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序章.美しき想い出
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まだ日がで始めたばかりの早朝、朝露に濡れ日の出を反射し眩しい綺麗な庭の隅に僕は一人出てきていた。相変わらず自分が下働きとして仕える屋敷は庭まで広大で今でもたまに迷ってしまう、しかしそのおかげでこの時間帯のこの場所でなら誰にも見られる事はない。なぜわざわざこんな早朝にこんな庭の隅に来ているかと言うと……日課の『魔法』の練習だ。
「『我が願いの対価は華一輪』」
本当はいけない事だが庭に植わってる木の花を一輪採りそれを右手で握りつぶす……すると途端に花は枯れ果て、遂には塵となり風に運ばれていき、そして僕の右腕を通してその花の魂が記憶と一緒に流れ込んでくる、いつもの事だ……気をつけなければ僕自身が植物になり日の光を求め彷徨い続けるだけの抜け殻になってしまうと亡き母に口を酸っぱく言われていたがそもそも僕の『魔法』は規模がとても小さい上にそう頻度も高くない……。
「『望むは癒し』」
その花を対価とした『魔法』はちゃんと発動し同じ部屋の下働き仲間のイジワルなディンゴに殴られた痣や切り傷を癒してくれる……まぁ、だから気味悪がられてますます酷くなるのだが……『魔法』の成功と同時に自分の失敗にも気づき小さく舌打ちしてしまう。その失敗を失敗で無くすために即座にこの場を離れようとするが──
「貴方はだぁれ? ここで何をしているの?」
──後ろから聞こえた可愛らしくも凛とした声にそれすら失敗した事を悟る。先程流れてきた花の記憶にたまに彼女……館の主人の一人娘でつまり僕の雇い主が最近ここに朝の散歩に来る事が映像となって流れてきたのだ。内心の動揺を押し隠し必死に言い訳の言葉を考える、今ここでしていた事がバレると不味い最悪殺されてしまう……!!
「……貴方、魔法使いなの? 」
僕の焦りを見抜いた訳ではないのだろうけど彼女は僕の正体を言い当てた、言い当ててしまった……これで僕の居場所はここには無くなるだろう、良くてこの街から追い出され悪くて火刑に処され母と同じ末路を辿るだろう……迂闊だった、母さんはきっと許してはくれない。
「……」
僕が俯いて黙っていると不意に彼女が近づいてくる……今なら相手はまだ油断しきっている、殺す事は容易い…………でもそれをしてしまったらそれこそ母さんに怒られるだろう、僕が諦めの境地に達した時彼女は──
「別に黙っててあげてもいいわよ? 」
──そう、淡く微笑むのだった。
▼▼▼▼▼▼▼
「えぇー? 魔法って誰でも使えるわけじゃないのー? 」
そう言って目の前の彼女……領主の娘は形だけ拗ねてみせる。さっきまで『魔法について教えてくれるなら』という条件で見逃して貰ったけど、残念ながら彼女……より正確に言うなら彼女たちレナリア人は奇跡が使えない......そんな態度を取られても対人経験の乏しい僕にはどうすればいいのかがわからず挙動不審に目を彷徨わせるしか出来ない............。
「ごめんなさい、貴方を困らせたい訳じゃないのよ? 」
そんな僕に彼女は目尻を下げ申し訳なさそうに謝ってくる……そんな顔をさせたい訳じゃないのにこっちが申し訳なくなってくる、こんなんじゃ母になんてからかわれるかわからない。
「いや、こっちこそどうすればいいのかわからなくてごめん......」
「いいのよ、魔法を使えなかったのは残念だけどそんなに悲しんでた訳でも、貴方を困らせたかった訳でもないの」
「ならいいけど……魔法は僕たちガナン人にしか使えない奇跡なんだ」
そう、奇跡は僕たちガナン人と呼ばれる人達にしか扱えない神秘だ。だけども四千年前の大戦でレナリア人に敗北したガナン人は土地を奪われて支配され、隷属を強いられた挙句に悪魔の眷属として忌み嫌われ、一部の例外を除き魔法使いであるガナン人は発見次第即通報され、教会か軍が出張ってくる。......そんな事を領主の娘である彼女が知らないはずはないのに、野良の魔法使いである僕を庇ってまで魔法について知りたかったのか僕にはわからない......。
「......知ってると思うけど魔法使いを匿うのはこの国では罪だ、そこまでしてなんで魔法について知りたかったの? 」
「......空を自由に飛べたら楽しそうだとは思わない?」
「…………」
「…………冗談だから、そんな目で見ないで」
空を自由に飛びたいだなんて言うものだからつい胡乱な目で彼女を見てしまった。
「本当は戦うための力が欲しいのよ!」
「……なんで? 正直、領主の娘である君が持つ必要はないんじゃない?」
なんでお嬢様の彼女が戦うための力なんかを? ……それに魔法で戦うなんて、命知らずだ。
「最近街で魔物が出たみたいなのよ、でもほら、私の領地って辺境にある上に小さいじゃない? 魔物なんて領軍五百名じゃ倒せないし、中央からも遠くて…………」
…………まぁ、確かにたった五百人じゃ魔物なんて倒せない。
「だから領主一族として私が倒そうと思って!」
「それがわからない」
だからってなぜ自分で倒そうと思うんだろう? 魔物はそれこそ僕たち魔法使い以外だと帝都にいる『機士』か『狩人』じゃないと倒せる相手じゃない。
「ふふ、困ってる人がいれば助ける、それが自領の民なら尚更よ!」
…………そんなことを言いながら朝日を反射しながら微笑む彼女に僕は目が離せなかった......そんな場合じゃない、彼女を説得しなければと思うけれど……僕は初めての感覚に翻弄されていた…………けど、嫌じゃない。なんだか心臓がドキドキして苦しいけど不快じゃない、この現象の名前をまだ知らないけど悪い事ではないと何故か確信が持てた。
