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2/16:覚醒
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ユスリに投げられて生い茂る林に落ちた彩虹寺はもうろうとする意識をどうにかしようと刺された場所を炎の魔法であぶったりとするが、効果はあまりない。追いついたユスリを見るが、視界がぐらついて風景もユスリの姿も歪む。
「くそ……!」
「しょせん人間だな。魔族である俺の毒を受けてそこまで耐えたのは貴様が初めてだが……だが、それがどうしたというのだ。どのみち、貴様は今ここで死ぬ。どうあがいたって無駄だ。」
「無駄かどうかは私が決める……それに、なるほどこれに耐えた人間は私が初めてなのか……」
自然と口角が上がった彩虹寺に対してユスリは妙な感覚を覚え歩みを止める。人間とも魔族とも言い難いこの違和感に頭の中で何かに形容しようと必死に考えるが彩虹寺はその長考に隙を見つけユスリへ攻撃を仕掛ける。魔法使の彩虹寺にしては珍しく、拳を使い接近戦をする。焔を纏った拳をユスリへぶつける。その顔はなぜかにこやかで、しかしその奥に狂気を感じる表情をしている。そんな表情にユスリは本能的に恐怖があふれだすのを感じた。
「なんだ……貴様は……さっきとまるで別人のような魔力量と殺気だ……この間に貴様に何が起こった!?」
「さぁ……な!この感覚、私も久しいような感じがするのだ……」
拳を連続で当て続ける彩虹寺の力は魔族に匹敵するものがあると感じたユスリは麻痺毒の毒針を三本用意して投げつける。しかし、彩虹寺はその毒針を纏っている焔で燃やし尽くしてそのまま顔面へ拳をぶつける。
『本当に今、目の前のこいつに何が起こったんだ……俺の毒針で眠っている潜在能力を覚醒させてしまったのか?いや、今は……どうにかしてこいつを殺さないと行けない。』
そう考えるが、彩虹寺は全く隙が無い。数分猛攻、彩虹寺は烈火の如くユスリを攻め続ける。隙だらけだが全く隙がない。やがて彩虹寺の中の麻痺毒は中和され始める。意識がはっきりとしてきた彩虹寺はだんだんと体もだるくなるのを感じて攻撃の速度が落ちてくる。
「な......んだ?体が……だるく…はぁ、はぁ……」
『なんだか知らないが攻撃の速度が落ちてきたそ?まぁいい……今が好機!』
ユスリは当たれば即死の毒針を彩虹寺へ向かって投げつける。彩虹寺はだるい体を一心に動かし針を避ける。背後に生えていた樹木にその針が刺さると一瞬で枯れ果てる。それを見た彩虹寺は汗を浮かべる。
「まずいな……意識が戻ってきたのはいいが、反動で体があまり動かなくなってきている……」
だるい体を起こしてユスリの攻撃に備える。
「また、先ほどのような猛攻をされては困る……狂劇の雷撃」
ただの針を投げつけて彩虹寺の肩、腕、左胸に突き刺す。直後、雷の魔法を打ち込もうと手を構えるが、彩虹寺の前に小さな影が二つ立ちはだかった。
「ジュン、チハヤ!なぜここに……」
「お、おねえちゃんをいじめるな!」
「ぼくたちがおねえちゃんを助けるんだ!!」
「ガキが……邪魔だ……」
構えた手でそのまま雷魔法を打ち込むが、彩虹寺は二人をかばって前に出る。放たれた雷魔法はそのまま突き刺さった針へ雷撃が命中する。彩虹寺は雷撃でしびれながらうずくまる。
「「おねえちゃん!!」」
「私はいい、速く逃げろ!」
「逃がさないに決まってる。その子供も殺す!」
ユスリが双子へ手を伸ばすとシバの声が耳に入る。視線を向けるとフィジオを担いだボロボロのシバがいた。
「幹部代理!捕縛に成功したんですね!」
「あぁ、少し手間取ったがな。それより、早くそいつらを殺せ。」
ユスリは即死の毒針を数十本構えて三人へ投げつける。
「死ね。我らが栄光のため!」
迫る毒針に彩虹寺は双子をかばうように抱き込み背中を見せる。
─────────────
『やっと、準備ができた……俺は行くぞ。』
ギンロは優吾の言葉につぶれた喉から必死に声を出そうとするが、口の動きが肯定を示しているのをみた優吾はギンロが声を絞り出すのを止める。
