68 / 98
2/19:冒険
しおりを挟む
ジュンとチハヤの異母双子は10歳なのだが、家庭環境が劣悪だったため、精神年齢が実年齢よりも低い。義務教育期間なのにもかかわらず、学校へ通うことを許されずにいた。そのため、同年の男児、女児よりも知識は劣っている。
中編──冒険──
─────────────
異母双子は住宅街を歩く。途中、ジュンが突然止まりチハヤを呼び止める。
「ちはやちょっとまって。」
「どうしたの?」
「道、間違ってるかも……」
ジュンはそういうと逆の方向へ歩き出す。しかし、チハヤはジュンの手元を見て地図が逆さまなのにいち早く気づき、ジュンを呼び止めて地図を正方へ戻す。
「地図自体が違う向きだったよ。」
「ありがとう。行こう。早くお醤油買っておねえちゃんとおにいちゃんにほめてもらおう!」
双子は笑顔で向き合ってうなずき合う。そして地図に書かれている方向へ歩く。お使いの手順としては隣町まで駅を乗り継ぐ道を書き、そこから二枚目には大豆屋「はじめ」への地図が書いてある。二人がまず目指しているのは隣町へ行くための駅だ。10歳という歳だと数カ月で電車の乗り方は覚えることができるだろう。二人はもちろん電車の乗り方が分からないためこれもあらかじめメモを渡してある。知能検査では問題はなかったが、知識検査では小学校1年生の前半で習う簡単な漢字だけが読めたため彩虹寺はひらがな多めでメモを書き双子に渡している。
「えっと、このカードをここにあてたら……わっひらいた!」
双子は初めての連続に驚きながらも電車へ乗ることができた。休みの昼頃のはずだが、そこそこ混みあっており、二人はやっと二人分座れる席を見つけてメモを見ながら座席に座る。
「つぎは、どこでおりるの?」
「ん~…「もりとが」ってかいてある」
『つぎは、満干 東~……』
アナウンスが聞こえるが、二人は名前が違うと首を横に振る。そして、満干東の駅で止まると一人の老人が乗車してきた。杖をついており重そうな荷物をもって肩で息をしている。双子はその様子を見て、老人が近づいてくると座っていた席を空ける。老人がそれに気づきにこやかにそして周りに迷惑にならないように会釈をして座ろうとすると、突然その隙間に別の影が座り込む。双子は老人が座るはずだった席に目を向けるとそこには携帯電話を耳に当ててしゃべっている男性が周りも見ずに座っていた。
「あ?あぁ、今、東にいるわ。中央まであと少しだから……いや、だからちょっと待ってって……あぁもう!だから向かってるって言ってんじゃん!」
男性はどうやら待ち合わせに急いでおり少し苛立っているようだった。双子も周りも少し不安そうな顔で男性を見つめる。男性はそんなことは気にせず電話を続ける。そして、数分話していると男性は周りの視線に気づき急いで電話を切ってうつむく。偶然双子と目が合ってしまい、男性は思わず双子を睨みつけて「何見てんだよ」と低い声で静かにまくしたてる。双子はそんな男性の言葉にひるみもせずに反論した。
「そこ、おばあちゃんにあげたイスだよ。」
「そーだよ。おばあちゃんがすわるイスだよ。」
双子の反撃に男性は思わず言葉に詰まる。周りの人々も男性へ冷たい視線を向けている。電車は丁度、満干東の駅に着くと無言で慌てて出て行った。静かに空気が入れ替わる電車内で双子は改めて老人に席を譲った。
「ありがとうね~」
「おばあちゃん、どこにいくの?」
「おばあちゃんはね、隣町に帰るところなんだよ~」
「そーなの?!ぼくたちもこれからとなりまちにおしょうゆかいにいくんだよ」
「そーなの!わたしたちおしょうゆ買っておにいちゃんたちと冷やし中華を食べるの!」
老人と双子のコソコソ話に周りの雰囲気は和やかになり、やがて「森尖」へ着くと三人は電車を降りて行った。その後を彩虹寺と優吾はコソコソとついていく。
「意外と肝が据わっているな。あの双子。」
「俺、思わずあの野郎に紅をぶちかますことだっだぜ……」
「そんなことしたら私が君を逮捕する。」
彩虹寺と優吾は双子と老人にバレないように改めてこっそりとついていった。
─────────────
ジュンとチハヤは老人の荷物を持ちながら歩いている。息を少し荒立てながらも双子は老人の役に立とうと必死に荷物をもって歩いている。そして、大豆屋付近まで来た老人は大きな門の家の前で止まる。
「ありがとうね~ここがおばあちゃんの家だから荷物ちょうだい。」
「はい!」
「どうぞ!」
双子が持っていた荷物を手渡すと老人は荷物を手に取って大きな屋敷へと入っていった。双子は老人の後姿を見終わると地図へ目を移して大豆屋の位置を確認しようとするが、ここで問題が発生する。老人の家は書いてある地図の範囲外なのだ。もちろん大豆屋の近くなのは間違いないが、それでも老人の家から大豆屋への道のりはかなりややこしいものとなっている。地図を持っているジュンは地図を見て不安な顔をする。
「どうしよう……おばあちゃんの家、書いてない。」
「大丈夫だよ。この位置まで戻れば大豆屋さんに行けるよ。」
チハヤは地図の最初のほうを指さしジュンもそこへ目を移す。地図の最初の目印は駅の近くの大きな木だ。しかし、その道は老人の家からはとてつもなく長く遠い。ジュンはそんな道のりにさらに不安そうな顔をする。
「おにいちゃんとおねえちゃんになでなでされたいでしょ?」
「うん……」
「おいしい冷やし中華食べるんでしょ?」
「うん……」
双子は水稲の水を飲んでから汗を拭い来た道を戻り駅を目指した。彩虹寺と優吾はそんな二人をコソコソと見て優吾は少し慌てていた。
