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「おはよう、リーフィ。昨夜はよく眠れたかい?」
翌朝。
燦々と朝日が降り注ぐダイニングルームで、クライヴ様が眩しい笑顔で私を迎えた。
彼は上機嫌だった。
それもそうだろう。昨夜、長年の(といっても一ヶ月だが)片思いが成就し、正式に婚約者となったのだから。
背景に薔薇の花が咲き乱れている幻覚が見えるほど、今の彼は「幸せオーラ」を全開にしている。
「おはようございます、クライヴ様。睡眠効率は良好でした」
私は席に着き、家令のハンスさんが淹れてくれたコーヒーを一口飲んだ。
そして、愛用の鞄から分厚い書類の束を取り出し、ドサリとテーブルに置いた。
「……なんだ、それは? 愛の交換日記か?」
クライヴ様が期待に満ちた目で聞いてくる。
「いいえ。『婚姻に伴う生活協定書(草案)』です」
「……け、契約書?」
「はい。昨夜のプロポーズ受諾は『基本合意』に過ぎません。円滑な結婚生活を送るためには、詳細な運用ルール(SLA)を定めておく必要があります」
私は書類をめくり、ペンを構えた。
「ロマンも大切ですが、生活は現実です。特に私たちのような多忙な共働き夫婦にとって、ルールの不明確さは争いの種(リスク)になります」
「……君らしいな」
クライヴ様は苦笑しつつ、愛おしそうに私を見つめた。
「わかった。君の提案を聞こう。どんな条項だ?」
「まず第一条。『公私混同の禁止について』」
私は読み上げた。
「執務室でのイチャイチャ行為は、業務効率を著しく低下させるため、原則禁止とします。特に『膝枕』『壁ドン』『不意打ちのキス』は、休憩時間及び退勤後のみ許可するものとします」
「異議あり」
クライヴ様が即座に手を挙げた。
「なんだい、その厳しい制限は。私は君の働く姿を見ると、無性に抱きしめたくなる衝動に駆られるんだ。それを我慢しろと?」
「我慢してください。先日もあなたが私の首筋にキスをしたせいで、決算書の数字が一桁ズレかけました。国家予算に関わるミスです」
「……むう。だが、スキンシップによるストレス軽減効果も実証されているはずだ」
「では、一日三回まで『補給タイム』を設けます。それ以上は有料(残業扱い)です」
「わかった。妥協しよう」
「次に第二条。『家事分担と資産管理について』」
私は次々と項目を読み上げていく。
私の給与口座の管理権限。
休日の過ごし方(ゴロゴロする権利の保証)。
そして、万が一喧嘩をした際の仲直りプロトコル(解決手順)。
普通なら、「愛があればルールなんていらない」と言うかもしれない。
けれど、私は違う。
ルールがあるからこそ、安心して背中を預けられる。
言葉にして確認し合うからこそ、誤解やすれ違いを防げる。
それが、私なりの「誠実さ」であり、彼への「愛の形」なのだ。
「……以上、全五十条です。修正点はありますか?」
私が説明を終えると、クライヴ様はコーヒーカップを置き、静かに私を見つめた。
怒っているだろうか。
ムードがないと呆れられただろうか。
少し不安になって彼を見ると、彼は――泣いていた。
「……っ!? ク、クライヴ様!?」
「すまない……嬉しくて……」
彼はハンカチで目元を拭った。
「君がこれほど真剣に、私との『未来』を考えてくれていたなんて……」
「は?」
「どうでもいい相手なら、こんな細かいルールなんて作らないだろう? 君はこの契約書を通して、『一生私と添い遂げる覚悟』を見せてくれたんだ」
クライヴ様は契約書を手に取り、愛しげに撫でた。
「この第五十条、『老後の茶飲み友達としての確約』……なんて愛おしい条項なんだ。君はもう、六十年後のことまで考えてくれているのか」
「あ、それはリスクヘッジの一環で……」
「サインするよ。中身なんて読まなくてもいい。君が作ったルールなら、それが私にとっての世界の法律だ」
彼はペンを取り、サラサラと署名した。