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「『我が願いの対価は華一輪』」
本当はいけない事だが庭に植わってる木の花を一輪採りそれを右手で握りつぶす……すると途端に花は枯れ果て、遂には塵となり風に運ばれていき、そして僕の右腕を通してその花の魂が記憶と一緒に流れ込んでくる、いつもの事だ……気をつけなければ僕自身が植物になり日の光を求め彷徨い続けるだけの抜け殻になってしまうと亡き母に口を酸っぱく言われていたがそもそも僕の『魔法』は規模がとても小さい上にそう頻度も高くない……。
「『望むは癒し』」
その花を対価とした『魔法』はちゃんと発動し同じ部屋の下働き仲間のイジワルなディンゴに殴られた痣や切り傷を癒してくれる……まぁ、だから気味悪がられてますます酷くなるのだが……『魔法』の成功と同時に自分の失敗にも気づき小さく舌打ちしてしまう。その失敗を失敗で無くすために即座にこの場を離れようとするが──
「貴方はだぁれ? ここで何をしているの?」
──後ろから聞こえた可愛らしくも凛とした声にそれすら失敗した事を悟る。先程流れてきた花の記憶にたまに彼女……館の主人の一人娘でつまり僕の雇い主が最近ここに朝の散歩に来る事が映像となって流れてきたのだ。内心の動揺を押し隠し必死に言い訳の言葉を考える、今ここでしていた事がバレると不味い最悪殺されてしまう……!!
「……貴方、魔法使いなの? 」
僕の焦りを見抜いた訳ではないのだろうけど彼女は僕の正体を言い当てた、言い当ててしまった……これで僕の居場所はここには無くなるだろう、良くてこの街から追い出され悪くて火刑に処され母と同じ末路を辿るだろう……迂闊だった、母さんはきっと許してはくれない。
「……」
僕が俯いて黙っていると不意に彼女が近づいてくる……今なら相手はまだ油断しきっている、殺す事は容易い…………でもそれをしてしまったらそれこそ母さんに怒られるだろう、僕が諦めの境地に達した時彼女は──
「別に黙っててあげてもいいわよ? 」
──そう、淡く微笑むのだった。
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「えぇー? 魔法って誰でも使えるわけじゃないのー? 」
そう言って目の前の彼女……領主の娘は形だけ拗ねてみせる。さっきまで『魔法について教えてくれるなら』という条件で見逃して貰ったけど、残念ながら彼女……より正確に言うなら彼女たちレナリア人は奇跡が使えない......そんな態度を取られても対人経験の乏しい僕にはどうすればいいのかがわからず挙動不審に目を彷徨わせるしか出来ない............。
「ごめんなさい、貴方を困らせたい訳じゃないのよ? 」
そんな僕に彼女は目尻を下げ申し訳なさそうに謝ってくる……そんな顔をさせたい訳じゃないのにこっちが申し訳なくなってくる、こんなんじゃ母になんてからかわれるかわからない。
「いや、こっちこそどうすればいいのかわからなくてごめん......」
「いいのよ、魔法を使えなかったのは残念だけどそんなに悲しんでた訳でも、貴方を困らせたかった訳でもないの」
「ならいいけど……魔法は僕たちガナン人にしか使えない奇跡なんだ」
そう、奇跡は僕たちガナン人と呼ばれる人達にしか扱えない神秘だ。だけども四千年前の大戦でレナリア人に敗北したガナン人は土地を奪われて支配され、隷属を強いられた挙句に悪魔の眷属として忌み嫌われ、一部の例外を除き魔法使いであるガナン人は発見次第即通報され、教会か軍が出張ってくる。......そんな事を領主の娘である彼女が知らないはずはないのに、野良の魔法使いである僕を庇ってまで魔法について知りたかったのか僕にはわからない......。
「......知ってると思うけど魔法使いを匿うのはこの国では罪だ、そこまでしてなんで魔法について知りたかったの? 」
「......空を自由に飛べたら楽しそうだとは思わない?」
「…………」
「…………冗談だから、そんな目で見ないで」
空を自由に飛びたいだなんて言うものだからつい胡乱な目で彼女を見てしまった。
「本当は戦うための力が欲しいのよ!」
「……なんで? 正直、領主の娘である君が持つ必要はないんじゃない?」
なんでお嬢様の彼女が戦うための力なんかを? ……それに魔法で戦うなんて、命知らずだ。
「最近街で魔物が出たみたいなのよ、でもほら、私の領地って辺境にある上に小さいじゃない? 魔物なんて領軍五百名じゃ倒せないし、中央からも遠くて…………」
…………まぁ、確かにたった五百人じゃ魔物なんて倒せない。
「だから領主一族として私が倒そうと思って!」
「それがわからない」
だからってなぜ自分で倒そうと思うんだろう? 魔物はそれこそ僕たち魔法使い以外だと帝都にいる『機士』か『狩人』じゃないと倒せる相手じゃない。
「ふふ、困ってる人がいれば助ける、それが自領の民なら尚更よ!」
…………そんなことを言いながら朝日を反射しながら微笑む彼女に僕は目が離せなかった......そんな場合じゃない、彼女を説得しなければと思うけれど……僕は初めての感覚に翻弄されていた…………けど、嫌じゃない。なんだか心臓がドキドキして苦しいけど不快じゃない、この現象の名前をまだ知らないけど悪い事ではないと何故か確信が持てた。
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