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王宮、謁見の間。
天井の高い広大な空間に、重苦しい静寂が満ちていました。
玉座には国王陛下と王妃殿下。
その左右には、国の重鎮である大臣たちがズラリと並んでいます。
そして、中央の赤い絨毯の上には、三人の人物が立っていました。
王太子フレデリック殿下。
公爵令嬢イザベラ様。
そして、わたくし、カテリーナ・フォン・クロイツです。
本日は、歴史的な日です。
国の未来を左右する重大発表――すなわち、「王太子殿下の婚約者変更」が正式に布告される日なのです!
(……笑ってはいけません。絶対に、笑ってはいけませんわ!)
わたくしは下を向き、必死に表情筋と戦っておりました。
頬が緩みそうになるのを、奥歯を噛み締めて耐えます。
もしここで「ヤッターー!!」と万歳三唱でもしようものなら、不敬罪で首が飛びます。
あくまで「悲劇のヒロイン」として、この場を乗り切らねばなりません。
「……これより、王命を伝える」
宰相代理の臣下が、羊皮紙を広げました。
(ちなみに宰相であるアレクセイ様は、あえて臣下の列に混ざり、ニヤニヤしながらこちらを見ています。性格が悪いです)
「王太子フレデリックと、クロイツ伯爵令嬢カテリーナの婚約を、本日をもって白紙とする」
キタ!
来ました!
「白紙」という言葉の響き、なんと甘美なのでしょう!
「同時に、王太子フレデリックと、ベルンシュタイン公爵令嬢イザベラの新たな婚約をここに認めるものとする」
おおお……!
わたくしの心の中で、ファンファーレが鳴り響きます。
天使がラッパを吹き、ハトが飛び立ち、空から花びらが降ってくる幻覚が見えます。
自由だ。
ついにわたくしは、自由を手に入れたのです!
「……カテリーナよ」
玉座の国王陛下が、重々しく口を開きました。
「この決定、其の方にとっては受け入れ難いものであろう。長年、王太子妃となるべく研鑽を積んできた其の方の無念、察するに余りある」
「……っ(嬉しすぎて震えが止まりません)」
「だが、これは王太子の強い希望であり、また国益(隣国王女への対策)を鑑みての苦渋の決断である。……恨むなら、余を恨め」
陛下……!
なんてお優しい言葉でしょう。
恨むだなんてとんでもない。
むしろ感謝状を贈りたいくらいです。
今すぐ玉座に駆け寄って、陛下の靴を磨かせていただきたい!
「……もったいないお言葉でございます、陛下」
わたくしは震える声(演技)で答えました。
「わたくしのことなど、どうでもよろしいのです。全ては殿下の御心のままに……。殿下が幸せになられることこそが、わたくしの唯一の望みでございます」
「ううむ……なんと健気な……」
陛下が目頭を押さえました。
王妃殿下もハンカチで涙を拭っています。
周囲の大臣たちからも、鼻をすする音が聞こえてきます。
「あんなに良い娘を……」
「愛ゆえに身を引くとは、まさに聖女の鑑……」
よし。
雰囲気作りは完璧です。
このままスムーズに退場し、出口でスキップをして帰るだけです。
しかし。
ここで黙っていられないのが、あの男でした。
「カテリーナ……」
フレデリック殿下が、悲痛な面持ちで一歩進み出てきました。
「すまない。本当に、すまない……!」
「……殿下?」
「君がどれほど深く傷ついているか、僕にはわかるよ。今も震えているじゃないか(笑いを堪えているだけです)」
殿下はわたくしの手を取り、ギュッと握りしめました。
「君は僕の『影』を踏んだだけで身を引くと言った。その潔癖なまでの高潔さ、そして僕への深すぎる愛……僕は一生忘れないよ」
「……恐縮です(早く忘れてください)」
