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第四章.救えない
神話黙示録.大地の民
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「シスター! この前の続きを読んでー!」
「あらあら、もうそんな時間ですか」
帝都のある一角にある古びた教会……孤児院も兼ねたそこでは子ども達がたった一人しかいないシスターへと群がり、修道服の裾を掴み引っ張って読み聞かせをせがんでいた。
「ていうかさー、ジークはー?」
「そういえば居ませんね……」
そんな中、子ども達の一人がシスターへとある人物の所在を尋ねる。その人物こそ、この孤児院へと子ども達の大半を連れて来た張本人であり、大黒柱でもあった。
「何処に行ったのでしょう、あの人ったら……」
孤児院内を見回し、その姿が無いことを認めたシスターが首を傾げ、その金糸の様な髪の毛をサラサラと横に流しながら頬に手を当て眉尻を下げる。その糸目からは本当に困っているのか、考えている事は読み取れない。
「ジークなら逃げたよ」
「……まぁ、あの人ったらこの前の弁明をせずに」
その糸目の奥にどんな色の瞳があるのか……表面上の表情は全く変わらず、いつもの何を考えているのか分からない『ポヤポヤ』と擬音の付きそうな雰囲気を発しながらも口から出た声は心做しか低く、子ども達は謎の寒気に首を傾げる。
「本当に仕方のない人ですね……さ、続きを読み聞かせますよ──おっととっ」
「『……』」
自身の肩幅ほどもあり、分厚い聖書を開きシスターは静かで穏やかな口調で読み聞かせを始める。……その時あまりの重さに取り落としそうになるのはいつもの光景だった。
▼▼▼▼▼▼▼
欲深き大地から生まれた者達は自己を自認した……産まれた時から『自分がなんたるか』を理解した彼らは歓喜の産声を上げ、自らの血を大地へと捧げる。
大地の民に『願望』が芽生える ……自分達には魔力がある。成したいことを成すための魔力がある。そうであるならば止まる理由はない。
大地の民は行動する……自らの『願い』を叶えるために、大地に跪き、『対価』を捧げ、大いなる父祖神へと祈念する。彼ら自身の身体と魂を道として大地へと捧げられる『対価』によって『願望』を叶え、大地を慰撫する。
大地の民は点在する……彼らは緩い同胞意識がありながら繋がりは強固である。その癖一つに纏まりはしない。向かう方向が違うからだ。
大地の民は多様である……ある者は鉄を打ち、ある物は華を咲き誇らせ、ある者は城を建造し、ある者は視て……また、何も職能がない自身の身体を売る者も。
大地の民に変化が訪れる……自らの『願望』を叶えるため、偉大なる大地へと『対価』を捧げすぎたのだ……彼らの身体と魂を蝕む『対価』の『欲望』が、取り込んだ他者の魔力が……そしてなによりも位階を高めた事で父祖神に近付き、その思想が流れ込むことで彼らは自己を認識できなくなる。
大地の民は大地を穢す……己を識らず、領分以上に『願い過ぎた愚か者』は『欲望』によって身を変質させ自分勝手な汚泥を撒き散らす。大地の民を介さず大地へと流れるそれは、父祖神を悪戯に刺激する。
大地の民は同胞を喰らう……己を識らず、領分以上に『願い過ぎた愚か者』を止めるべく。自らの営みによって慰撫し、満たされていた大地を煽る彼らを赦してはならなかった。
大地の民の不治の病……己を識らず、領分以上に『願い過ぎた愚か者』を喰らう度に認識する自己が増える。もはや自らがなんなのか見失った時、彼らは『願い過ぎた愚か者』を再生産し、『子供』と化す。
大地の民は殺害する……『願い過ぎた愚か者』も『子供』も……彼らに共感し、その身を堕とす『仲間』も殺害して、殺害して、殺害して、殺害する。
大地の民は己を律する……同胞が穢した大地を浄め、保全し、位階を高めて父祖神に許しを乞う。清浄な大地を求め、自らの『願望』を叶えるならば……相応の『対価』と己の『欲望』を見極める必要があった。
大地の民は誇り高く……自らを大地の守護者であると、様々な『願望』を叶える魔力があると、彼らは自己を強くする。……故に───────
