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第三章.寂寥のお絵かき
3.道化師
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「……なんだ貴様らは」
「俺たちは旅の芸人ですぜ兄貴!」
今俺たちは帝都の入街管理局にて不審者扱いされている……それも仕方のない事で、リーシャ以外もれなく全員が顔を白く塗り、目元と口元を派手にメイクして、ダボッとしたカラフルな服装の……所謂ピエロの格好をしているからだ。
「旅の芸人だぁ?」
「そうですそうです、いやね? お貴族様に営業に来たんでさぁ!」
確かに一目でガナン人とわかる人間が最低でも三人は纏まって帝都で行動しているなど、狩人の全力出撃を招きかねない……それは理解しているがやはり無理があるだろう。発案者であるカルマンはいっそ清々しいほどに管理局員に揉み手して媚びている。
「……今どき旅の大道芸人など流行らんぞ?」
「そんなのやってみなくちゃ分からないですよ! な!」
「えっ?! あ、えっと……そうよ! 私が芸を披露してあげるって言っているんだから、感謝しなさい!」
おい、ここでレティシャに振ったら不味いだろ……俺たちは今不審者扱いされているんだぞ? 高圧的な物言いでしか会話できない彼女では心象悪くするんじゃないのか?
「……感謝しろと言われてもね?」
「咽び泣きながらこの幸運にただ感謝なさい!」
「……そちらのお嬢ちゃんはどういった役割なの? 見たところ一人だけ格好がまともだけど」
「……(ビクッ」
レティシャでは話にならないと悟ったのか管理局員はリーシャへと意識を向けて声を掛けるが……すまんな、そいつもコミュ障なんだ。
「……君?」
「……(ビクッ」
ダメだ見ていられん……いきなり自分に話し掛けられたリーシャが視線をあっちこっちに彷徨わせ、聞こえていないと思った管理局員か再度呼び掛けてもどう受け答えすれば良いのかわからずただ身体を震わせるのみ……女性陣は交渉できないな。
「あーすまんな、彼女は話す事ができないんだ」
「……そうなのかい?」
「あぁ」
大丈夫だ、嘘は言っていない……リーシャは人と話す事が極端に苦手でできないだけだ、喋れないのと大差ないどころかどうせ結果は同じなんだから真実と言える。
「彼女だけ何もしないの?」
「……(ビクッ」
「あー、彼女はお茶汲みとか裏方担当なんだ」
「っ! ……(コクッ」
もしかして自分だけ役割が無いのではないのかと無駄に真面目なリーシャが顔を蒼白にさせ始めたのでそれっぽいものを即興ででっち上げれば満面の笑みで頷く……満足したようでなによりだ。
「うーん、でも怪しすぎるしなぁ……ちょっと君たち一回メイク落として──」
「──兄さん、ちょっと良いかい?」
やはり無理がありすぎていよいよバレるのではというところでカルマンが管理局員を連れて部屋の隅へと移動する……別に狭い部屋だし内緒話は出来ないと思うが様式美というやつだろうか?
「いったいなんだい?」
「いやぁ、お兄さん割と美男子ですよね! やっぱり結婚とかしてお子さんとかいるんですか?」
「はぁ……娘が一人いるが?」
……アイツは何を聞いている? いきなりおべっかを使ったと思ったら結婚しているのか、子どもはいるのかと……何がしたいんだ?
「やっぱり! モテそうですから結婚されてましたか、これでお子さんにお菓子とかどうぞ」
「こ、これは……!」
あ、アイツ自然な動きで賄賂を渡しやがった……そのあんまりに慣れた動きにリーシャは目を白黒させ、レティシャは慣れているのか溜め息をついている。
「き、君! こういうのは困る──」
「──もしや帝都は物価が高いので? これは気が利かず申し訳ない……これで足りますか? それともまだ足りませんか?」
「……っ」
さすがに公務員として不味いと思ったのだろう。管理局員は一度は賄賂を受け取る事を拒否しようとするが……その前に高額紙幣の束を目の前に差し出しピエロメイクのまま凄むカルマンに息を呑む。
「まだ足りないのですか、と聞いているのですが?」
「っ! た、足りる……大丈夫だ……」
「それは良かったです! ではもう行って大丈夫ですね?」
「あ、あぁ……」
そのままこちらへと合流したカルマンと共に入街管理局から出てやっと帝都へと入る……割と時間が掛かったな、やはりガナン人だと不便だ。
「お前、あのやり方はどうなんだ……」
「なんだ、クレルは知らないのか?」
「……何がだ?」
帝都へと入ってすぐにカルマンへと先ほどの所業を呆れ混じりに聞けばこちらを小馬鹿にするような表情と共に露骨に溜め息を吐かれるが……そんなにおかしかったか?
