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第一章.憤る山
1.相棒
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「……リー、シャ……と言い、ま……す」
そう言って執務机の向こう側の扉から入ってきた彼女は小さな声で自己紹介をする。
「悪いね、この子人見知りなんだ」
「そうかそうか」
「肌が白い……?」
しかし彼女はガナン人の特徴の一つである褐色肌ではなく白い肌であった。髪は黒いが瞳は蒼で、少し違和感がある。
「……あぁ、そう言えば言っとらんかったの」
「言ってないのかい……ここではハーフやクォーターの魔法使いも居るから、不用意な発言は気を付けな、私の肌も白いだろ? ……差別と迫害されてきた者同士でくだらないことするんじゃないよ?」
「配慮が足らなかった、申し訳ない……」
そういえばディンゴもハーフだったけど、見た目はまんまレナリア人だったな……中身もレナリア人で魔法は使えなかったみたいたが、この子は見た目レナリア人でも中身がガナン人で魔法を使えるのだろう。
「髪が黒いのは東方諸民族の血が入ってるからだね、東方とレナリアのハーフとガナンの間に生まれたクォーターだよ」
「ほほぅ、それにしても中々やるようじゃの?」
「あぁ、魔法の腕はこの歳にして中々だよ? 自分の世界に閉じこもるきらいがあるがハマれば強い」
その言葉の通りなのだろう、さっきから彼女は下に俯いて一向に喋ろうとせず、また椅子に座ろうともしない。
「いつまで突っ立ってんだい、座りな」
「は、い」
静々とゆっくり椅子に座り指をもじもじさせながら押し黙る。
「……すまないね、慣れたらよく喋るし調子にも乗るんだが」
「本当に大丈夫かや?」
「実力は本物だし、人見知りするだけで連携にも問題はないよ」
「ふむ、お主を信じよう」
まぁ、道中の会話など気まずいだろうが依頼中の連携などに問題がないのなら大丈夫……だろう。
「それじゃあ、クレルとリーシャはこれからしばらく……具体的には依頼をいくつか完遂し、ベテランと組んでも大丈夫な価値があると最終判断が下るまで、相棒を組んでもらうよ」
「わかりました」
「……は、い」
ベテランの魔法使いはそれだけで重要資源であるため新人の教育やお守りで消費される訳にはいかない、そのためアバドンに辿り着いた後にもさらに新人同士で組んで依頼を熟すというふるい落としがある。中には新人の面倒を見てくれる危篤はベテラン魔法使いも居るが……ベテランは貴重な資源であると共にいつ魔物化するかわからない……もしもの時、新人では対応が難しいため推奨はされていない。
「さて、んじゃあ私たちはまだ話があるからエントランスで親睦でも深めてきな、依頼は選別にもう少し時間がかかる」
「最初に相棒を組んだ相手は大概腐れ縁になる、大事にな」
「わかりました」
「……は、い」
大事な話があるからと追い出されてしまったな……というか最古参なのに自我をあれだけ保っていられる師匠とマーリン様は何者なのだろう?
「……とりあえずエントランスに向かうか」
「……」
気まずいな、まぁこれから親睦を深めるのだし……大丈夫か?
▼▼▼▼▼▼▼
「……ここには来たばっかりなのか?」
「……(コクッ」
「そうか……マーリン様は怖いか?」
「……(フルフルッ」
……頼む、なにか言葉を発してくれ……さっきから俺が一方的に話し掛けているだけじゃないか……。
「「……」」
な、なにか……なにか話題はないのか? 全然次の話題に繋がらない……彼女も落ち着かないのか人差し指をせわしなく動かしたり、髪を弄ったりしている。
「……なにか頼もうか、なにがいい?」
「……………………ココ、ア」
「わかった、少し待ってて」
「……(コクッ」
これは中々に難敵だな……あちらもコミュニケーション取るつもりはある様だが、上手くできない感じなのか……? ともかく、これはもう時間が解決するしかないな。
「……最悪は師匠経由でマーリン様に助力を乞うか」
なにを対価として要求されるのか未知数だが……どうしようもなければ仕方あるまい。実戦での連携が問題ないと言っても相手の好みや癖、得意不得意な分野などを知っておかねば不味い事もあるだろう。
「はい、熱いから気を付けて」
「……(ペコり」
一応こちらを向いて会釈はしてくれるが、まったく目を合わせてくれないな……。こんなんで本当にやって行けるのだろうか?
