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34話
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「学園長、ついに取り巻き数名からの正式な証言が出揃いました。これでティアラ様に対する中傷は完全に虚偽だと立証できます」
アルフレッド教官が、厚い書類の束を持って学園長室へ入る。
そこにはマリアや取り巻きの面々も同席していた。数日前から取り巻きたちが相次いで証言をまとめ、学園長へ提出してきたのだ。
「そうか、ついに確定的な証拠が揃ったのだな」
学園長は年配の威厳ある男性。これまで中立の立場を保っていたが、さすがにここまで事実が集まると動かざるを得ない。
「ティアラ様がマリアさんを陥れたなどという事実は一切ない。むしろ、それを囁いていたのは嫉妬心を抱いた取り巻きたちだった。そして周囲も面白半分で噂を拡散してしまった――間違いありませんね」
アルフレッドがうなずくと、マリアも声を重ねる。
「はい、私自身、ティアラ様から嫌がらせなど受けていません。学園の皆さんにも、それを知ってほしいんです」
取り巻きの一人がそっと顔を上げ、学園長に向き直った。
「私たちは王子殿下にも直接謝罪し、罪を認めたいと思っています。ティアラ様に対して取り返しのつかないことをしました。罰を受ける覚悟はあります」
学園長は厳しい眼差しを取り巻きたちに向けつつも、静かに口を開く。
「もちろん、学園として何らかの処分は考えねばならない。しかし、君たちが事実を隠さず打ち明けてくれたことを考慮しよう。今後は誠実に学業に励むことを誓えるかね」
取り巻きたちは揃って深々と頭を下げる。
それが心からの反省かどうかは、人によっては疑問を抱くかもしれない。だが、彼女たちの中には確かに後悔と懺悔の念が見える。
「学園としても、ティアラ様の名誉を回復する措置を取る必要がある。全校生徒に向けて、今回の噂が虚偽であった旨を伝える。それが我々の責務だ」
マリアはその言葉に少しほっとした表情を浮かべる。
「ティアラ様が戻ってこられたら、この証明がきっと救いになるはずです。少なくとも“悪役令嬢”などという汚名は完全に晴れるはず」
アルフレッドは深くうなずき、マリアに微笑む。
「君が体を張って証言を集め続けたことも大きかった。王子殿下も、その報告を受けている。今はもう、ティアラ様の無実を疑う者はいないだろう」
教室へ戻る廊下で、マリアはほんの少し肩の力が抜けた様子を見せる。
とはいえ、まだ心はどこか落ち着かない。
「ティアラ様がこれで喜んでくれるのかな……早く会いたいです」
アルフレッドはマリアの呟きを耳にしながら、柔らかい声で励ます。
「きっと会えるさ。殿下が動いている以上、ティアラ様を見つけられないわけがない。私たちは、彼女が戻ったときのために準備を万全にしておけばいい」
マリアは小さく笑みをこぼす。
「そうですね。帰ってきたら、私は精一杯の謝意と感謝を伝えたい。噂を信じず、もっと早く動けていればと後悔していますが、今度こそ直接お話ししたいです」
全ての準備は整いつつある。
あとは、ティアラ本人がこの真相を知り、再び学園に戻ってくるかどうか――
その鍵は、王子とティアラの再会に託されている。
アルフレッド教官が、厚い書類の束を持って学園長室へ入る。
そこにはマリアや取り巻きの面々も同席していた。数日前から取り巻きたちが相次いで証言をまとめ、学園長へ提出してきたのだ。
「そうか、ついに確定的な証拠が揃ったのだな」
学園長は年配の威厳ある男性。これまで中立の立場を保っていたが、さすがにここまで事実が集まると動かざるを得ない。
「ティアラ様がマリアさんを陥れたなどという事実は一切ない。むしろ、それを囁いていたのは嫉妬心を抱いた取り巻きたちだった。そして周囲も面白半分で噂を拡散してしまった――間違いありませんね」
アルフレッドがうなずくと、マリアも声を重ねる。
「はい、私自身、ティアラ様から嫌がらせなど受けていません。学園の皆さんにも、それを知ってほしいんです」
取り巻きの一人がそっと顔を上げ、学園長に向き直った。
「私たちは王子殿下にも直接謝罪し、罪を認めたいと思っています。ティアラ様に対して取り返しのつかないことをしました。罰を受ける覚悟はあります」
学園長は厳しい眼差しを取り巻きたちに向けつつも、静かに口を開く。
「もちろん、学園として何らかの処分は考えねばならない。しかし、君たちが事実を隠さず打ち明けてくれたことを考慮しよう。今後は誠実に学業に励むことを誓えるかね」
取り巻きたちは揃って深々と頭を下げる。
それが心からの反省かどうかは、人によっては疑問を抱くかもしれない。だが、彼女たちの中には確かに後悔と懺悔の念が見える。
「学園としても、ティアラ様の名誉を回復する措置を取る必要がある。全校生徒に向けて、今回の噂が虚偽であった旨を伝える。それが我々の責務だ」
マリアはその言葉に少しほっとした表情を浮かべる。
「ティアラ様が戻ってこられたら、この証明がきっと救いになるはずです。少なくとも“悪役令嬢”などという汚名は完全に晴れるはず」
アルフレッドは深くうなずき、マリアに微笑む。
「君が体を張って証言を集め続けたことも大きかった。王子殿下も、その報告を受けている。今はもう、ティアラ様の無実を疑う者はいないだろう」
教室へ戻る廊下で、マリアはほんの少し肩の力が抜けた様子を見せる。
とはいえ、まだ心はどこか落ち着かない。
「ティアラ様がこれで喜んでくれるのかな……早く会いたいです」
アルフレッドはマリアの呟きを耳にしながら、柔らかい声で励ます。
「きっと会えるさ。殿下が動いている以上、ティアラ様を見つけられないわけがない。私たちは、彼女が戻ったときのために準備を万全にしておけばいい」
マリアは小さく笑みをこぼす。
「そうですね。帰ってきたら、私は精一杯の謝意と感謝を伝えたい。噂を信じず、もっと早く動けていればと後悔していますが、今度こそ直接お話ししたいです」
全ての準備は整いつつある。
あとは、ティアラ本人がこの真相を知り、再び学園に戻ってくるかどうか――
その鍵は、王子とティアラの再会に託されている。
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