『いい、わかっている。それよりもお前も回復に専念しとけよ。』
ギンロは無言でうなずき、優吾は光の先へと歩いていった。ギンロはつぶれた喉から絞り出すように声を出す。
『ボク”は”ま”だ先”だな”……』
優吾が向かっていく光の先を見るギンロの瞳は優しく輝いていた。
─────────────
フィジオはボロボロの体で三人の前に立って毒針から守る盾となっていた。彩虹寺はその光景に優吾が巻き込まれた爆発がフラッシュバックして思わず立ち上がってフィジオへ手を伸ばすがフィジオはそのまま針まみれで倒れる。体中に針が突き刺さり血がにじんでいく。
「フィ…優吾……」
「オレはフィジオだ。誰と……勘違いしているかわからんが……ごふっ……いやでも、お前に間違えられても、ごふっ……不快には思わな……」
そこで事切れるとフィジオの瞳から生気が消えた。彩虹寺はフィジオの屍から毒針を全部抜き重い体を抱えてその場から逃げようとする。だが、銀色の魔族二匹はそんな彩虹寺を逃がすまいと攻撃を仕掛けてくる。彩虹寺は双子もかばいながら林の中を走って逃げる。しかし、林の奥にだんだんと人気を感じて機関の班員としてこれ以上逃げて一般人に迷惑をかけるわけにはいかないと足を止める。双子は振り返りながら心配そうに見つめる。
「おねえちゃん?」
「どうしちゃったの?」
「私たちはなんとか逃げ切る。君たちはこのまま走って逃げろ。そして、本部の人たちを呼んできてくれ。」
双子を逃がすため彩虹寺は嘘をつき双子をその場から逃がした。そして、振り向くと二匹の魔族が迫っていた。
「ガキどもは逃げたか……まぁ後で探し出して殺すがな。」
「そうはさせない。この融合体……フィジオもわたさない。」
「果たして魔族二匹の攻撃にお前ごときの体が耐えられるかな?」
ユスリは即死の毒針を取り出し、シバは槍を構える。二人同時に向かってきて彩虹寺に向けて針先、槍先を迫ってくる。
『ここまでか……』
彩虹寺は目を閉じず、自分の死を受け入れようとする。迫る槍先と針先を見ていると腕の中が軽くなり目の前に晴山優吾が立つ。
「魔装!!炎化魔装!!」
真っ赤な焔、聞きなじみのある話し方…彩虹寺は直感する。目の前の鎧の戦士の中身は確実に晴山優吾だと……
2/16:覚醒
「くそ……!」
「しょせん人間だな。魔族である俺の毒を受けてそこまで耐えたのは貴様が初めてだが……だが、それがどうしたというのだ。どのみち、貴様は今ここで死ぬ。どうあがいたって無駄だ。」
「無駄かどうかは私が決める……それに、なるほどこれに耐えた人間は私が初めてなのか……」
自然と口角が上がった彩虹寺に対してユスリは妙な感覚を覚え歩みを止める。人間とも魔族とも言い難いこの違和感に頭の中で何かに形容しようと必死に考えるが彩虹寺はその長考に隙を見つけユスリへ攻撃を仕掛ける。魔法使の彩虹寺にしては珍しく、拳を使い接近戦をする。焔を纏った拳をユスリへぶつける。その顔はなぜかにこやかで、しかしその奥に狂気を感じる表情をしている。そんな表情にユスリは本能的に恐怖があふれだすのを感じた。
「なんだ……貴様は……さっきとまるで別人のような魔力量と殺気だ……この間に貴様に何が起こった!?」
「さぁ……な!この感覚、私も久しいような感じがするのだ……」
拳を連続で当て続ける彩虹寺の力は魔族に匹敵するものがあると感じたユスリは麻痺毒の毒針を三本用意して投げつける。しかし、彩虹寺はその毒針を纏っている焔で燃やし尽くしてそのまま顔面へ拳をぶつける。
『本当に今、目の前のこいつに何が起こったんだ……俺の毒針で眠っている潜在能力を覚醒させてしまったのか?いや、今は……どうにかしてこいつを殺さないと行けない。』
そう考えるが、彩虹寺は全く隙が無い。数分猛攻、彩虹寺は烈火の如くユスリを攻め続ける。隙だらけだが全く隙がない。やがて彩虹寺の中の麻痺毒は中和され始める。意識がはっきりとしてきた彩虹寺はだんだんと体もだるくなるのを感じて攻撃の速度が落ちてくる。
「な......んだ?体が……だるく…はぁ、はぁ……」