「でもね、カテリーナ。安心してくれ。僕の心の一部は、永遠に君のものだ」
「はい?」
不穏な発言が出ました。
殿下は自分に酔った瞳で、熱く語り始めます。
「イザベラは素晴らしいパートナーだ。僕の情熱を受け止めてくれる。だが、君のような『静寂な癒やし』も、僕には必要なんだ」
「え、あの、何を……」
「だから、カテリーナ。婚約は破棄されても、僕たちは『魂の友』として繋がっていようじゃないか!」
「お断りします!」
わたくしは即答してしまいました。
会場がざわつきます。
「あ、いえ、その……不敬だからです!」
わたくしは慌てて取り繕いました。
「イザベラ様という太陽がいらっしゃるのに、わたくしのような『元・婚約者』が近くにいては、光が濁ってしまいます! それは殿下の輝きを損なう行為です!」
「ああ、またそうやって君は……! どこまでも僕のことを第一に考えてくれるんだね!」
殿下は感動して、さらに強く手を握ってきました。
痛い。
握力が無駄に強いです。
離して。今すぐ離して。手洗いうがいをしたいです。
「カテリーナ、君に『王宮フリーパス権』を与えよう!」
「いりません!」
「いつでも僕に会いに来ていいんだよ? 僕のポエムの新作ができたら、一番に君に聞かせよう!」
「結構です! 郵送も拒否します!」
「遠慮しなくていいんだよ! 君の部屋の窓辺で、僕がセレナーデを歌う権利もあげよう!」
「通報しますわ!」
会話が噛み合いません。
殿下の善意(?)の暴走が止まらないのです。
このままでは、「婚約破棄されたけど、王太子の公認ストーカー」という謎のポジションに就任させられてしまいます!
その時。
「……殿下。そこまでになさいませ」
凛とした声が響きました。
イザベラ様です。
彼女は真紅のドレスの裾を翻し、殿下とわたくしの間に割って入りました。
そして、殿下の手をバシッと叩き、わたくしを解放してくれました。
「殿下。カテリーナ様は、過去を断ち切って前へ進もうとされているのです。それを引き止めるのは、男らしくありませんわ」
「イ、イザベラ……? だが、カテリーナが可哀想で……」
「可哀想ではありません! 彼女は強い女性です!」
イザベラ様はわたくしに向き直り、ニッコリと微笑みました。
その笑顔は、かつての敵意など微塵もない、同志に向ける信頼の笑顔でした。
「カテリーナ様。……今まで、ありがとうございました」
「イザベラ様……」
「殿下のことは、わたくしが責任を持って『管理(もとい幸せに)』いたします。ですから、あなたは安心して……ご自分の幸せを掴んでくださいませ」
「……っ!」
イザベラ様。
なんて立派になられて……!
「管理」という言葉に若干の含みを感じますが、彼女ならきっと、この暴走機関車(殿下)を乗りこなしてくれるでしょう。
「ありがとうございます、イザベラ様。……殿下を、よろしくお願いいたします(返品不可で)」
わたくしたちは固く握手を交わしました。
友情の成立です。
そして、厄介事の譲渡完了の瞬間です。
「ううっ……二人の友情に涙が出るよ……! わかった、僕は二人の意思を尊重しよう!」
殿下もついに納得し(たぶん)、満足げに頷きました。
「では、これにて一件落着とする!」
陛下が宣言し、杖を床に打ち鳴らしました。
その音が、わたくしにとっては「解放のゴング」に聞こえました。
終わった。
終わりました。
長かった王妃教育、窮屈なドレス、噛み合わない会話……全てからの卒業です!
わたくしは深々とカーテシーをしました。
顔を上げた瞬間、思わず口元がニヤけそうになりましたが、袖で顔を覆って「感涙にむせぶフリ」で誤魔化しました。
(やった……! やったわ! これからは自由なナマケモノ生活!)
