19 / 34
19
しおりを挟む
無難にクロワッサンと紅茶を頼む。
殿下とキース様のところに戻り、2人のところに運ばれてきた料理を見たところ、ラーメンとあんパンとメロンパンとプリンだった。
……よく見たら、思いっきりミッシェルが作った料理ばかりじゃないか。
「 この料理はアリア嬢とミッシェル嬢2人で作ってるのかな?」
キース様が料理に手を伸ばし、私に聞く。
実際はミッシェルがいたお陰で作れたが、それをそのまま言ったらミッシェルはすぐに王族の婚約者になってしまうだろう。そしたら、私の代わりにミッシェルが処刑されるなんてこともありえるかもしれない。
せめてミッシェルに好きな人か婚約者ができるまでは私が料理を考えましたという風で行くしかない。
「いいえ、うちのシェフたちが優秀でして、皆で話し合いながら作っていますわ。お気に召して頂けたなら光栄です」
謙遜しつつ、私も参加していると感じて貰えればいいが。
「そう、僕はラーメンの豚骨が好きなんだよね」
「ああ、私もそれを最近食べに行った。美味しかったな」
もしかして結構お店に行ってるな? エリーはラーメンを見ながら不思議な顔をする。
「パスタとは違うのですか?」
「ええ、同じ小麦粉から出来てるけど、少し違うの」
私とエリーが頼んだ料理が運ばれてくる。普通のクロワッサンにきょとんとした顔を殿下とキース様にされた。
「アリア嬢は普通のなんだ?」
「ええ、学園で出るのもどんな味か気になって」
実際はミッシェルとシェフが言い合いになりながら味を決めているが。
「そうなのか、流石だね」
終始和やかな雰囲気のお昼だったが、気がつけばこれが日課となってしまった。
……私は焦っていた。
学園に入学してから1ヶ月経った。それにもかかわらず、何も進展していない。もう第1王子であるアルフレッド様とキース様とは全く距離を置けないのでむしろ、あいつはいい奴だよ! 作戦に変わった。
積極的には関わらないが、声をかけられたら、ひたすら賛同している。
今日私は学園の外に、1人で出ていた。ニーナとエリーは王宮魔導師である、姉に会いに行くらしく私はそれを見送って王都を巡るために来た。
しかし、エリー以外の友人はいないし、最近、アルフレッド様とキース様と一緒にいることが多いからか、女子生徒からの視線がすごい。なんとか虐められていないのは私が侯爵令嬢だからだろう。
「うーん……ん?」
さしたる目的もなく街を歩いていたら、前から女性を連れて歩くキース様がいた。
目が合うと気まずいので、慌てて端により、適当なお店に入る。
すごく綺麗な女性を連れていたが本命だろうか。1人だけなんて珍しい。
お店をぐるりと見渡すと、古い本がたくさん並んでいた。
……こんなお店があったとは。
魔王についてとかなにかヒントになるものとか無いかなと棚に近づくと、ぬっと何かが出てきた。
「アンタ、なにを探しにきたんだい」
「え!」
出てきたのは杖をつき、目を細めた腰の曲がった小さなおばあちゃんだった。
「ご、ごめんなさい突然お邪魔してしまって」
「……ここは、普通の人だったら入ろうと思わない。魔法がかかってるからね。けど、アンタは入ってきた。何か探しているんだろう?」
「え、ええ、実は魔王について知りたいのですが……」
そう返すとおばあちゃんは後ろにあった椅子に座って杖をついたまま動かなくなった。
……探していいのだろうか?
おばあちゃんを気にしつつ、本の題名を1つ1つ見ていく。
本には『これであなたも一人前! 黒魔術の使い方!』『精霊は本当に存在した!? 精霊が起こした奇跡!』『あなたもドラゴンを目撃しろ! ~目撃情報と地名~』
……なんか題名が胡散臭いというか、軽い。これで大丈夫か?