『なんだか知らないが攻撃の速度が落ちてきたそ?まぁいい……今が好機!』
ユスリは当たれば即死の毒針を彩虹寺へ向かって投げつける。彩虹寺はだるい体を一心に動かし針を避ける。背後に生えていた樹木にその針が刺さると一瞬で枯れ果てる。それを見た彩虹寺は汗を浮かべる。
「まずいな……意識が戻ってきたのはいいが、反動で体があまり動かなくなってきている……」
だるい体を起こしてユスリの攻撃に備える。
「また、先ほどのような猛攻をされては困る……狂劇の雷撃」
ただの針を投げつけて彩虹寺の肩、腕、左胸に突き刺す。直後、雷の魔法を打ち込もうと手を構えるが、彩虹寺の前に小さな影が二つ立ちはだかった。
「ジュン、チハヤ!なぜここに……」
「お、おねえちゃんをいじめるな!」
「ぼくたちがおねえちゃんを助けるんだ!!」
「ガキが……邪魔だ……」
構えた手でそのまま雷魔法を打ち込むが、彩虹寺は二人をかばって前に出る。放たれた雷魔法はそのまま突き刺さった針へ雷撃が命中する。彩虹寺は雷撃でしびれながらうずくまる。
「「おねえちゃん!!」」
「私はいい、速く逃げろ!」
「逃がさないに決まってる。その子供も殺す!」
ユスリが双子へ手を伸ばすとシバの声が耳に入る。視線を向けるとフィジオを担いだボロボロのシバがいた。
「幹部代理!捕縛に成功したんですね!」
「あぁ、少し手間取ったがな。それより、早くそいつらを殺せ。」
ユスリは即死の毒針を数十本構えて三人へ投げつける。
「死ね。我らが栄光のため!」
迫る毒針に彩虹寺は双子をかばうように抱き込み背中を見せる。
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『やっと、準備ができた……俺は行くぞ。』
ギンロは優吾の言葉につぶれた喉から必死に声を出そうとするが、口の動きが肯定を示しているのをみた優吾はギンロが声を絞り出すのを止める。
『いい、わかっている。それよりもお前も回復に専念しとけよ。』
ギンロは無言でうなずき、優吾は光の先へと歩いていった。ギンロはつぶれた喉から絞り出すように声を出す。
『ボク”は”ま”だ先”だな”……』
優吾が向かっていく光の先を見るギンロの瞳は優しく輝いていた。
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フィジオはボロボロの体で三人の前に立って毒針から守る盾となっていた。彩虹寺はその光景に優吾が巻き込まれた爆発がフラッシュバックして思わず立ち上がってフィジオへ手を伸ばすがフィジオはそのまま針まみれで倒れる。体中に針が突き刺さり血がにじんでいく。
「フィ…優吾……」
「オレはフィジオだ。誰と……勘違いしているかわからんが……ごふっ……いやでも、お前に間違えられても、ごふっ……不快には思わな……」
そこで事切れるとフィジオの瞳から生気が消えた。彩虹寺はフィジオの屍から毒針を全部抜き重い体を抱えてその場から逃げようとする。だが、銀色の魔族二匹はそんな彩虹寺を逃がすまいと攻撃を仕掛けてくる。彩虹寺は双子もかばいながら林の中を走って逃げる。しかし、林の奥にだんだんと人気を感じて機関の班員としてこれ以上逃げて一般人に迷惑をかけるわけにはいかないと足を止める。双子は振り返りながら心配そうに見つめる。
「おねえちゃん?」
「どうしちゃったの?」
「私たちはなんとか逃げ切る。君たちはこのまま走って逃げろ。そして、本部の人たちを呼んできてくれ。」
双子を逃がすため彩虹寺は嘘をつき双子をその場から逃がした。そして、振り向くと二匹の魔族が迫っていた。
「ガキどもは逃げたか……まぁ後で探し出して殺すがな。」
「そうはさせない。この融合体……フィジオもわたさない。」
「果たして魔族二匹の攻撃にお前ごときの体が耐えられるかな?」
ユスリは即死の毒針を取り出し、シバは槍を構える。二人同時に向かってきて彩虹寺に向けて針先、槍先を迫ってくる。
『ここまでか……』
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