わたくしは心の中でガッツポーズをしました。
拳を握りしめ、天高く突き上げるイメージです。
しかし。
わたくしが踵を返し、出口へと向かおうとしたその瞬間。
「……待て」
列の中から、一人の男が静かに歩み出てきました。
その場を支配するような、冷たくも圧倒的な存在感。
アレクセイ様です。
彼は陛下の前まで進み出ると、優雅に礼をしました。
「陛下。……この良き日に、私からも一つ、ご報告がございます」
「ほう、ベルンシュタイン公爵か。何用だ?」
アレクセイ様はゆっくりと振り返り、わたくしを見据えました。
その瞳は、昨夜の馬車の中で見た、あの熱を帯びた色をしていました。
(えっ、ちょっ、公爵様? まさかここで?)
嫌な予感がします。
非常に嫌な予感がします。
「婚約破棄」の次は「退場」のはずでした。
シナリオにない展開です!
「先ほど、カテリーナ嬢は自由の身となられました」
アレクセイ様の声が、広間に朗々と響き渡ります。
「つきましては……彼女の新たな婚約者として、この私が名乗りを上げさせていただきます」
ドカン!!
会場に爆弾が投下されました。
わたくしの心の中のガッツポーズが、粉々に砕け散りました。
「……は?」
「ええっ!?」
「公爵が!? カテリーナ嬢を!?」
広間中が蜂の巣をつついたような騒ぎになります。
陛下も目を丸くしています。
アレクセイ様はスタスタとわたくしの元へ歩み寄り、逃げようとするわたくしの腰をガシッと掴みました。
「逃がさんと言っただろう?」
耳元で囁かれる悪魔の言葉。
「さあ、カテリーナ。……第二ラウンドの始まりだ」
わたくしの「完全なる自由」は、わずか数十秒で終了しました。
どうやらわたくしは、一つの檻から出て、より豪華で頑丈な檻へと移送される運命だったようです。
わたくしは引きつった笑顔のまま、天を仰ぎました。
(神様……この「熨斗(のし)」、誰か受け取ってくれませんことーーーっ!?)
わたくしの心の叫びは、祝福の拍手にかき消されていきました。
天井の高い広大な空間に、重苦しい静寂が満ちていました。
玉座には国王陛下と王妃殿下。
その左右には、国の重鎮である大臣たちがズラリと並んでいます。
そして、中央の赤い絨毯の上には、三人の人物が立っていました。
王太子フレデリック殿下。
公爵令嬢イザベラ様。
そして、わたくし、カテリーナ・フォン・クロイツです。
本日は、歴史的な日です。
国の未来を左右する重大発表――すなわち、「王太子殿下の婚約者変更」が正式に布告される日なのです!
(……笑ってはいけません。絶対に、笑ってはいけませんわ!)
わたくしは下を向き、必死に表情筋と戦っておりました。
頬が緩みそうになるのを、奥歯を噛み締めて耐えます。
もしここで「ヤッターー!!」と万歳三唱でもしようものなら、不敬罪で首が飛びます。
あくまで「悲劇のヒロイン」として、この場を乗り切らねばなりません。
「……これより、王命を伝える」
宰相代理の臣下が、羊皮紙を広げました。
(ちなみに宰相であるアレクセイ様は、あえて臣下の列に混ざり、ニヤニヤしながらこちらを見ています。性格が悪いです)
「王太子フレデリックと、クロイツ伯爵令嬢カテリーナの婚約を、本日をもって白紙とする」
キタ!
来ました!
「白紙」という言葉の響き、なんと甘美なのでしょう!
「同時に、王太子フレデリックと、ベルンシュタイン公爵令嬢イザベラの新たな婚約をここに認めるものとする」
おおお……!
わたくしの心の中で、ファンファーレが鳴り響きます。
天使がラッパを吹き、ハトが飛び立ち、空から花びらが降ってくる幻覚が見えます。
自由だ。
ついにわたくしは、自由を手に入れたのです!
