古城悟、青木彩和、一ノ瀬春香、二宮夏海、三坂千秋の6人とは小学校からの付き合いで、その中でも彩和ちゃんと努と悟とはよくつるんでいた。だからよくわかる。
彩和ちゃんは鏡子さんと美鈴さんというおぞましいモンスター2人の間にいる分俺より不幸だな。でも面倒だから助けない。そもそも俺の手に負える相手じゃないし。
悪いな、頑張れと目で言ってから先頭を歩く努の方を向く。こいつだけは淡々と何も言わねぇし一度も振り返らずに美術室に歩を進めていた。てめぇの姫が救護要請を出しているってのに呑気なもんだ。
美術室は1階の端っこで3年A組とは反対の端なので何気に遠い。と言っても2分もかからない。このメンツでなけりゃだべってる間にすぐ到着しちまう距離だ。俺は黙って耐えることにした。
「もう五時四〇分だ。どうでもいいことをゆっくり話すような時間はない。僭越ですが先輩方はあまり余計なことをおっしゃらないで下さい」
毎度のことだ。努はこっちの状況なんてお構いなしで急に口を挟む。しかも敬い0の挑発だ。意識してなのか無意識なのかはこの際どっちでもいいけどよ。どっちにしても厄介だぜ、本当に。
でも鏡子さんの矛先が努に向いてくれるのはありがたいか。丁度良い避雷針になる。
案の定、鏡子さんは蛙を睨む蛇のような殺気を込めた眼光で努のことを狙っていた。努はと言うと、自分が蛙であることに気付いていないようで蛇に睨まれたところでビビる様子なんて微塵も見せなかった。
「失礼します」
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