「ちょ、読んでください! 『全財産をリーフィに譲渡する』とか書いてあったらどうするんですか!」
「構わん。私の命ごと君にくれてやる」
「……重いです」
私は顔を赤らめて視線を逸らした。
この人の「全肯定」ぶりには、私の計算機もオーバーヒート気味だ。
「さて、契約締結も済んだことだし」
クライヴ様は署名済みの契約書をハンスさんに渡し(「額縁に入れて家宝にする」と言っていた)、改めて私に向き直った。
「次は、最大のイベントの準備だな」
「ええ。そうですね」
私は手帳を開いた。
「『結婚式』の件です」
「ああ! 一生に一度の晴れ舞台だ!」
クライヴ様の目が少年のように輝く。
「私の希望としては、王都の大聖堂を貸し切り、一週間にわたる祝祭を行いたい。招待客は国内外から三千人。パレードには魔法で花吹雪を舞わせ、夜は花火を打ち上げる」
「……」
私の手が止まった。
「……はい?」
「衣装は最低でも十着はお色直しをしたいな。君のウェディングドレス姿……想像しただけで涙が出そうだ」
「ちょっと待ってください」
私は「待った」をかけた。
「一週間? 三千人? 十着?」
「ああ。我がアークライト公爵家の威信と、私の君への愛を示すには、これでも控えめなくらいだ」
「却下です」
私は即答した。
「正気ですか? 一週間も拘束されたら業務が滞ります。三千人の挨拶回りなんてしたら、私の顔面筋肉が痙攣して『笑顔地蔵』になってしまいます」
「しかし、結婚式だぞ?」
「結婚式とは、『法的契約の完了を社会的に通知する儀式』です。必要最小限で十分です」
私は自分のプラン(ペラ紙一枚)を提示した。
「私の提案はこちら。『フォトウェディング+親族のみの食事会』。所要時間三時間。衣装は一着。これなら日帰りで済みますし、予算も百分の一で済みます」
「……さ、三時間……?」
クライヴ様が絶句した。
「リーフィ……君は、夢がないのか?」
「夢より実益です。浮いた予算で新居の設備投資(全自動洗濯機など)をした方が、よほど建設的です」
「いや、駄目だ! 譲れない!」
クライヴ様がバンッとテーブルを叩いた。
「私は君を世界一の美女として自慢したいんだ! あのドレス姿を全人類に見せつけたいんだ! 写真だけで終わらせるなんて、資源(君の美貌)の無駄遣いだ!」
「見せびらかす必要はありません! 自己満足です!」
「自己満足で何が悪い! 愛とは自己満足の押し付け合いだ!」
「開き直りましたね!?」
朝の爽やかなダイニングルームが、一瞬にして戦場と化した。
ロマン派(クライヴ)VS 合理派(リーフィ)。
絶対に交わらない二つの正義が、火花を散らす。
「いいかい、リーフィ。君は自分の価値を過小評価している。君が花嫁衣装を着れば、その輝きで王都の照明代が浮くレベルなんだぞ!」
「意味がわかりません! 大体、重いドレスを着て一日中立ちっぱなしなんて、拷問です!」
「私がずっと抱っこしてやる!」
「それこそ衆人環視の恥辱プレイです!」
私たちは睨み合った。
お互いに一歩も引かない。
ハンスさんや使用人たちが、ハラハラしながら見守っている。
「……わかりました」
私が先に息を吐いた。
「平行線ですね。ここは一つ、折衷案を出すべきです」
「折衷案?」
「はい。お互いの要求を取り入れつつ、許容範囲内で着地させる。……交渉(ネゴシエーション)の時間です」
私はニヤリと笑った。
結婚生活最初の共同作業が、「ケーキ入刀」ではなく「結婚式の規模を巡るガチ交渉」になるとは。
「望むところだ。私も伊達に宰相をやっていない。君を論破して、必ず豪華絢爛な式を挙げさせてみせる」
クライヴ様も不敵に笑う。
「負けませんよ。私のコスト意識を甘く見ないでください」
こうして、私たちの「幸せな結婚準備」という名の、血で血を洗うプレゼン合戦の幕が切って落とされた。
愛しているからこそ、譲れないものがある。
……まあ、端から見れば「ただのバカップルの喧嘩」にしか見えないのだが。