怪しい題名しかない本を見てると、それはあった。
「……魔王」
手に取って、表紙をめくって見る。
「あれ? アリア嬢?」
「!?……うわっ!」
驚いて本を落としかけたが慌てて手で本を挟む。声の聞こえた方を見ると目を丸くしているキース様と目が合った。
殿下とキース様のところに戻り、2人のところに運ばれてきた料理を見たところ、ラーメンとあんパンとメロンパンとプリンだった。
……よく見たら、思いっきりミッシェルが作った料理ばかりじゃないか。
「 この料理はアリア嬢とミッシェル嬢2人で作ってるのかな?」
キース様が料理に手を伸ばし、私に聞く。
実際はミッシェルがいたお陰で作れたが、それをそのまま言ったらミッシェルはすぐに王族の婚約者になってしまうだろう。そしたら、私の代わりにミッシェルが処刑されるなんてこともありえるかもしれない。
せめてミッシェルに好きな人か婚約者ができるまでは私が料理を考えましたという風で行くしかない。
「いいえ、うちのシェフたちが優秀でして、皆で話し合いながら作っていますわ。お気に召して頂けたなら光栄です」
謙遜しつつ、私も参加していると感じて貰えればいいが。
「そう、僕はラーメンの豚骨が好きなんだよね」
「ああ、私もそれを最近食べに行った。美味しかったな」
もしかして結構お店に行ってるな? エリーはラーメンを見ながら不思議な顔をする。
「パスタとは違うのですか?」
「ええ、同じ小麦粉から出来てるけど、少し違うの」
私とエリーが頼んだ料理が運ばれてくる。普通のクロワッサンにきょとんとした顔を殿下とキース様にされた。
「アリア嬢は普通のなんだ?」
「ええ、学園で出るのもどんな味か気になって」
実際はミッシェルとシェフが言い合いになりながら味を決めているが。
「そうなのか、流石だね」
終始和やかな雰囲気のお昼だったが、気がつけばこれが日課となってしまった。
……私は焦っていた。
学園に入学してから1ヶ月経った。それにもかかわらず、何も進展していない。もう第1王子であるアルフレッド様とキース様とは全く距離を置けないのでむしろ、あいつはいい奴だよ! 作戦に変わった。
積極的には関わらないが、声をかけられたら、ひたすら賛同している。
今日私は学園の外に、1人で出ていた。ニーナとエリーは王宮魔導師である、姉に会いに行くらしく私はそれを見送って王都を巡るために来た。
しかし、エリー以外の友人はいないし、最近、アルフレッド様とキース様と一緒にいることが多いからか、女子生徒からの視線がすごい。なんとか虐められていないのは私が侯爵令嬢だからだろう。
「うーん……ん?」
さしたる目的もなく街を歩いていたら、前から女性を連れて歩くキース様がいた。
目が合うと気まずいので、慌てて端により、適当なお店に入る。
すごく綺麗な女性を連れていたが本命だろうか。1人だけなんて珍しい。
お店をぐるりと見渡すと、古い本がたくさん並んでいた。
……こんなお店があったとは。
魔王についてとかなにかヒントになるものとか無いかなと棚に近づくと、ぬっと何かが出てきた。
「アンタ、なにを探しにきたんだい」
「え!」
出てきたのは杖をつき、目を細めた腰の曲がった小さなおばあちゃんだった。
「ご、ごめんなさい突然お邪魔してしまって」
「……ここは、普通の人だったら入ろうと思わない。魔法がかかってるからね。けど、アンタは入ってきた。何か探しているんだろう?」
「え、ええ、実は魔王について知りたいのですが……」
そう返すとおばあちゃんは後ろにあった椅子に座って杖をついたまま動かなくなった。
……探していいのだろうか?
おばあちゃんを気にしつつ、本の題名を1つ1つ見ていく。
本には『これであなたも一人前! 黒魔術の使い方!』『精霊は本当に存在した!? 精霊が起こした奇跡!』『あなたもドラゴンを目撃しろ! ~目撃情報と地名~』
……なんか題名が胡散臭いというか、軽い。これで大丈夫か?
怪しい題名しかない本を見てると、それはあった。
「……魔王」
手に取って、表紙をめくって見る。
「あれ? アリア嬢?」
「!?……うわっ!」
驚いて本を落としかけたが慌てて手で本を挟む。声の聞こえた方を見ると目を丸くしているキース様と目が合った。
0
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる