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「……帰りませんか? もう十分、視察は完了したと思いますが」
王都のメインストリート。
私は日傘を差し、不機嫌を隠そうともせずに隣の男を見上げた。
「まだだ。あの店のクレープを食べていない」
アイザック様は、まるで遠足に来た子供のような輝く瞳で、屋台を指差した。
「……公爵閣下が道端でクレープの列に並ぶのですか? 警備上のリスク管理はどうなっていますか」
「平気だ。俺が一番強いからな」
根拠になっていないようで、妙に説得力のある答えだ。
あの日、クラーク王太子とミーナを撃退してから数日。
平和な日々が続くかと思いきや、アイザック様は事あるごとに私を外へと連れ出そうとする。
今日も「領民の暮らしを知るのも公爵夫人の務めだ(建前)」と言われ、デート(本音)に引っ張り出されたのだ。
「ほら、あーん」
「……自分で食べます」
人通りの多い大通りで、再び「餌付け」が始まろうとしていた。
周囲の視線が痛い。
特に女性客からの、「あれが氷の公爵様?」「あんな甘い顔をするなんて……」「隣の女性は誰?」というざわめきが突き刺さる。
(目立つ。非常に非効率的だわ)
私がさっさと食べて帰ろうと、クレープを受け取ったその時だった。
「きゃああっ!!」
突然、背後から甲高い悲鳴が聞こえた。
同時に、私の背中にドンッ!と誰かがぶつかってきた。
「……っ!」
私は体勢を崩しかけたが、アイザック様が瞬時に私の腰を支え、転倒を防いでくれた。
「大丈夫か、ローゼン」
「ええ、なんとか。クレープも無事です」
「そっちの心配か」
私が振り返ると、石畳の上に、桃色のドレスを着た少女が派手に転がっていた。
そして、その周囲には散乱した買い物袋。
「い、痛いぃ……」
少女は涙目で顔を上げ、私を睨みつけた。
「ひどいです、ローゼン様……! いくら私のことが憎いからって、突き飛ばすなんて……!」
その声に、周囲の通行人が足を止めた。
倒れている少女――ミーナ男爵令嬢に注目が集まる。
「あら、ミーナ様ではありませんか」
私は冷ややかに見下ろした。
クラーク様がいない。単独行動か。
それにしても、なんとも古典的な……。
「突き飛ばす? 私が?」
「はい! すれ違いざまに、肩を強く押されました! そんなに私が王太子殿下と結ばれたのが許せないのですか!?」
ミーナは大きな声で周囲に聞こえるように叫んだ。
野次馬たちがざわつく。
『あれ、悪役令嬢のローゼンじゃないか?』
『やっぱり性格悪いんだな……』
『可哀想に、あの子……』
空気が、私に対する非難の色に染まっていく。
ミーナの口元が、一瞬だけニヤリと歪んだのを私は見逃さなかった。
(なるほど。民衆を味方につけて、私を悪者に仕立て上げる算段か)
実に安直だ。
しかし、大衆心理というのは厄介なものだ。
ここで私が「やっていない」と叫んでも、見た目が怖い(目つきが悪い)私が不利になるだけだろう。
私はため息をつき、冷静に事実確認を開始した。
「ミーナ様。物理法則をご存知ですか?」
「は、はい……?」
「私は今、右手に日傘、左手にクレープを持っています。両手が塞がっている状態で、どうやって貴女を突き飛ばすのですか? タックルでもしたと?」
「そ、それは……体当たりをしてきたんです!」
「体当たり。なるほど。では、貴女が倒れている位置を見てください」
私は自身の足元と、彼女が倒れている場所を指差した。
「私が背後から体当たりをしたなら、貴女は前方に倒れるはずです。しかし、貴女は尻餅をつき、私の背中側に倒れている。これは、貴女が自分から私の背中にぶつかり、勝手に反動で転んだと考えるのが物理的に自然です」
「っ……!?」
「さらに言えば、私のクレープのクリームは微動だにしていません。もし体当たりをするほどの衝撃を与えたなら、この不安定なホイップは崩れているはず。……証明終了です」
