魔装戦士

河鹿 虫圭

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2/19:冒険

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ジュンとチハヤの異母双子は10歳なのだが、家庭環境が劣悪だったため、精神年齢が実年齢よりも低い。義務教育期間なのにもかかわらず、学校へ通うことを許されずにいた。そのため、同年の男児、女児よりも知識は劣っている。

中編──冒険──

─────────────

異母双子は住宅街を歩く。途中、ジュンが突然止まりチハヤを呼び止める。

「ちはやちょっとまって。」

「どうしたの?」

「道、間違ってるかも……」

ジュンはそういうと逆の方向へ歩き出す。しかし、チハヤはジュンの手元を見て地図が逆さまなのにいち早く気づき、ジュンを呼び止めて地図を正方へ戻す。

「地図自体が違う向きだったよ。」

「ありがとう。行こう。早くお醤油買っておねえちゃんとおにいちゃんにほめてもらおう!」

双子は笑顔で向き合ってうなずき合う。そして地図に書かれている方向へ歩く。お使いの手順としては隣町まで駅を乗り継ぐ道を書き、そこから二枚目には大豆屋「はじめ」への地図が書いてある。二人がまず目指しているのは隣町へ行くための駅だ。10歳という歳だと数カ月で電車の乗り方は覚えることができるだろう。二人はもちろん電車の乗り方が分からないためこれもあらかじめメモを渡してある。知能検査では問題はなかったが、知識検査では小学校1年生の前半で習う簡単な漢字だけが読めたため彩虹寺はひらがな多めでメモを書き双子に渡している。

「えっと、このカードをここにあてたら……わっひらいた!」

双子は初めての連続に驚きながらも電車へ乗ることができた。休みの昼頃のはずだが、そこそこ混みあっており、二人はやっと二人分座れる席を見つけてメモを見ながら座席に座る。

「つぎは、どこでおりるの?」

「ん~…「もりとが」ってかいてある」

『つぎは、満干 東~……』

アナウンスが聞こえるが、二人は名前が違うと首を横に振る。そして、満干東の駅で止まると一人の老人が乗車してきた。杖をついており重そうな荷物をもって肩で息をしている。双子はその様子を見て、老人が近づいてくると座っていた席を空ける。老人がそれに気づきにこやかにそして周りに迷惑にならないように会釈をして座ろうとすると、突然その隙間に別の影が座り込む。双子は老人が座るはずだった席に目を向けるとそこには携帯電話を耳に当ててしゃべっている男性が周りも見ずに座っていた。

「あ?あぁ、今、東にいるわ。中央まであと少しだから……いや、だからちょっと待ってって……あぁもう!だから向かってるって言ってんじゃん!」

男性はどうやら待ち合わせに急いでおり少し苛立っているようだった。双子も周りも少し不安そうな顔で男性を見つめる。男性はそんなことは気にせず電話を続ける。そして、数分話していると男性は周りの視線に気づき急いで電話を切ってうつむく。偶然双子と目が合ってしまい、男性は思わず双子を睨みつけて「何見てんだよ」と低い声で静かにまくしたてる。双子はそんな男性の言葉にひるみもせずに反論した。

「そこ、おばあちゃんにあげたイスだよ。」

「そーだよ。おばあちゃんがすわるイスだよ。」

双子の反撃に男性は思わず言葉に詰まる。周りの人々も男性へ冷たい視線を向けている。電車は丁度、満干東の駅に着くと無言で慌てて出て行った。静かに空気が入れ替わる電車内で双子は改めて老人に席を譲った。

「ありがとうね~」

「おばあちゃん、どこにいくの?」

「おばあちゃんはね、隣町に帰るところなんだよ~」

「そーなの?!ぼくたちもこれからとなりまちにおしょうゆかいにいくんだよ」

「そーなの!わたしたちおしょうゆ買っておにいちゃんたちと冷やし中華を食べるの!」

老人と双子のコソコソ話に周りの雰囲気は和やかになり、やがて「森尖」へ着くと三人は電車を降りて行った。その後を彩虹寺と優吾はコソコソとついていく。

「意外と肝が据わっているな。あの双子。」

「俺、思わずあの野郎に紅をぶちかますことだっだぜ……」

「そんなことしたら私が君を逮捕する。」

彩虹寺と優吾は双子と老人にバレないように改めてこっそりとついていった。

─────────────

ジュンとチハヤは老人の荷物を持ちながら歩いている。息を少し荒立てながらも双子は老人の役に立とうと必死に荷物をもって歩いている。そして、大豆屋付近まで来た老人は大きな門の家の前で止まる。

「ありがとうね~ここがおばあちゃんの家だから荷物ちょうだい。」

「はい!」

「どうぞ!」

双子が持っていた荷物を手渡すと老人は荷物を手に取って大きな屋敷へと入っていった。双子は老人の後姿を見終わると地図へ目を移して大豆屋の位置を確認しようとするが、ここで問題が発生する。老人の家は書いてある地図の範囲外なのだ。もちろん大豆屋の近くなのは間違いないが、それでも老人の家から大豆屋への道のりはかなりややこしいものとなっている。地図を持っているジュンは地図を見て不安な顔をする。

「どうしよう……おばあちゃんの家、書いてない。」

「大丈夫だよ。この位置まで戻れば大豆屋さんに行けるよ。」

チハヤは地図の最初のほうを指さしジュンもそこへ目を移す。地図の最初の目印は駅の近くの大きな木だ。しかし、その道は老人の家からはとてつもなく長く遠い。ジュンはそんな道のりにさらに不安そうな顔をする。

「おにいちゃんとおねえちゃんになでなでされたいでしょ?」

「うん……」

「おいしい冷やし中華食べるんでしょ?」

「うん……」

双子は水稲の水を飲んでから汗を拭い来た道を戻り駅を目指した。彩虹寺と優吾はそんな二人をコソコソと見て優吾は少し慌てていた。

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