「……カテリーナよ」
玉座の国王陛下が、重々しく口を開きました。
「この決定、其の方にとっては受け入れ難いものであろう。長年、王太子妃となるべく研鑽を積んできた其の方の無念、察するに余りある」
「……っ(嬉しすぎて震えが止まりません)」
「だが、これは王太子の強い希望であり、また国益(隣国王女への対策)を鑑みての苦渋の決断である。……恨むなら、余を恨め」
陛下……!
なんてお優しい言葉でしょう。
恨むだなんてとんでもない。
むしろ感謝状を贈りたいくらいです。
今すぐ玉座に駆け寄って、陛下の靴を磨かせていただきたい!
「……もったいないお言葉でございます、陛下」
わたくしは震える声(演技)で答えました。
「わたくしのことなど、どうでもよろしいのです。全ては殿下の御心のままに……。殿下が幸せになられることこそが、わたくしの唯一の望みでございます」
「ううむ……なんと健気な……」
陛下が目頭を押さえました。
王妃殿下もハンカチで涙を拭っています。
周囲の大臣たちからも、鼻をすする音が聞こえてきます。
「あんなに良い娘を……」
「愛ゆえに身を引くとは、まさに聖女の鑑……」
よし。
雰囲気作りは完璧です。
このままスムーズに退場し、出口でスキップをして帰るだけです。
しかし。
ここで黙っていられないのが、あの男でした。
「カテリーナ……」
フレデリック殿下が、悲痛な面持ちで一歩進み出てきました。
「すまない。本当に、すまない……!」
「……殿下?」
「君がどれほど深く傷ついているか、僕にはわかるよ。今も震えているじゃないか(笑いを堪えているだけです)」
殿下はわたくしの手を取り、ギュッと握りしめました。
「君は僕の『影』を踏んだだけで身を引くと言った。その潔癖なまでの高潔さ、そして僕への深すぎる愛……僕は一生忘れないよ」
「……恐縮です(早く忘れてください)」
「でもね、カテリーナ。安心してくれ。僕の心の一部は、永遠に君のものだ」
「はい?」
不穏な発言が出ました。
殿下は自分に酔った瞳で、熱く語り始めます。
「イザベラは素晴らしいパートナーだ。僕の情熱を受け止めてくれる。だが、君のような『静寂な癒やし』も、僕には必要なんだ」
「え、あの、何を……」
「だから、カテリーナ。婚約は破棄されても、僕たちは『魂の友』として繋がっていようじゃないか!」
「お断りします!」
わたくしは即答してしまいました。
会場がざわつきます。
「あ、いえ、その……不敬だからです!」
わたくしは慌てて取り繕いました。
「イザベラ様という太陽がいらっしゃるのに、わたくしのような『元・婚約者』が近くにいては、光が濁ってしまいます! それは殿下の輝きを損なう行為です!」
「ああ、またそうやって君は……! どこまでも僕のことを第一に考えてくれるんだね!」
殿下は感動して、さらに強く手を握ってきました。
痛い。
握力が無駄に強いです。
離して。今すぐ離して。手洗いうがいをしたいです。
「カテリーナ、君に『王宮フリーパス権』を与えよう!」
「いりません!」
「いつでも僕に会いに来ていいんだよ? 僕のポエムの新作ができたら、一番に君に聞かせよう!」
「結構です! 郵送も拒否します!」
「遠慮しなくていいんだよ! 君の部屋の窓辺で、僕がセレナーデを歌う権利もあげよう!」
「通報しますわ!」
会話が噛み合いません。
殿下の善意(?)の暴走が止まらないのです。
このままでは、「婚約破棄されたけど、王太子の公認ストーカー」という謎のポジションに就任させられてしまいます!