───────赦されはしなかった。
▼▼▼▼▼▼▼
「あらあら、もうそんな時間ですか」
帝都のある一角にある古びた教会……孤児院も兼ねたそこでは子ども達がたった一人しかいないシスターへと群がり、修道服の裾を掴み引っ張って読み聞かせをせがんでいた。
「ていうかさー、ジークはー?」
「そういえば居ませんね……」
そんな中、子ども達の一人がシスターへとある人物の所在を尋ねる。その人物こそ、この孤児院へと子ども達の大半を連れて来た張本人であり、大黒柱でもあった。
「何処に行ったのでしょう、あの人ったら……」
孤児院内を見回し、その姿が無いことを認めたシスターが首を傾げ、その金糸の様な髪の毛をサラサラと横に流しながら頬に手を当て眉尻を下げる。その糸目からは本当に困っているのか、考えている事は読み取れない。
「ジークなら逃げたよ」
「……まぁ、あの人ったらこの前の弁明をせずに」
その糸目の奥にどんな色の瞳があるのか……表面上の表情は全く変わらず、いつもの何を考えているのか分からない『ポヤポヤ』と擬音の付きそうな雰囲気を発しながらも口から出た声は心做しか低く、子ども達は謎の寒気に首を傾げる。
「本当に仕方のない人ですね……さ、続きを読み聞かせますよ──おっととっ」
「『……』」
自身の肩幅ほどもあり、分厚い聖書を開きシスターは静かで穏やかな口調で読み聞かせを始める。……その時あまりの重さに取り落としそうになるのはいつもの光景だった。
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欲深き大地から生まれた者達は自己を自認した……産まれた時から『自分がなんたるか』を理解した彼らは歓喜の産声を上げ、自らの血を大地へと捧げる。
大地の民に『願望』が芽生える ……自分達には魔力がある。成したいことを成すための魔力がある。そうであるならば止まる理由はない。
大地の民は行動する……自らの『願い』を叶えるために、大地に跪き、『対価』を捧げ、大いなる父祖神へと祈念する。彼ら自身の身体と魂を道として大地へと捧げられる『対価』によって『願望』を叶え、大地を慰撫する。
大地の民は点在する……彼らは緩い同胞意識がありながら繋がりは強固である。その癖一つに纏まりはしない。向かう方向が違うからだ。
大地の民は多様である……ある者は鉄を打ち、ある物は華を咲き誇らせ、ある者は城を建造し、ある者は視て……また、何も職能がない自身の身体を売る者も。
大地の民に変化が訪れる……自らの『願望』を叶えるため、偉大なる大地へと『対価』を捧げすぎたのだ……彼らの身体と魂を蝕む『対価』の『欲望』が、取り込んだ他者の魔力が……そしてなによりも位階を高めた事で父祖神に近付き、その思想が流れ込むことで彼らは自己を認識できなくなる。
大地の民は大地を穢す……己を識らず、領分以上に『願い過ぎた愚か者』は『欲望』によって身を変質させ自分勝手な汚泥を撒き散らす。大地の民を介さず大地へと流れるそれは、父祖神を悪戯に刺激する。
大地の民は同胞を喰らう……己を識らず、領分以上に『願い過ぎた愚か者』を止めるべく。自らの営みによって慰撫し、満たされていた大地を煽る彼らを赦してはならなかった。
大地の民の不治の病……己を識らず、領分以上に『願い過ぎた愚か者』を喰らう度に認識する自己が増える。もはや自らがなんなのか見失った時、彼らは『願い過ぎた愚か者』を再生産し、『子供』と化す。
大地の民は殺害する……『願い過ぎた愚か者』も『子供』も……彼らに共感し、その身を堕とす『仲間』も殺害して、殺害して、殺害して、殺害する。
大地の民は己を律する……同胞が穢した大地を浄め、保全し、位階を高めて父祖神に許しを乞う。清浄な大地を求め、自らの『願望』を叶えるならば……相応の『対価』と己の『欲望』を見極める必要があった。
大地の民は誇り高く……自らを大地の守護者であると、様々な『願望』を叶える魔力があると、彼らは自己を強くする。……故に───────
───────赦されはしなかった。
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