もう二度とあなたの妃にはならない

葉菜子

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私の人生

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 初めて出会ったのは8歳になったばかり頃だった。
 父に手を引かれ、王宮に初めて来た私は周りの煌びやかさに落ち着かず、父の手をぎゅっと握った。

 「ミーア、もうすぐ王子に会うのだから、大人しくしなさい」
 「はい、おとうさま」

 父と離れた手に、少し寂しさを覚えつつ、大きな扉の前に立つ。
 父に付いていくと前には女性と男の子がいた。

 「彼がミーアの婚約者だよ」

 そう言われて前に出ると、彼、ルドルフ様は私と視線を合わせるように、膝を曲げ、私の手を取った。

 「はじめまして、これからよろしく。ミーア嬢」

 ふわりと微笑む彼の澄んだ青空のような瞳と目が合う。
 どき、と心臓が跳ね、頬が赤くなっていくのが分かった。
 
 「はじめまして、ルドルフさま。ミーアともうします。よろしくおねがいたします」


 これが彼、ルドルフ第一王子との出会いだった。

 彼は素敵な人だ。王族の証と言われているプラチナブロンドの髪に、アクアマリンの宝石を落とし込んだような青い瞳。
 鋭い目をしながらも、笑うと優しい雰囲気を纏う。
 第1王子として文武両道なだけでなく、周囲の人には勇敢で時に優しい王子として、とても好かれている。

 そんな彼の婚約者に私が選ばれた大きな理由は、亡き母と王妃様がとても仲が良かったから。
 元々候補として挙がっていた令嬢のなかで一番地位が上の家は私の家であるオリファント公爵家だ。
 けど、それだけで婚約者になるとは限らず、最終的に数人になった中から、王妃様が私を選んだと聞いた。

 そんな私たちは一つ違いということもあり、子供の頃はとても仲が良かった。よく王宮の庭園で2人でお茶を飲んだり、走り回ったりした。
 この頃が一番楽しく、未来に対して何の疑いもなく、彼の妻になることを純粋に望んでいた。

 ルドルフ様が13歳になる年に、男子のみの寮制の騎士学校に入った。
 しばらく会えなくなることが寂しくて、泣く私に三年後に帰ってくるからと優しく頭を撫でて、ルドルフ様は行ってしまった。

 三年間厳しい王妃教育にひたすら耐えて、ルドルフ様に会えることを楽しみにしていた。王妃様はかなり厳しく、「これぐらいあなたのお母様はもうあなたの歳には出来ていましたよ? 彼女の娘なんだからあなたにも出来ます」と口癖のように言っていた。

 王妃様の期待に答えるべく、私は夜遅くまで、ずっと勉強づけの日々だった。母は私が3歳の時に亡くなり、父は私を見ると母を思い出すのかあまり会おうとはしなかった。

 私が14歳の時、ルドルフ様は騎士学校を首席で卒業して帰ってきた。
 久しぶりに会うルドルフ様はそれは端正な美青年に育っており、どきどきと心臓が跳ねた。

 「やあ、ミーア嬢。久しぶりだな」

 そう言って微笑むルドルフ様に顔が赤くなるのを止められなかった。

 やっと帰ってきたルドルフ様だったけれど、王族や貴族ならば16になる年に入学する学園に入ると、会えるのはせいぜい月に一度くらい。
 来年には私も学園に入るのでルドルフ様と一緒に居る時が多くなるのを楽しみにしていた。
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