私はクレープを一口齧り、淡々と結論づけた。
「よって、これは貴女の自損事故、あるいは当たり屋行為です。治療費の請求なら受け付けませんよ」
シーン……。
野次馬たちが静まり返った。
あまりにも理路整然とした(そして可愛げのない)反論に、誰も口を挟めない。
ミーナの顔が赤く染まる。
「な、なによ……! 屁理屈ばかり並べて!」
彼女は立ち上がり、ターゲットを変えた。
私の隣で、面白そうに事の顛末を眺めていたアイザック様に向かって、潤んだ瞳で駆け寄ったのだ。
「公爵様ぁ……! 聞いてください! ローゼン様ったら、口が達者で……私、怖くて……」
ミーナは上目遣いで、アイザック様の腕にすがりつこうとした。
「私、足を挫いてしまったみたいなんです。……立てないわ。公爵様、どうか手を貸していただけませんか?」
その仕草は、計算し尽くされた「守りたくなる女の子」そのものだった。
普通の男なら、絆されるかもしれない。
だが、相手が悪すぎる。
アイザック様は、すがりついてきた彼女の手を、まるで汚物でも見るかのようにヒョイと避けた。
「……誰だ、貴様は」
絶対零度の一言。
ミーナが凍りついた。
「え……? あ、あの、先日お会いしたミーナです! 王太子殿下の婚約者の……」
「知らん。俺の脳のメモリは、ローゼンのこと以外記憶しないように設定されている」
「そ、そんな……」
「それに、触るな。俺のこのジャケットは、ローゼンが選んでくれたものだ。貴様のような菌がついた手で汚されるわけにはいかない」
「き、菌!?」
酷い言い草だ。
さすがに少し同情しそうになるが、アイザック様は止まらない。
「足を挫いた? なら、そこを這って病院へ行け。俺の妻に濡れ衣を着せようとした罪、万死に値するが……ここで処刑するのもローゼンの服が汚れるから見逃してやる。失せろ」
殺気。
本物の、戦場を知る者だけが放てる濃密な殺気が、ミーナを直撃した。
「ひっ……!」
ミーナは恐怖で顔を引きつらせ、挫いたはずの足で脱兎のごとく駆け出した。
その速さは、オリンピック選手顔負けだった。
「……あ、足、治ったみたいですね」
私がクレープを飲み込んで呟くと、周囲の野次馬から笑いが漏れた。
疑惑の目は完全に晴れ、むしろ「変な女に絡まれて災難だったな」という同情の空気に変わっていた。
「まったく、不愉快な虫だ」
アイザック様は懐からハンカチを取り出し、私の背中(ミーナがぶつかった場所)を入念に払い始めた。
「大丈夫か、ローゼン。怪我はないか? 精神的ショックは? すぐに屋敷に帰って、最高級のカウンセリングを受けるか?」
「……大袈裟です。ただの当たり屋ですから」
私は残りのクレープを食べ終え、彼を見上げた。
「ですが……助かりました。あのまま騒がれていたら、クレープが不味くなるところでした」
「ふっ、そうか」
アイザック様は嬉しそうに私の頭を撫でた。
「君が論理的に相手を追い詰める姿……美しかったぞ。あの冷たい声で『物理法則をご存知ですか?』と言い放った瞬間、俺は再び恋に落ちた」
「……そうですか(理解不能)」
「ああ、もっと君の論理的な罵倒を聞きたい。今夜は俺にも説教してくれないか?」
「お断りします。残業はしません」
私たちは腕を組み(アイザック様が強引に組ませた)、再び歩き出した。
だが、私は気づいていた。
走り去ったミーナが、路地の角からこちらを睨みつけていた視線を。
その目は、恐怖ではなく、ドロドロとした執着に燃えていた。
『絶対に……許さない……! 私のものにならないなら、壊してやる……!』
そんな怨念めいた声が聞こえた気がして、私は少しだけ背筋が寒くなった。
(……面倒なことになりそうね)
私はアイザック様の腕に、無意識に少しだけ力を込めた。
すると彼は、それに気づいて優しく包み返してくれた。
「安心しろ。どんな敵が来ようと、俺が全て凍らせて粉砕してやる」
「……物理的な解決は最終手段にしてくださいね」