「……」
「……」
「…………」
「…………あ、の」
「っ?! な、なんだ?」
ビックリした……まさか彼女の方から声を掛けてくるとは思わなかったから声が上擦ってしまった。
「……」
「……」
「…………」
「…………ココ、ア……あり、が……と、う」
「そ、そんなことか……いや大丈夫だ、気にしなくていい」
なるほど、会釈だけで済ませたのが心苦しくなったんだな? 段々とわかってきたぞ……彼女は優しく真面目過ぎるために色々と考え過ぎて上手く会話ができないんだな。
「これぐらい問題ないから、気にするなよ?」
「……(コクッ」
話せなくても頷いたり、首を降ったりで『可不可』の意思表示程度ならしてくれる。無理に言葉を引き出そうとせず、こちらが相手に合わせる形が一番良いだろう。
「これからよろしくな」
「……(コクッ」
頷いたのを確認してから右手を差し出し、握手を求める。
「っ?!」
「…………無理ならしなくても──」
「──よろ、しくお、願いし、ます……!(ギュッ」
顔を耳まで赤くし、吃りながら彼女は両手で俺の右手を掴み、上下に激しく振る。……一応すごく頑張って仲良くようとしてくれてるんだよな。
「あぁ、これから頼む」
「……(コクッ」
そこからはお互いに無言でも気まずくなく、緩やかな時間が流れていった。
▼▼▼▼▼▼▼
そう言って執務机の向こう側の扉から入ってきた彼女は小さな声で自己紹介をする。
「悪いね、この子人見知りなんだ」
「そうかそうか」
「肌が白い……?」
しかし彼女はガナン人の特徴の一つである褐色肌ではなく白い肌であった。髪は黒いが瞳は蒼で、少し違和感がある。
「……あぁ、そう言えば言っとらんかったの」
「言ってないのかい……ここではハーフやクォーターの魔法使いも居るから、不用意な発言は気を付けな、私の肌も白いだろ? ……差別と迫害されてきた者同士でくだらないことするんじゃないよ?」
「配慮が足らなかった、申し訳ない……」
そういえばディンゴもハーフだったけど、見た目はまんまレナリア人だったな……中身もレナリア人で魔法は使えなかったみたいたが、この子は見た目レナリア人でも中身がガナン人で魔法を使えるのだろう。
「髪が黒いのは東方諸民族の血が入ってるからだね、東方とレナリアのハーフとガナンの間に生まれたクォーターだよ」
「ほほぅ、それにしても中々やるようじゃの?」
「あぁ、魔法の腕はこの歳にして中々だよ? 自分の世界に閉じこもるきらいがあるがハマれば強い」
その言葉の通りなのだろう、さっきから彼女は下に俯いて一向に喋ろうとせず、また椅子に座ろうともしない。
「いつまで突っ立ってんだい、座りな」
「は、い」
静々とゆっくり椅子に座り指をもじもじさせながら押し黙る。
「……すまないね、慣れたらよく喋るし調子にも乗るんだが」
「本当に大丈夫かや?」
「実力は本物だし、人見知りするだけで連携にも問題はないよ」
「ふむ、お主を信じよう」
まぁ、道中の会話など気まずいだろうが依頼中の連携などに問題がないのなら大丈夫……だろう。
「それじゃあ、クレルとリーシャはこれからしばらく……具体的には依頼をいくつか完遂し、ベテランと組んでも大丈夫な価値があると最終判断が下るまで、相棒を組んでもらうよ」
「わかりました」
「……は、い」
ベテランの魔法使いはそれだけで重要資源であるため新人の教育やお守りで消費される訳にはいかない、そのためアバドンに辿り着いた後にもさらに新人同士で組んで依頼を熟すというふるい落としがある。中には新人の面倒を見てくれる危篤はベテラン魔法使いも居るが……ベテランは貴重な資源であると共にいつ魔物化するかわからない……もしもの時、新人では対応が難しいため推奨はされていない。
「さて、んじゃあ私たちはまだ話があるからエントランスで親睦でも深めてきな、依頼は選別にもう少し時間がかかる」
「最初に相棒を組んだ相手は大概腐れ縁になる、大事にな」
「わかりました」
「……は、い」
大事な話があるからと追い出されてしまったな……というか最古参なのに自我をあれだけ保っていられる師匠とマーリン様は何者なのだろう?
「……とりあえずエントランスに向かうか」
「……」
気まずいな、まぁこれから親睦を深めるのだし……大丈夫か?
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「……ここには来たばっかりなのか?」
「……(コクッ」
「そうか……マーリン様は怖いか?」
「……(フルフルッ」
……頼む、なにか言葉を発してくれ……さっきから俺が一方的に話し掛けているだけじゃないか……。
「「……」」
な、なにか……なにか話題はないのか? 全然次の話題に繋がらない……彼女も落ち着かないのか人差し指をせわしなく動かしたり、髪を弄ったりしている。
「……なにか頼もうか、なにがいい?」
「……………………ココ、ア」
「わかった、少し待ってて」
「……(コクッ」
これは中々に難敵だな……あちらもコミュニケーション取るつもりはある様だが、上手くできない感じなのか……? ともかく、これはもう時間が解決するしかないな。
「……最悪は師匠経由でマーリン様に助力を乞うか」
なにを対価として要求されるのか未知数だが……どうしようもなければ仕方あるまい。実戦での連携が問題ないと言っても相手の好みや癖、得意不得意な分野などを知っておかねば不味い事もあるだろう。
「はい、熱いから気を付けて」
「……(ペコり」
一応こちらを向いて会釈はしてくれるが、まったく目を合わせてくれないな……。こんなんで本当にやって行けるのだろうか?
「……」
「……」
「…………」
「…………あ、の」
「っ?! な、なんだ?」
ビックリした……まさか彼女の方から声を掛けてくるとは思わなかったから声が上擦ってしまった。
「……」
「……」
「…………」
「…………ココ、ア……あり、が……と、う」
「そ、そんなことか……いや大丈夫だ、気にしなくていい」
なるほど、会釈だけで済ませたのが心苦しくなったんだな? 段々とわかってきたぞ……彼女は優しく真面目過ぎるために色々と考え過ぎて上手く会話ができないんだな。
「これぐらい問題ないから、気にするなよ?」
「……(コクッ」
話せなくても頷いたり、首を降ったりで『可不可』の意思表示程度ならしてくれる。無理に言葉を引き出そうとせず、こちらが相手に合わせる形が一番良いだろう。
「これからよろしくな」
「……(コクッ」
頷いたのを確認してから右手を差し出し、握手を求める。
「っ?!」
「…………無理ならしなくても──」
「──よろ、しくお、願いし、ます……!(ギュッ」
顔を耳まで赤くし、吃りながら彼女は両手で俺の右手を掴み、上下に激しく振る。……一応すごく頑張って仲良くようとしてくれてるんだよな。
「あぁ、これから頼む」
「……(コクッ」
そこからはお互いに無言でも気まずくなく、緩やかな時間が流れていった。
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