「──この世に金で買えない物はない」
「「……」」
「……わ、私は知らないんだから!」
カルマンのあんまりな物言いにリーシャと二人で絶句してしまう……拝金主義もここまで来ればもはや何も言えない。彼のおかげで先ほど窮地を脱したとはいえ釈然としないものがあるが言い返す気力もない。レティシャの様にさっさっと諦めた方が良いのかも知れない。
「あ、あと助けてやったんだから五万ベルンな」
「「……」」
いや諦めたら終わりだ、コイツに妥協すれば尻の毛まで毟り取られそうだ……こんな時にまで仲間であるはずのこちらに料金を請求するなど正気の沙汰ではない。
「……カルマンはそんなに金を稼いでどうしたいんだ?」
「ハッ! そんなの決まっているだろう?」
半ば説明料金とやらを警戒しながら質問すれば意外にも素直に答えてくれるらしい……リーシャも興味を引かれたのか目線をこちらに向けてくる。
「帝都に屋敷を建ててレナリア女を侍らすんだよ!」
「「……」」
「わ、私は知らないんだから!」
コイツは何を言っているんだ? 帝都に屋敷を建てるのはまぁいい……ガナン人に土地を売ってくれるのかどうかは知らんが、夢があって良いと思う。
「金さえあれば今まで蔑んできたレナリア人を顎で扱き使って、股を開かせられる……最高とは思わないか?」
「……そ、そうか」
「……」
「う、嘘ばっか!」
ま、まぁ差別されてきたガナン人なら理解できなくはないが、それを本気で成そうと具体的な手段込みで用意するとは……リーシャはドン引きしているし、レティシャは信じられないのかそっぽを向く。
「まぁ金さえあればなんでも買えるしな、貯えて損はない」
「そ、そうだな……」
とりあえずコイツがイカれた拝金主義者で大きな目標も持っている事はわかった……やはり一緒に仕事をするにあたって仲間の人となりは知っておいて損はないし、まぁ良かったのかも知れない──
「──ちなみに説明料金三万ベルン」
……前言撤回だ、コイツの人となりなんぞ知らなくても問題はない。
▼▼▼▼▼▼▼
「俺たちは旅の芸人ですぜ兄貴!」
今俺たちは帝都の入街管理局にて不審者扱いされている……それも仕方のない事で、リーシャ以外もれなく全員が顔を白く塗り、目元と口元を派手にメイクして、ダボッとしたカラフルな服装の……所謂ピエロの格好をしているからだ。
「旅の芸人だぁ?」
「そうですそうです、いやね? お貴族様に営業に来たんでさぁ!」
確かに一目でガナン人とわかる人間が最低でも三人は纏まって帝都で行動しているなど、狩人の全力出撃を招きかねない……それは理解しているがやはり無理があるだろう。発案者であるカルマンはいっそ清々しいほどに管理局員に揉み手して媚びている。
「……今どき旅の大道芸人など流行らんぞ?」
「そんなのやってみなくちゃ分からないですよ! な!」
「えっ?! あ、えっと……そうよ! 私が芸を披露してあげるって言っているんだから、感謝しなさい!」
おい、ここでレティシャに振ったら不味いだろ……俺たちは今不審者扱いされているんだぞ? 高圧的な物言いでしか会話できない彼女では心象悪くするんじゃないのか?
「……感謝しろと言われてもね?」
「咽び泣きながらこの幸運にただ感謝なさい!」
「……そちらのお嬢ちゃんはどういった役割なの? 見たところ一人だけ格好がまともだけど」
「……(ビクッ」
レティシャでは話にならないと悟ったのか管理局員はリーシャへと意識を向けて声を掛けるが……すまんな、そいつもコミュ障なんだ。
「……君?」
「……(ビクッ」
ダメだ見ていられん……いきなり自分に話し掛けられたリーシャが視線をあっちこっちに彷徨わせ、聞こえていないと思った管理局員か再度呼び掛けてもどう受け答えすれば良いのかわからずただ身体を震わせるのみ……女性陣は交渉できないな。
「あーすまんな、彼女は話す事ができないんだ」
「……そうなのかい?」
「あぁ」
大丈夫だ、嘘は言っていない……リーシャは人と話す事が極端に苦手でできないだけだ、喋れないのと大差ないどころかどうせ結果は同じなんだから真実と言える。
「彼女だけ何もしないの?」
「……(ビクッ」
「あー、彼女はお茶汲みとか裏方担当なんだ」
「っ! ……(コクッ」
もしかして自分だけ役割が無いのではないのかと無駄に真面目なリーシャが顔を蒼白にさせ始めたのでそれっぽいものを即興ででっち上げれば満面の笑みで頷く……満足したようでなによりだ。
「うーん、でも怪しすぎるしなぁ……ちょっと君たち一回メイク落として──」
「──兄さん、ちょっと良いかい?」
やはり無理がありすぎていよいよバレるのではというところでカルマンが管理局員を連れて部屋の隅へと移動する……別に狭い部屋だし内緒話は出来ないと思うが様式美というやつだろうか?