私の平穏なニート生活への道は、まだまだ遠そうだ。
王都のメインストリート。
私は日傘を差し、不機嫌を隠そうともせずに隣の男を見上げた。
「まだだ。あの店のクレープを食べていない」
アイザック様は、まるで遠足に来た子供のような輝く瞳で、屋台を指差した。
「……公爵閣下が道端でクレープの列に並ぶのですか? 警備上のリスク管理はどうなっていますか」
「平気だ。俺が一番強いからな」
根拠になっていないようで、妙に説得力のある答えだ。
あの日、クラーク王太子とミーナを撃退してから数日。
平和な日々が続くかと思いきや、アイザック様は事あるごとに私を外へと連れ出そうとする。
今日も「領民の暮らしを知るのも公爵夫人の務めだ(建前)」と言われ、デート(本音)に引っ張り出されたのだ。
「ほら、あーん」
「……自分で食べます」
人通りの多い大通りで、再び「餌付け」が始まろうとしていた。
周囲の視線が痛い。
特に女性客からの、「あれが氷の公爵様?」「あんな甘い顔をするなんて……」「隣の女性は誰?」というざわめきが突き刺さる。
(目立つ。非常に非効率的だわ)
私がさっさと食べて帰ろうと、クレープを受け取ったその時だった。
「きゃああっ!!」
突然、背後から甲高い悲鳴が聞こえた。
同時に、私の背中にドンッ!と誰かがぶつかってきた。
「……っ!」
私は体勢を崩しかけたが、アイザック様が瞬時に私の腰を支え、転倒を防いでくれた。
「大丈夫か、ローゼン」
「ええ、なんとか。クレープも無事です」
「そっちの心配か」
私が振り返ると、石畳の上に、桃色のドレスを着た少女が派手に転がっていた。
そして、その周囲には散乱した買い物袋。
「い、痛いぃ……」
少女は涙目で顔を上げ、私を睨みつけた。
「ひどいです、ローゼン様……! いくら私のことが憎いからって、突き飛ばすなんて……!」
その声に、周囲の通行人が足を止めた。
倒れている少女――ミーナ男爵令嬢に注目が集まる。
「あら、ミーナ様ではありませんか」
私は冷ややかに見下ろした。
クラーク様がいない。単独行動か。
それにしても、なんとも古典的な……。
「突き飛ばす? 私が?」
「はい! すれ違いざまに、肩を強く押されました! そんなに私が王太子殿下と結ばれたのが許せないのですか!?」
ミーナは大きな声で周囲に聞こえるように叫んだ。
野次馬たちがざわつく。
『あれ、悪役令嬢のローゼンじゃないか?』
『やっぱり性格悪いんだな……』
『可哀想に、あの子……』
空気が、私に対する非難の色に染まっていく。
ミーナの口元が、一瞬だけニヤリと歪んだのを私は見逃さなかった。
(なるほど。民衆を味方につけて、私を悪者に仕立て上げる算段か)
実に安直だ。
しかし、大衆心理というのは厄介なものだ。
ここで私が「やっていない」と叫んでも、見た目が怖い(目つきが悪い)私が不利になるだけだろう。
私はため息をつき、冷静に事実確認を開始した。
「ミーナ様。物理法則をご存知ですか?」
「は、はい……?」
「私は今、右手に日傘、左手にクレープを持っています。両手が塞がっている状態で、どうやって貴女を突き飛ばすのですか? タックルでもしたと?」
「そ、それは……体当たりをしてきたんです!」
「体当たり。なるほど。では、貴女が倒れている位置を見てください」
私は自身の足元と、彼女が倒れている場所を指差した。
「私が背後から体当たりをしたなら、貴女は前方に倒れるはずです。しかし、貴女は尻餅をつき、私の背中側に倒れている。これは、貴女が自分から私の背中にぶつかり、勝手に反動で転んだと考えるのが物理的に自然です」
「っ……!?」
「さらに言えば、私のクレープのクリームは微動だにしていません。もし体当たりをするほどの衝撃を与えたなら、この不安定なホイップは崩れているはず。……証明終了です」
私はクレープを一口齧り、淡々と結論づけた。
「よって、これは貴女の自損事故、あるいは当たり屋行為です。治療費の請求なら受け付けませんよ」