翌朝。
燦々と朝日が降り注ぐダイニングルームで、クライヴ様が眩しい笑顔で私を迎えた。
彼は上機嫌だった。
それもそうだろう。昨夜、長年の(といっても一ヶ月だが)片思いが成就し、正式に婚約者となったのだから。
背景に薔薇の花が咲き乱れている幻覚が見えるほど、今の彼は「幸せオーラ」を全開にしている。
「おはようございます、クライヴ様。睡眠効率は良好でした」
私は席に着き、家令のハンスさんが淹れてくれたコーヒーを一口飲んだ。
そして、愛用の鞄から分厚い書類の束を取り出し、ドサリとテーブルに置いた。
「……なんだ、それは? 愛の交換日記か?」
クライヴ様が期待に満ちた目で聞いてくる。
「いいえ。『婚姻に伴う生活協定書(草案)』です」
「……け、契約書?」
「はい。昨夜のプロポーズ受諾は『基本合意』に過ぎません。円滑な結婚生活を送るためには、詳細な運用ルール(SLA)を定めておく必要があります」
私は書類をめくり、ペンを構えた。
「ロマンも大切ですが、生活は現実です。特に私たちのような多忙な共働き夫婦にとって、ルールの不明確さは争いの種(リスク)になります」
「……君らしいな」
クライヴ様は苦笑しつつ、愛おしそうに私を見つめた。
「わかった。君の提案を聞こう。どんな条項だ?」
「まず第一条。『公私混同の禁止について』」
私は読み上げた。
「執務室でのイチャイチャ行為は、業務効率を著しく低下させるため、原則禁止とします。特に『膝枕』『壁ドン』『不意打ちのキス』は、休憩時間及び退勤後のみ許可するものとします」
「異議あり」
クライヴ様が即座に手を挙げた。
「なんだい、その厳しい制限は。私は君の働く姿を見ると、無性に抱きしめたくなる衝動に駆られるんだ。それを我慢しろと?」
「我慢してください。先日もあなたが私の首筋にキスをしたせいで、決算書の数字が一桁ズレかけました。国家予算に関わるミスです」
「……むう。だが、スキンシップによるストレス軽減効果も実証されているはずだ」
「では、一日三回まで『補給タイム』を設けます。それ以上は有料(残業扱い)です」
「わかった。妥協しよう」
「次に第二条。『家事分担と資産管理について』」
私は次々と項目を読み上げていく。
私の給与口座の管理権限。
休日の過ごし方(ゴロゴロする権利の保証)。
そして、万が一喧嘩をした際の仲直りプロトコル(解決手順)。
普通なら、「愛があればルールなんていらない」と言うかもしれない。
けれど、私は違う。
ルールがあるからこそ、安心して背中を預けられる。
言葉にして確認し合うからこそ、誤解やすれ違いを防げる。
それが、私なりの「誠実さ」であり、彼への「愛の形」なのだ。
「……以上、全五十条です。修正点はありますか?」
私が説明を終えると、クライヴ様はコーヒーカップを置き、静かに私を見つめた。
怒っているだろうか。
ムードがないと呆れられただろうか。
少し不安になって彼を見ると、彼は――泣いていた。
「……っ!? ク、クライヴ様!?」
「すまない……嬉しくて……」
彼はハンカチで目元を拭った。
「君がこれほど真剣に、私との『未来』を考えてくれていたなんて……」
「は?」
「どうでもいい相手なら、こんな細かいルールなんて作らないだろう? 君はこの契約書を通して、『一生私と添い遂げる覚悟』を見せてくれたんだ」
クライヴ様は契約書を手に取り、愛しげに撫でた。
「この第五十条、『老後の茶飲み友達としての確約』……なんて愛おしい条項なんだ。君はもう、六十年後のことまで考えてくれているのか」
「あ、それはリスクヘッジの一環で……」
「サインするよ。中身なんて読まなくてもいい。君が作ったルールなら、それが私にとっての世界の法律だ」
彼はペンを取り、サラサラと署名した。
「ちょ、読んでください! 『全財産をリーフィに譲渡する』とか書いてあったらどうするんですか!」
「構わん。私の命ごと君にくれてやる」