2/19:冒険
中編──冒険──
─────────────
異母双子は住宅街を歩く。途中、ジュンが突然止まりチハヤを呼び止める。
「ちはやちょっとまって。」
「どうしたの?」
「道、間違ってるかも……」
ジュンはそういうと逆の方向へ歩き出す。しかし、チハヤはジュンの手元を見て地図が逆さまなのにいち早く気づき、ジュンを呼び止めて地図を正方へ戻す。
「地図自体が違う向きだったよ。」
「ありがとう。行こう。早くお醤油買っておねえちゃんとおにいちゃんにほめてもらおう!」
双子は笑顔で向き合ってうなずき合う。そして地図に書かれている方向へ歩く。お使いの手順としては隣町まで駅を乗り継ぐ道を書き、そこから二枚目には大豆屋「はじめ」への地図が書いてある。二人がまず目指しているのは隣町へ行くための駅だ。10歳という歳だと数カ月で電車の乗り方は覚えることができるだろう。二人はもちろん電車の乗り方が分からないためこれもあらかじめメモを渡してある。知能検査では問題はなかったが、知識検査では小学校1年生の前半で習う簡単な漢字だけが読めたため彩虹寺はひらがな多めでメモを書き双子に渡している。
「えっと、このカードをここにあてたら……わっひらいた!」
双子は初めての連続に驚きながらも電車へ乗ることができた。休みの昼頃のはずだが、そこそこ混みあっており、二人はやっと二人分座れる席を見つけてメモを見ながら座席に座る。
「つぎは、どこでおりるの?」
「ん~…「もりとが」ってかいてある」
『つぎは、満干 東~……』
アナウンスが聞こえるが、二人は名前が違うと首を横に振る。そして、満干東の駅で止まると一人の老人が乗車してきた。杖をついており重そうな荷物をもって肩で息をしている。双子はその様子を見て、老人が近づいてくると座っていた席を空ける。老人がそれに気づきにこやかにそして周りに迷惑にならないように会釈をして座ろうとすると、突然その隙間に別の影が座り込む。双子は老人が座るはずだった席に目を向けるとそこには携帯電話を耳に当ててしゃべっている男性が周りも見ずに座っていた。
「あ?あぁ、今、東にいるわ。中央まであと少しだから……いや、だからちょっと待ってって……あぁもう!だから向かってるって言ってんじゃん!」
男性はどうやら待ち合わせに急いでおり少し苛立っているようだった。双子も周りも少し不安そうな顔で男性を見つめる。男性はそんなことは気にせず電話を続ける。そして、数分話していると男性は周りの視線に気づき急いで電話を切ってうつむく。偶然双子と目が合ってしまい、男性は思わず双子を睨みつけて「何見てんだよ」と低い声で静かにまくしたてる。双子はそんな男性の言葉にひるみもせずに反論した。
「そこ、おばあちゃんにあげたイスだよ。」
「そーだよ。おばあちゃんがすわるイスだよ。」
双子の反撃に男性は思わず言葉に詰まる。周りの人々も男性へ冷たい視線を向けている。電車は丁度、満干東の駅に着くと無言で慌てて出て行った。静かに空気が入れ替わる電車内で双子は改めて老人に席を譲った。
「ありがとうね~」
「おばあちゃん、どこにいくの?」
「おばあちゃんはね、隣町に帰るところなんだよ~」
「そーなの?!ぼくたちもこれからとなりまちにおしょうゆかいにいくんだよ」
「そーなの!わたしたちおしょうゆ買っておにいちゃんたちと冷やし中華を食べるの!」
老人と双子のコソコソ話に周りの雰囲気は和やかになり、やがて「森尖」へ着くと三人は電車を降りて行った。その後を彩虹寺と優吾はコソコソとついていく。
「意外と肝が据わっているな。あの双子。」
「俺、思わずあの野郎に紅をぶちかますことだっだぜ……」
「そんなことしたら私が君を逮捕する。」
彩虹寺と優吾は双子と老人にバレないように改めてこっそりとついていった。
─────────────
ジュンとチハヤは老人の荷物を持ちながら歩いている。息を少し荒立てながらも双子は老人の役に立とうと必死に荷物をもって歩いている。そして、大豆屋付近まで来た老人は大きな門の家の前で止まる。
「ありがとうね~ここがおばあちゃんの家だから荷物ちょうだい。」
「はい!」
「どうぞ!」
双子が持っていた荷物を手渡すと老人は荷物を手に取って大きな屋敷へと入っていった。双子は老人の後姿を見終わると地図へ目を移して大豆屋の位置を確認しようとするが、ここで問題が発生する。老人の家は書いてある地図の範囲外なのだ。もちろん大豆屋の近くなのは間違いないが、それでも老人の家から大豆屋への道のりはかなりややこしいものとなっている。地図を持っているジュンは地図を見て不安な顔をする。
「どうしよう……おばあちゃんの家、書いてない。」
「大丈夫だよ。この位置まで戻れば大豆屋さんに行けるよ。」
チハヤは地図の最初のほうを指さしジュンもそこへ目を移す。地図の最初の目印は駅の近くの大きな木だ。しかし、その道は老人の家からはとてつもなく長く遠い。ジュンはそんな道のりにさらに不安そうな顔をする。
「おにいちゃんとおねえちゃんになでなでされたいでしょ?」
「うん……」
「おいしい冷やし中華食べるんでしょ?」
「うん……」
双子は水稲の水を飲んでから汗を拭い来た道を戻り駅を目指した。彩虹寺と優吾はそんな二人をコソコソと見て優吾は少し慌てていた。
2/19:冒険
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる