乙女ゲームの悪役令嬢は妹に振り回されています!

葉菜子

文字の大きさ
32 / 34

32

しおりを挟む
 2人で並んで歩くのは妙に緊張した。厨房が遠く感じて、気づけば早足になっていた。

 「あれ……?」

 やっとの思いで着いた厨房にシェフがいない。もぬけの殻だった。ただ、材料はそのままなので、もしかしたらメイドに力仕事でも任されたのかもしれない。
 しょうがない。自分で作るかと腕まくりをすると、キース様と目が合う。

 「私が作りますので、キース様待ってもらっていいですか?」
 「え。アリア嬢が作るの?」
 「ええ、私が作ります」

 キース様は少し考え込むような仕草をした後、顔を上げると微笑む。

 「じゃあ僕も手伝うよ」

 は?

 「い、いや……、大丈夫よ。私1人で……」
 「2人でやった方が早いしね」

 話を聞かずに厨房に入ってそこら辺のものを触って行く。
 勝手に移動させるなと言いたいが、強くは出れない。

 結局、キース様には手伝ってもらうことになってしまった。自分は押しに弱いことに気づいた。

 「キース様、生地を準備するので、焼くのをやってもらっていいですか? ここに立っててください」

 うろうろしようとするキース様を丸の凹みがたくさんある鉄板の前に立たせ、生地を作り始める。
 
 ミッシェルのメモを見ながらひたすらかき混ぜる。キース様に凄く見られてるせいか、やりにくい。卵を片手で割った時にはおお~、と声を上げていた。キース様料理とかしなさそうね……。

 「キース様、油は塗りましたか?」
 「? 塗ってない」
 「油塗らなきゃ、丸く作れませんよ。塗ってください」
 「へー、そうなんだね」
 「これが油です」

 キース様に油を渡すとそのまま凹みに流し始めた。いや、量が多い!

 「キース様! 油は少しで十分です! このはけで塗ってください!」
 「え? うん、分かった」

 丸い凹みから溢れるほどに入った油を横に移していくキース様を見ながら不安になる。全部私がやりたい……。

 なんとかキース様が油を広げた後、生地を流し込んでいく。横からキース様の声が上がるたび、なんでもないことなのに、妙に緊張する。

 一口大に切ったタコを入れ、キース様が持っていたハケを奪い、丸めるためのピックを持たせる。

 「これで丸めてください、こうやってひっくり返せば出来ます」
 「おお」

 くるりと回して、見本を見せるとまたまた声が上がるので、やりにくい。
 
 「分かった。やってみるよ」
 「じゃあお願いしますね」

 片付けをしながら、皿を出しちらりと横目で様子を見ると、キース様はたこ焼きを回すのに四苦八苦していた。思わずくすりと笑みが溢れる。そんな私に気づいていたようでキース様も苦笑を浮かべた。

 初めてみたキース様のその顔に思わず声を上げて笑った。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...