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 とりあえず、しょっぱいものか甘いものかをクラスで聞いたところ、半々で分かれてしまったため、両方作ることとなった。

 クラスメイトを11人12人に分けて、私がクラス代表になってしまった。見兼ねたエリーがクラス副代表になり、トールがたこ焼きの代表、アンがベビーカステラの代表となった。
 今日はこの4人で、王都のシュタワイナ邸に行き、とりあえず作ってみる予定だったのだが。

 「このたこ焼き、美味しいな」
 「は? なんでこんなもの隠すの?」
 「これ美味しいね」 

 なぜ、第1王子と第2王子とキース様が目の前にいるのか。夢なら今すぐ覚めてほしいのに、なかなか覚めない。私はだいぶ寝ているようだ。

 エリーはこの3人と同じ空間にいても堂々としているが、トールは落ち着かないし、アンに至っては今すぐ気を失いそうなぐらい真っ青だった。
 私もじくじくと痛む胃をお腹を撫でて抑えつつ、なんとか笑顔でいられるくらいだ。

 「気に入っていただけたようで、よかったです。こちらを学園祭で出そうと思っているの。作れそうかしら?」
 「練習すれば出来ると思いますが、どこで、練習しましょうか? 流石にここにクラス全員呼ぶわけにはいきませんし……」
 「材料も見慣れないものばかりです……このたこ焼きに載っている茶色いソースと黄色いソースは……」

 それらはミッシェルが作ったものなので、私もよく分かっていない。
 ベビーカステラは大丈夫だろうということになったが、問題はたこ焼きだ。
 私も説明書を見ながら、シェフに手伝ってもらって形にしたので、正直、たこ焼きはソースは両方ともビンに詰めて送ってもらったものだし。

 「材料はこちらで用意します。学園からお金もいただいてますし、とりあえず2日間の人の順番を組んで、それぞれ役割を決めましょうか」


 こんな感じで、私、エリー、トール、アンで決めていった。殿下をはじめとした3人は視界に入れてなかったので、分からない。

 大方やることを決めたところで、食べ物が無くなっていることに気づく。
 
 「私、厨房から少し持ってきますね」

 今日のシュタワイナ邸には今は主がいないため、シェフと2人のメイドの3人しかいない。メイドたちも今回私たちが来るから頑張って準備してくれたが、もうすぐミッシェルとお父様が来る準備もあり、忙しそうだった。
 いくら、この邸の主がいないからといって大きいので、管理は大変だろう。

 というわけで私が取りに行くというと、エリーたちから驚いた顔をされた。

 「いえ! 私が取りに行きますよ!」
 「気にしないで、ここにいる中で厨房の場所を覚えているのは私だけだし。呼んだのも私なんだから」

 アンが慌てたように手を挙げたが、それに手を振る。
 一瞬、エリーかアンについて来てもらうべきかとも思ったが、横にいる王子たちの中に残るトールが可愛そうである。
 かといってトールを連れて行くのも正直知り合ったばかりなので、言いにくい。

 一人で行って、シェフに持ってきてもらおうと思っていると、キース様と目が合う。

 「僕がついて行こうか?」
 「……そうですね、お願いします」

 胡散臭い笑みに思わず断ろうかと思ったが、空気が少しでも軽くなるかもしれないと思い、承諾する。

 「私はたこ焼きを頼む」
 「ベビーカステラよろしくね」

 さすが王子。キース様に雑に頼めるのはこの人たちだけである。
 
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