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私の新しい人生
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もしかしたら私は夢でも見ているのかもしれない。
いや、死んでいたら天国? それとも地獄?
ここは一体どこなのだろう。
着替えてエイミーに付いて行く。見慣れないこの邸宅はやはり、公爵令嬢の時に住んでいた邸宅ではない。
立派な建物だけど、なんだか質素ね……。
着いたようで、エイミーが開けてくれた扉を通ると、そこには朝食がすでに並んであるテーブルに、記憶より皺の少ないお父様と女性がいた。
私はその顔を肖像画で知っていた。
「お母様……?」
呆然と呟く私に、にこりと微笑む、その顔は小さい頃ずっと見ていた肖像画とそっくりだ。
「ミーア、おはよう。どうしたの?」
肖像画の前で、瞬き一つすらしないお母様を眺め続けていた子供の頃。
お父様は私を愛してくれていたようだけど、私を見るとお母様を思い出すのかあまり会おうとはしてくれなかったし、会っても笑顔のようで、苦しそうな顔をするだけだった。
動かない私を不思議に思ったのか、お父様とお母様は私の顔を覗く。
目の前にいるお母様に気づけば私の目からはボロボロと涙が溢れていた。
「まあ! ミーアったら! どうしたのよ、泣かないで」
「どうしたんだ、怖い夢でも見たのか?」
涙を流した途端、ここでの8年間の私の記憶が流れ込んできた。お父様とお母様に守られて、いつも笑っていた。王都で常に一人で家にこもっていた私とは違い、いつも野原を駆け、お母様が作ったというサンドウィッチを食べ、馬に乗るのが好きだった。
お母様にギュッと抱きしめられ、背中を優しく叩かれると、この身体のどこにそんなに水分があったのかと思うくらい涙が止まらない。
もうここが、夢でも、天国でも、地獄でも、なんでも良かった。
お母様に抱きしめてもらえて、お父様に頭を撫でてもらえる今があればそれで良い。
そう思えるくらい、二人の腕の中は温かかった。
3人で食べた朝食はとても美味しかった。やっぱり、天国に来たのだと思ったのだけど、そう考えるとなぜエイミーはいるのか不思議だし、会う侍女や執事はなんとなく見慣れた顔ばかり。
そう考えると本当の私は眠っていて、夢でも見ているのかと思ったけれども、なんとこの家では動物を飼っていた。
動物をろくに見たことも、触れたこともない私にしては、随分リアルだ。
今私の前には、ふわっふわの茶色い犬がいる。名前はアーリーだ。
「……アーリー」
私の声に気づいた、アーリーは短い足をちょこちょこと動かして、私の足元にやってきて、私の顔を見る。
まるで撫でられることを期待している目はキラキラと輝いていた。
そろそろと手を伸ばし、撫でてみると、息を荒くしながら、アーリーは私に突っ込んできた。
私の夢で、こんなに可愛い犬はきっと出てこないだろう。
アーリーのふわふわの毛を撫でながら、考えるとなんだかこれが現実で、今までの王都での人生は夢だったとすら思えてきた。
けれども、あれは夢では無かった。今の自分が8歳に違和感を持っていることもそうだけど、あんなに辛くて苦しいことを悪夢だったと終わらせられなかった。
いや、死んでいたら天国? それとも地獄?
ここは一体どこなのだろう。
着替えてエイミーに付いて行く。見慣れないこの邸宅はやはり、公爵令嬢の時に住んでいた邸宅ではない。
立派な建物だけど、なんだか質素ね……。
着いたようで、エイミーが開けてくれた扉を通ると、そこには朝食がすでに並んであるテーブルに、記憶より皺の少ないお父様と女性がいた。
私はその顔を肖像画で知っていた。
「お母様……?」
呆然と呟く私に、にこりと微笑む、その顔は小さい頃ずっと見ていた肖像画とそっくりだ。
「ミーア、おはよう。どうしたの?」
肖像画の前で、瞬き一つすらしないお母様を眺め続けていた子供の頃。
お父様は私を愛してくれていたようだけど、私を見るとお母様を思い出すのかあまり会おうとはしてくれなかったし、会っても笑顔のようで、苦しそうな顔をするだけだった。
動かない私を不思議に思ったのか、お父様とお母様は私の顔を覗く。
目の前にいるお母様に気づけば私の目からはボロボロと涙が溢れていた。
「まあ! ミーアったら! どうしたのよ、泣かないで」
「どうしたんだ、怖い夢でも見たのか?」
涙を流した途端、ここでの8年間の私の記憶が流れ込んできた。お父様とお母様に守られて、いつも笑っていた。王都で常に一人で家にこもっていた私とは違い、いつも野原を駆け、お母様が作ったというサンドウィッチを食べ、馬に乗るのが好きだった。
お母様にギュッと抱きしめられ、背中を優しく叩かれると、この身体のどこにそんなに水分があったのかと思うくらい涙が止まらない。
もうここが、夢でも、天国でも、地獄でも、なんでも良かった。
お母様に抱きしめてもらえて、お父様に頭を撫でてもらえる今があればそれで良い。
そう思えるくらい、二人の腕の中は温かかった。
3人で食べた朝食はとても美味しかった。やっぱり、天国に来たのだと思ったのだけど、そう考えるとなぜエイミーはいるのか不思議だし、会う侍女や執事はなんとなく見慣れた顔ばかり。
そう考えると本当の私は眠っていて、夢でも見ているのかと思ったけれども、なんとこの家では動物を飼っていた。
動物をろくに見たことも、触れたこともない私にしては、随分リアルだ。
今私の前には、ふわっふわの茶色い犬がいる。名前はアーリーだ。
「……アーリー」
私の声に気づいた、アーリーは短い足をちょこちょこと動かして、私の足元にやってきて、私の顔を見る。
まるで撫でられることを期待している目はキラキラと輝いていた。
そろそろと手を伸ばし、撫でてみると、息を荒くしながら、アーリーは私に突っ込んできた。
私の夢で、こんなに可愛い犬はきっと出てこないだろう。
アーリーのふわふわの毛を撫でながら、考えるとなんだかこれが現実で、今までの王都での人生は夢だったとすら思えてきた。
けれども、あれは夢では無かった。今の自分が8歳に違和感を持っていることもそうだけど、あんなに辛くて苦しいことを悪夢だったと終わらせられなかった。
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