シーン……。
野次馬たちが静まり返った。
あまりにも理路整然とした(そして可愛げのない)反論に、誰も口を挟めない。
ミーナの顔が赤く染まる。
「な、なによ……! 屁理屈ばかり並べて!」
彼女は立ち上がり、ターゲットを変えた。
私の隣で、面白そうに事の顛末を眺めていたアイザック様に向かって、潤んだ瞳で駆け寄ったのだ。
「公爵様ぁ……! 聞いてください! ローゼン様ったら、口が達者で……私、怖くて……」
ミーナは上目遣いで、アイザック様の腕にすがりつこうとした。
「私、足を挫いてしまったみたいなんです。……立てないわ。公爵様、どうか手を貸していただけませんか?」
その仕草は、計算し尽くされた「守りたくなる女の子」そのものだった。
普通の男なら、絆されるかもしれない。
だが、相手が悪すぎる。
アイザック様は、すがりついてきた彼女の手を、まるで汚物でも見るかのようにヒョイと避けた。
「……誰だ、貴様は」
絶対零度の一言。
ミーナが凍りついた。
「え……? あ、あの、先日お会いしたミーナです! 王太子殿下の婚約者の……」
「知らん。俺の脳のメモリは、ローゼンのこと以外記憶しないように設定されている」
「そ、そんな……」
「それに、触るな。俺のこのジャケットは、ローゼンが選んでくれたものだ。貴様のような菌がついた手で汚されるわけにはいかない」
「き、菌!?」
酷い言い草だ。
さすがに少し同情しそうになるが、アイザック様は止まらない。
「足を挫いた? なら、そこを這って病院へ行け。俺の妻に濡れ衣を着せようとした罪、万死に値するが……ここで処刑するのもローゼンの服が汚れるから見逃してやる。失せろ」
殺気。
本物の、戦場を知る者だけが放てる濃密な殺気が、ミーナを直撃した。
「ひっ……!」
ミーナは恐怖で顔を引きつらせ、挫いたはずの足で脱兎のごとく駆け出した。
その速さは、オリンピック選手顔負けだった。
「……あ、足、治ったみたいですね」
私がクレープを飲み込んで呟くと、周囲の野次馬から笑いが漏れた。
疑惑の目は完全に晴れ、むしろ「変な女に絡まれて災難だったな」という同情の空気に変わっていた。
「まったく、不愉快な虫だ」
アイザック様は懐からハンカチを取り出し、私の背中(ミーナがぶつかった場所)を入念に払い始めた。
「大丈夫か、ローゼン。怪我はないか? 精神的ショックは? すぐに屋敷に帰って、最高級のカウンセリングを受けるか?」
「……大袈裟です。ただの当たり屋ですから」
私は残りのクレープを食べ終え、彼を見上げた。
「ですが……助かりました。あのまま騒がれていたら、クレープが不味くなるところでした」
「ふっ、そうか」
アイザック様は嬉しそうに私の頭を撫でた。
「君が論理的に相手を追い詰める姿……美しかったぞ。あの冷たい声で『物理法則をご存知ですか?』と言い放った瞬間、俺は再び恋に落ちた」
「……そうですか(理解不能)」
「ああ、もっと君の論理的な罵倒を聞きたい。今夜は俺にも説教してくれないか?」
「お断りします。残業はしません」
私たちは腕を組み(アイザック様が強引に組ませた)、再び歩き出した。
だが、私は気づいていた。
走り去ったミーナが、路地の角からこちらを睨みつけていた視線を。
その目は、恐怖ではなく、ドロドロとした執着に燃えていた。
『絶対に……許さない……! 私のものにならないなら、壊してやる……!』
そんな怨念めいた声が聞こえた気がして、私は少しだけ背筋が寒くなった。
(……面倒なことになりそうね)
私はアイザック様の腕に、無意識に少しだけ力を込めた。
すると彼は、それに気づいて優しく包み返してくれた。
「安心しろ。どんな敵が来ようと、俺が全て凍らせて粉砕してやる」
「……物理的な解決は最終手段にしてくださいね」
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