魔装戦士

河鹿 虫圭

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水の鎧は心を読む性質を持つ。相対した人の心を読み、動きを読む。晴山優吾はこの能力と相性が悪く、相手の心とそして、感情も読んでしまい相手の過去を垣間見てうまく動けなくなる。そして、そんな水の性質と相性が大変よろしいのは風の鎧である。未来を見る性質が水の性質をいい感じに妨害して相手の心と未来を読んで確実に相手へカウンターを叩き入れたり、逆にこちらから攻撃を仕掛けて未来を変えることも可能である。
雨が分散和音を刻むようにフィジオは二十日の攻撃を一手ずつ躱していく。二十日はその動きに苛立ちどうにかして攻撃を当てようと、風の刃を打ち込む。

「早く、倒れろ!」

「お前こそ、諦めろ。オレはテコでも動かん。」

目で追えない速度の攻防に四夜華は目を凝らして隙を伺う。そんな様子に班員たちは、呆気にとられる。

「結局、バケモンにはバケモンをぶつけりゃいいんだなって……」

「一方は半分人間だけどね。」

「すごいです……」

圧巻しているが、三人は三人で四夜華の動きを見ながら息を整えている。数分続いた風の嘶きは突然止まり、ボロボロになったブロック塀がそこら中に散乱していた。真ん中には馬乗りになったフィジオがいた。四夜華は手を振り下ろして鉄の糸で拘束しようとするが、フィジオはそれを振り向きもせずに止める。

「……どういうつもりだ。」

「オレの中には相手の心に敏感な奴がいてな……そいつはまだ寝ているんだが、お前のここ最近の過去を見てそいつがオレを止めたような気がするんだ。」

「何を言っている?」

「さぁ、何を言ってんだろうな……ただ、でも、お前の過去を見てオレの弱い部分が止めたのは真実で確実だ……こういう時、オレはどうすればいいかわからんが……」

フィジオは瞳を潤ませて目を閉じて再び目を開ける。今まで人でも魔族でもなかったフィジオの顔はうっすらと優吾の顔になっているように見えた。フィジオはそんな表情のまま、語りかける。

「ただ、俺はいつでもお前の味方になれる。だから、今は、俺たちのところに来て心を休ませろ。」

「……俺のことなんか知らないくせに……なんでそんなことが言える……!?」


「俺(の中にいる優吾)はお前みたいなやつを救えなかったからな……今度は手遅れにならないように俺は今、お前に手を伸ばす。」

馬乗りのままフィジオは手を伸ばし、和解の印を結ぼうとする。二十日はその手を見て戸惑う。この手を取れば、確実に自分の命は助かるだろう。だが、母はどうだろうか。ほぼ理性のないバケモノのようになっているが、母親だ。二十日は揺れ動く。手を取り、銀色の虫を裏切るか、手を振り払い、目の前の人間モドキとその仲間と協力して謀反を起こすか……。
迷った末、二十日は協力しようと手を伸ばそうとすると二人の間に第三者の声が聞こえた。

「行けませんね。裏切ろうとするなんて。」

視線を向けるとそこには銀色の使徒現幹部のユスリがいた。四夜華も声を聴くまでは反応もできておらず慌てて捕縛しようと糸を伸ばしたが、ユスリはその糸を蚊のように躱して二十日の肩へ手を置き、タブレット端末を見せる。そこには、理性を失ってうなっている母とサソリがいた。サソリは笑顔で手を振って母に尻尾を突き刺し、二十日の母から一時的に魔族細胞を中和して人間に戻す。

「母さん……!」

二十日の母は訳も分からずだが、画面に映った自分の息子を見て画面に近づく。

「糸…ココどこなの?あなた何に巻き込まれているの?」

「母さんごめんよ。俺、学校でいじめられてて……でも言えなくて……」

「わかってたわよそんなこと。帰ったらお説教だからね。」

「うんうんわかったよ。今すぐに……」

帰るから。と言った瞬間、母の首が飛び画面が鮮血で真っ赤に染まる。二十日は理解が追いつかず、数分そのままの表情で固まった。そして、画面の奥からサソリが顔を出すと笑顔で口を開いた。

「今すぐに、なんでしょうか?帰るなんて言ったら駄目ですよぉ?あなたは我々にとって必要な存在なのですから。」

「な、嘘だろ……」

「私はね、動画作成なんて全くやったことなんてできないので……」

サソリは二十日の母の首をもって二十日に見せつける。

「これは本物ですよ。」

「あ?あぁ?ああああ?!」

二十日は現実を受け入れられないのか、画面を見ながら涙を流すことしかできなくなりそのうち、表情が絶望へ染まっていく。そして、画面に映ったサソリは自分に標的が向かないように責任転嫁をする。

「これは君が悪いんだよ。君がそこにいる人間モドキに心を動かされて裏切ろうとした君のせいだ。母親もきっと天国で君を恨んでいるだろうね。これ以上間違えないようにこんな血なまぐさいことはこれっきりにしてくれ。」

「どうすれば……どうすれば……」

「言っただろう?目の前の青年を連れてきたらいいよ。なんてたって私は教祖だからね。死体を生き返らせることなんて造作もないよ。」

「本当に、本当に生き返らせてくれるんだよな?今度こそ、裏切らないから……」

「あぁ、もちろん。その言葉を聞けただけでも生き返らせてあげようと思ったよ。それじゃ頼んだよ。」

赤い画面が黒くなると消えた画面内に涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった自分の顔が映った。それよりも、その顔は完全に魔族になっていた。

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