「……重いです」
私は顔を赤らめて視線を逸らした。
この人の「全肯定」ぶりには、私の計算機もオーバーヒート気味だ。
「さて、契約締結も済んだことだし」
クライヴ様は署名済みの契約書をハンスさんに渡し(「額縁に入れて家宝にする」と言っていた)、改めて私に向き直った。
「次は、最大のイベントの準備だな」
「ええ。そうですね」
私は手帳を開いた。
「『結婚式』の件です」
「ああ! 一生に一度の晴れ舞台だ!」
クライヴ様の目が少年のように輝く。
「私の希望としては、王都の大聖堂を貸し切り、一週間にわたる祝祭を行いたい。招待客は国内外から三千人。パレードには魔法で花吹雪を舞わせ、夜は花火を打ち上げる」
「……」
私の手が止まった。
「……はい?」
「衣装は最低でも十着はお色直しをしたいな。君のウェディングドレス姿……想像しただけで涙が出そうだ」
「ちょっと待ってください」
私は「待った」をかけた。
「一週間? 三千人? 十着?」
「ああ。我がアークライト公爵家の威信と、私の君への愛を示すには、これでも控えめなくらいだ」
「却下です」
私は即答した。
「正気ですか? 一週間も拘束されたら業務が滞ります。三千人の挨拶回りなんてしたら、私の顔面筋肉が痙攣して『笑顔地蔵』になってしまいます」
「しかし、結婚式だぞ?」
「結婚式とは、『法的契約の完了を社会的に通知する儀式』です。必要最小限で十分です」
私は自分のプラン(ペラ紙一枚)を提示した。
「私の提案はこちら。『フォトウェディング+親族のみの食事会』。所要時間三時間。衣装は一着。これなら日帰りで済みますし、予算も百分の一で済みます」
「……さ、三時間……?」
クライヴ様が絶句した。
「リーフィ……君は、夢がないのか?」
「夢より実益です。浮いた予算で新居の設備投資(全自動洗濯機など)をした方が、よほど建設的です」
「いや、駄目だ! 譲れない!」
クライヴ様がバンッとテーブルを叩いた。
「私は君を世界一の美女として自慢したいんだ! あのドレス姿を全人類に見せつけたいんだ! 写真だけで終わらせるなんて、資源(君の美貌)の無駄遣いだ!」
「見せびらかす必要はありません! 自己満足です!」
「自己満足で何が悪い! 愛とは自己満足の押し付け合いだ!」
「開き直りましたね!?」
朝の爽やかなダイニングルームが、一瞬にして戦場と化した。
ロマン派(クライヴ)VS 合理派(リーフィ)。
絶対に交わらない二つの正義が、火花を散らす。
「いいかい、リーフィ。君は自分の価値を過小評価している。君が花嫁衣装を着れば、その輝きで王都の照明代が浮くレベルなんだぞ!」
「意味がわかりません! 大体、重いドレスを着て一日中立ちっぱなしなんて、拷問です!」
「私がずっと抱っこしてやる!」
「それこそ衆人環視の恥辱プレイです!」
私たちは睨み合った。
お互いに一歩も引かない。
ハンスさんや使用人たちが、ハラハラしながら見守っている。
「……わかりました」
私が先に息を吐いた。
「平行線ですね。ここは一つ、折衷案を出すべきです」
「折衷案?」
「はい。お互いの要求を取り入れつつ、許容範囲内で着地させる。……交渉(ネゴシエーション)の時間です」
私はニヤリと笑った。
結婚生活最初の共同作業が、「ケーキ入刀」ではなく「結婚式の規模を巡るガチ交渉」になるとは。
「望むところだ。私も伊達に宰相をやっていない。君を論破して、必ず豪華絢爛な式を挙げさせてみせる」
クライヴ様も不敵に笑う。
「負けませんよ。私のコスト意識を甘く見ないでください」
こうして、私たちの「幸せな結婚準備」という名の、血で血を洗うプレゼン合戦の幕が切って落とされた。
愛しているからこそ、譲れないものがある。
……まあ、端から見れば「ただのバカップルの喧嘩」にしか見えないのだが。
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