サクリファイス・オブ・ファンタズム 〜忘却の羊飼いと緋色の約束〜

たけのこ

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第三章.寂寥のお絵かき

エピローグ

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「うっ……ひっぐ……」

「……帰って来たか」

 カルマンと何を話すでも無くただ静かに岩や木を背もたれに座り込み、リーシャとレティシャの帰りを待っていれば二人とも恥も外聞も無く涙を流しながら現れる。

「うぇ、ひっぐ……カルマンごめん、ミーナ殺しちゃった」

「……元々依頼だろうが、謝んな」

 レティシャの思い詰めたような告白に胸が締め付けられる想いがする……こちらこそ彼女たちに殺させてしまって謝りたいくらいだ。俺が優柔不断だったせいで……もう少し彼女たちに時間を、と欲張ったせいでギリギリになり、ミーナを殺すどころではなく狩人の相手をしなければならなくなった。

「クレ、ル君……わ、わた……し……わた、し……!」

「……大丈夫だ、リーシャ」

 纏まらない胸の内を整理し切れずとにかく『わたし……わたし……』と連呼するリーシャを落ち着かせる……おそらくミーナを殺してしまった事とその間に俺とカルマンの二人が傷ついていたからビックリしてしまったのだろう。

「依頼は遂行できたんだ、帰ろう……」

「は、い……!」

 泣き続けるリーシャとレティシャを慰めながら震える身体に鞭を打ち立ち上がり、カルマンと目を合わせて肩を竦める……とにかく激しく魔力を撒き散らしたのだ、ここら一帯の魔力濃度は一時的に急上昇しているはず……新たな狩人が派遣されてくる前に移動しなければならない。

「まったく世話の焼ける騎士様だねぇ……」

「うっさい……ばかぁ……!」

「いったぁ?!」

「なにをやってるんだ……」

 レティシャを揶揄って頭を盛大に叩かれたカルマンに溜息を一つ零しながら四人連れだって寒空の下、ミーナの事を想いながら奈落の底アバドンへと帰還する。

▼▼▼▼▼▼▼

「帰ったぞ、クソジジイ」

「……今度こそ誰か欠けとるかと思っておったわ、意外とやるじゃねぇか! イヒ、イヒヒッ」

 三日かけて奈落の底アバドンに帰り着き、受付にてとりあえずの報告を済ましてから書類一式を受け取り、弟子の特権で師匠クソジジイを呼び付けて待つこと暫し……エントランスに現れた奴は開口一番にとんでもなく失礼な事を言いやがる……殴りたい。

「ん」

「……なんだ?」

 いきなり無造作に片手を差し出されても分からないが……この師匠クソジジイは度々こういった横着をするので面倒臭い。

「報告書に決まっとろう、受付に提出する前に見せんか出来の悪い弟子じゃなぁ……」

「こ、コイツ……!」

「く、クレ、ル君……!」

 鼻から息を吐き出しながら眉尻を下げ、さも困ったと言わんばかりにこちらを小馬鹿にしやがる師匠クソジジイにブチ切れ飛びかかろうとすれば珍しく慌てた様子のリーシャが腰に抱き着き自分の暴走を止めてくれる。

「す、すまん……取り乱した……」

「い、え……大丈、夫……で、す……」

 冷静になりリーシャに振り返りつつ椅子に腰を落とせば、今さらながらに自分から身体に触れるような行いをした事を恥じたのか耳まで赤くしながら俯きなんでもないと装う……そっとしておいた方が良いな、うん。

「なんじゃ、リーシャはこんな事で──」

「──お望みの報告書だ! さっさと読めクソジジイ!」

 せっかくそっとしてあげようとこちらが決意したのにも関わらず、空気を一切読まないこの老害は赤面するリーシャに言及しようとしやがるのでその顔面に向かって待ち時間の間に書いておいた報告書を叩き付けてやるが……いとも簡単にキャッチしやがる。

「……お前、あの『大樹』のセブルスにいつもこんな感じなの?」

「さ、さすが私と一緒に仕事をしただけはあるわ……!」

「……二人が何に対してショックを受けているのか知らんが、この枯れ木は痴呆老人だぞ」

 まぁ確かに師匠クソジジイは有名な大魔法使いだし、そこは俺も尊敬するところだ……でもノックもせず女性の部屋に入ったり、夕飯を食べた事を忘れたりする様を見続けていればこんな対応に自然となるものだ。

「誰がイケメン世界樹じゃ」

「言ってねぇよ、シロアリに喰われろ」

 勝手に人の発言を改竄し捏造する師匠クソジジイに呆れ果て、奴の寝室に本気でシロアリでも放つかと検討段階に入る。

「まぁいいわ……よく頑張ったな」

「……うるせぇ」

「イヒヒッ! では俺はもう行くでな」

 優しい表情で、まるで父親の様にこちらの頭に掌を置く師匠ジジイにぶっきらぼうに返しながらその腕を払い除ける……そのまま去っていく奴を見送りながら鼻を鳴らす。

「ふーん、なるほどねぇ……?」

「……なんだ、カルマン」

「別に?」

 こちらを意味深に見て声を発するカルマンを睨み付けながら問い掛ければ興味ないと言わんばかりにそっぽを向かれるが……リーシャとレティシャにそんな気遣いが出来るはずもなく、興味津々にこちらを眺めているのが腹立たしい。

「……まぁいい、邪魔者も居なくなったし始めるぞ」

「あぁ、そうだな」

「火、着けるわよ」

「で、は……せーの、で……」

 真ん中のテーブルに乗せられたワンホールのケーキの上へと立てられた蝋燭へとレティシャが火を付け、リーシャが辿々しく音頭を取る。

「せー、の……」

「『誕生日おめでとう、ミーナ』」

 盛大にとはいかないが、丁度今日が誕生日であったミーナを四人で慎ましやかに……けれども万感の想いを込めて祝福する。

▼▼▼▼▼▼▼
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