「いったいなんだい?」
「いやぁ、お兄さん割と美男子ですよね! やっぱり結婚とかしてお子さんとかいるんですか?」
「はぁ……娘が一人いるが?」
……アイツは何を聞いている? いきなりおべっかを使ったと思ったら結婚しているのか、子どもはいるのかと……何がしたいんだ?
「やっぱり! モテそうですから結婚されてましたか、これでお子さんにお菓子とかどうぞ」
「こ、これは……!」
あ、アイツ自然な動きで賄賂を渡しやがった……そのあんまりに慣れた動きにリーシャは目を白黒させ、レティシャは慣れているのか溜め息をついている。
「き、君! こういうのは困る──」
「──もしや帝都は物価が高いので? これは気が利かず申し訳ない……これで足りますか? それともまだ足りませんか?」
「……っ」
さすがに公務員として不味いと思ったのだろう。管理局員は一度は賄賂を受け取る事を拒否しようとするが……その前に高額紙幣の束を目の前に差し出しピエロメイクのまま凄むカルマンに息を呑む。
「まだ足りないのですか、と聞いているのですが?」
「っ! た、足りる……大丈夫だ……」
「それは良かったです! ではもう行って大丈夫ですね?」
「あ、あぁ……」
そのままこちらへと合流したカルマンと共に入街管理局から出てやっと帝都へと入る……割と時間が掛かったな、やはりガナン人だと不便だ。
「お前、あのやり方はどうなんだ……」
「なんだ、クレルは知らないのか?」
「……何がだ?」
帝都へと入ってすぐにカルマンへと先ほどの所業を呆れ混じりに聞けばこちらを小馬鹿にするような表情と共に露骨に溜め息を吐かれるが……そんなにおかしかったか?
「──この世に金で買えない物はない」
「「……」」
「……わ、私は知らないんだから!」
カルマンのあんまりな物言いにリーシャと二人で絶句してしまう……拝金主義もここまで来ればもはや何も言えない。彼のおかげで先ほど窮地を脱したとはいえ釈然としないものがあるが言い返す気力もない。レティシャの様にさっさっと諦めた方が良いのかも知れない。
「あ、あと助けてやったんだから五万ベルンな」
「「……」」
いや諦めたら終わりだ、コイツに妥協すれば尻の毛まで毟り取られそうだ……こんな時にまで仲間であるはずのこちらに料金を請求するなど正気の沙汰ではない。
「……カルマンはそんなに金を稼いでどうしたいんだ?」
「ハッ! そんなの決まっているだろう?」
半ば説明料金とやらを警戒しながら質問すれば意外にも素直に答えてくれるらしい……リーシャも興味を引かれたのか目線をこちらに向けてくる。
「帝都に屋敷を建ててレナリア女を侍らすんだよ!」
「「……」」
「わ、私は知らないんだから!」
コイツは何を言っているんだ? 帝都に屋敷を建てるのはまぁいい……ガナン人に土地を売ってくれるのかどうかは知らんが、夢があって良いと思う。
「金さえあれば今まで蔑んできたレナリア人を顎で扱き使って、股を開かせられる……最高とは思わないか?」
「……そ、そうか」
「……」
「う、嘘ばっか!」
ま、まぁ差別されてきたガナン人なら理解できなくはないが、それを本気で成そうと具体的な手段込みで用意するとは……リーシャはドン引きしているし、レティシャは信じられないのかそっぽを向く。
「まぁ金さえあればなんでも買えるしな、貯えて損はない」
「そ、そうだな……」
とりあえずコイツがイカれた拝金主義者で大きな目標も持っている事はわかった……やはり一緒に仕事をするにあたって仲間の人となりは知っておいて損はないし、まぁ良かったのかも知れない──
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