その時。
「……殿下。そこまでになさいませ」
凛とした声が響きました。
イザベラ様です。
彼女は真紅のドレスの裾を翻し、殿下とわたくしの間に割って入りました。
そして、殿下の手をバシッと叩き、わたくしを解放してくれました。
「殿下。カテリーナ様は、過去を断ち切って前へ進もうとされているのです。それを引き止めるのは、男らしくありませんわ」
「イ、イザベラ……? だが、カテリーナが可哀想で……」
「可哀想ではありません! 彼女は強い女性です!」
イザベラ様はわたくしに向き直り、ニッコリと微笑みました。
その笑顔は、かつての敵意など微塵もない、同志に向ける信頼の笑顔でした。
「カテリーナ様。……今まで、ありがとうございました」
「イザベラ様……」
「殿下のことは、わたくしが責任を持って『管理(もとい幸せに)』いたします。ですから、あなたは安心して……ご自分の幸せを掴んでくださいませ」
「……っ!」
イザベラ様。
なんて立派になられて……!
「管理」という言葉に若干の含みを感じますが、彼女ならきっと、この暴走機関車(殿下)を乗りこなしてくれるでしょう。
「ありがとうございます、イザベラ様。……殿下を、よろしくお願いいたします(返品不可で)」
わたくしたちは固く握手を交わしました。
友情の成立です。
そして、厄介事の譲渡完了の瞬間です。
「ううっ……二人の友情に涙が出るよ……! わかった、僕は二人の意思を尊重しよう!」
殿下もついに納得し(たぶん)、満足げに頷きました。
「では、これにて一件落着とする!」
陛下が宣言し、杖を床に打ち鳴らしました。
その音が、わたくしにとっては「解放のゴング」に聞こえました。
終わった。
終わりました。
長かった王妃教育、窮屈なドレス、噛み合わない会話……全てからの卒業です!
わたくしは深々とカーテシーをしました。
顔を上げた瞬間、思わず口元がニヤけそうになりましたが、袖で顔を覆って「感涙にむせぶフリ」で誤魔化しました。
(やった……! やったわ! これからは自由なナマケモノ生活!)
わたくしは心の中でガッツポーズをしました。
拳を握りしめ、天高く突き上げるイメージです。
しかし。
わたくしが踵を返し、出口へと向かおうとしたその瞬間。
「……待て」
列の中から、一人の男が静かに歩み出てきました。
その場を支配するような、冷たくも圧倒的な存在感。
アレクセイ様です。
彼は陛下の前まで進み出ると、優雅に礼をしました。
「陛下。……この良き日に、私からも一つ、ご報告がございます」
「ほう、ベルンシュタイン公爵か。何用だ?」
アレクセイ様はゆっくりと振り返り、わたくしを見据えました。
その瞳は、昨夜の馬車の中で見た、あの熱を帯びた色をしていました。
(えっ、ちょっ、公爵様? まさかここで?)
嫌な予感がします。
非常に嫌な予感がします。
「婚約破棄」の次は「退場」のはずでした。
シナリオにない展開です!
「先ほど、カテリーナ嬢は自由の身となられました」
アレクセイ様の声が、広間に朗々と響き渡ります。
「つきましては……彼女の新たな婚約者として、この私が名乗りを上げさせていただきます」
ドカン!!
会場に爆弾が投下されました。
わたくしの心の中のガッツポーズが、粉々に砕け散りました。
「……は?」
「ええっ!?」
「公爵が!? カテリーナ嬢を!?」
広間中が蜂の巣をつついたような騒ぎになります。
陛下も目を丸くしています。
アレクセイ様はスタスタとわたくしの元へ歩み寄り、逃げようとするわたくしの腰をガシッと掴みました。
「逃がさんと言っただろう?」
耳元で囁かれる悪魔の言葉。
「さあ、カテリーナ。……第二ラウンドの始まりだ」
わたくしの「完全なる自由」は、わずか数十秒で終了しました。
どうやらわたくしは、一つの檻から出て、より豪華で頑丈な檻へと移送される運命だったようです。
わたくしは引きつった笑顔のまま、天を仰ぎました。
(神様……この「熨斗(のし)」、誰か受け取ってくれませんことーーーっ!?)
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