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22話
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王宮の会議室に、重厚な扉の音が響いた。
「――では、本日より“王政再構築案”の初会合を開きます」
文官の声に応じて、円卓のまわりに集まった貴族たちが一斉に姿勢を正した。
その中心に立つのは、王家の血を引く第二王子、レオン=ヴァロワ。
そして、その傍らの椅子に静かに座る紅の令嬢――ヴィオラ=エーデルワイス。
かつて“悪役令嬢”とささやかれ、王城から去ったその姿は、
今や誰よりも落ち着きと威厳を宿し、言葉ひとつで場の空気を引き締めていた。
「まず、“王権の象徴性”について定義を見直しましょう。
今後、王の在り方は“民意に基づく調停者”であり、“神の代弁者”ではありません。――これは、もはや絶対です」
彼女の言葉に、一部の保守派が眉をひそめる。
「聖女制度の廃止を前提に語るのは、時期尚早では? 信仰は民の安寧の基礎であり……」
「安寧とは、“知らされず信じさせられること”ではなく、“知ったうえで選ぶこと”です」
ヴィオラの声は静かだったが、芯の強さは誰よりも明確だった。
「それでもなお“祈る”者の自由は守るべきでしょう。けれど、政治の土台に“奇跡”を据えてはなりません。
現実を動かすのは、神ではなく、人の意思です」
場に、誰も言い返せなかった。
「……これが、あの“聖女を倒した女”の言葉か」
誰かが小さく呟いた。だがその声に、レオンがすかさず笑いながら応じた。
「違う。“聖女に祈りを返した女”の言葉さ。
信仰を否定したわけじゃない。ただ、“信仰を強制する仕組み”を解体しただけ」
その場に、わずかな安堵と納得が広がった。
ヴィオラは、そんな空気すら計算のうちに置いているようだった。
*
会合を終えたあと、王城の中庭で二人きりの時間が訪れる。
「ずいぶん、堂々としていたな。こっちは気圧されてたよ」
「あなたが隣に立ってくれるからよ。私ひとりだったら、きっとあそこまでは踏み込めなかった」
「……素直にそう言われると、少し照れるね」
レオンは苦笑しながら、芝生の上に腰を下ろした。
「でも、思ったよりも国は素直に変わる気がする。……君がその“最初の火種”だったとしても」
「私は、ただ“嘘のまま終わる未来”が我慢ならなかっただけ」
「なあ、ヴィオラ。君はこれから、どこまで行くつもりだ?」
「どこまでも。
――私は、“正しさを選べる世界”を作るまで止まらないわ」
そう言った彼女の目には、遠い未来を見据えるまなざしが宿っていた。
誰かの妻としてではなく。
誰かの敵としてでもなく。
ただ、“自分の意志で歩くひとりの女性”として――
ヴィオラ=エーデルワイスの物語は、まだ終わらない。
「――では、本日より“王政再構築案”の初会合を開きます」
文官の声に応じて、円卓のまわりに集まった貴族たちが一斉に姿勢を正した。
その中心に立つのは、王家の血を引く第二王子、レオン=ヴァロワ。
そして、その傍らの椅子に静かに座る紅の令嬢――ヴィオラ=エーデルワイス。
かつて“悪役令嬢”とささやかれ、王城から去ったその姿は、
今や誰よりも落ち着きと威厳を宿し、言葉ひとつで場の空気を引き締めていた。
「まず、“王権の象徴性”について定義を見直しましょう。
今後、王の在り方は“民意に基づく調停者”であり、“神の代弁者”ではありません。――これは、もはや絶対です」
彼女の言葉に、一部の保守派が眉をひそめる。
「聖女制度の廃止を前提に語るのは、時期尚早では? 信仰は民の安寧の基礎であり……」
「安寧とは、“知らされず信じさせられること”ではなく、“知ったうえで選ぶこと”です」
ヴィオラの声は静かだったが、芯の強さは誰よりも明確だった。
「それでもなお“祈る”者の自由は守るべきでしょう。けれど、政治の土台に“奇跡”を据えてはなりません。
現実を動かすのは、神ではなく、人の意思です」
場に、誰も言い返せなかった。
「……これが、あの“聖女を倒した女”の言葉か」
誰かが小さく呟いた。だがその声に、レオンがすかさず笑いながら応じた。
「違う。“聖女に祈りを返した女”の言葉さ。
信仰を否定したわけじゃない。ただ、“信仰を強制する仕組み”を解体しただけ」
その場に、わずかな安堵と納得が広がった。
ヴィオラは、そんな空気すら計算のうちに置いているようだった。
*
会合を終えたあと、王城の中庭で二人きりの時間が訪れる。
「ずいぶん、堂々としていたな。こっちは気圧されてたよ」
「あなたが隣に立ってくれるからよ。私ひとりだったら、きっとあそこまでは踏み込めなかった」
「……素直にそう言われると、少し照れるね」
レオンは苦笑しながら、芝生の上に腰を下ろした。
「でも、思ったよりも国は素直に変わる気がする。……君がその“最初の火種”だったとしても」
「私は、ただ“嘘のまま終わる未来”が我慢ならなかっただけ」
「なあ、ヴィオラ。君はこれから、どこまで行くつもりだ?」
「どこまでも。
――私は、“正しさを選べる世界”を作るまで止まらないわ」
そう言った彼女の目には、遠い未来を見据えるまなざしが宿っていた。
誰かの妻としてではなく。
誰かの敵としてでもなく。
ただ、“自分の意志で歩くひとりの女性”として――
ヴィオラ=エーデルワイスの物語は、まだ終わらない。
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