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2/31:焔雷
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いつから…いつから僕は君と離れていたんだろう。いつから、僕は君の背中を追う側になっていたんだろう。僕がステップや構えを教えて、僕が相手になってスパークリングをして、それで、気が付いたら僕と同じくらいの実力をつけて、そして、追い越された。君はまだ僕と同じだと思っているようだけど、君はとっくに僕の前にいる。そんな僕なんて捨て置けばいいのに、君はこちらを振り向いて手を伸ばすんだ。
それが苛立たしい。
とてもとても腹立たしい。
僕が誘っておいての話だが、君に追い越されてとても悔しいのだ。
だから、近道をして君に追いつきたかった。だから……
「この力で君を超える!」
「やって、みろ!俺はそんな力に頼らなくても勝てることを証明する!!」
互いにステップを踏みながらジャブを打っていく。僕は光を叩きのめそうと今までセーブしていた力を最大開放してジャブを打ち込む。人間である光の脆弱な体は数センチ宙へ浮かぶ。先ほどのことを考えれば、光はバックステップをして後ろへ下がって体勢を整えるはずだ。そう考える僕は前に出てストレートを出そうとするが、光の行動は違った。バックステップを踏むかと思われた光は宙へ浮かぶや否や前に出ていた僕へ拳をたたきつけてきた。光の拳は僕の顎付近へと命中し視界がぐらつき、僕はここにきて初めてリングに膝をつく。
「……!あり得ない……僕は、力を…」
「人外の力がどうとか言ってようだが、はぁ……俺がまだ一歩先にいるみたいだな……」
いつもより汗をかいているくせに、この目の前のライバルは僕のことを挑発する。僕よりもすでに全力を出して体力がなくなってきているくせに余裕のあるような表情でこちらを見つめてくる。魔族の力を手にしたんだ…勝たないと……僕は審判と目を合わせて脳の震えのおさまりを確認するとそのまま試合は続行される。
─────────────
数日前。落雷は優吾の良くなってきた動きを見て少し休憩をしようと一緒にベンチに腰掛ける。
「ど、どうですか……今の動きは……」
「まだまだってところだね……それより、君ってさ、決め技とかないの?」
「決め技……一応何個か……持ってはいますけど……」
「いや、君の前回の戦いを見ていて思ったけど、君は毎回決めるときに同じパンチのやり方をするよね?でもそのパンチは毎回外れる……なぜだかわかるかい?」
「いえ、全く……」
「……それはね相手との距離だよ。多分決め技をするとき毎回五分五分で決まるんじゃない?」
「確かに、50%で必ず外しますね……」
「そうだろ?そしてここぞとばかりに当てる。その確率を80%まであげたくない?」
「80%まで上がるんですか?!」
「あげられる。あと数日で俺の動きも及第点くらいには覚えられるはずだから先に俺の決め技を君にあげる。多分、ある程度は再現できるだろう。それじゃ見ててね……」
─────────────
「ギギッ!ギィ!」
魔族は口角を上げながら優吾へ連続して拳を叩き込む。優吾は防御もままならないままに距離を詰められる。しかし、優吾はこの先を見据えている。防御も反撃もできない。だが、それが確実に必殺技を当てるためのタイミングを待つ。
「……まだだ……まだ、まだ……」
─────────────
「さっきの威勢はどうしたんだ?光!」
落雷は先ほどより勢いが落ちてしまい、防戦一方となっている。しかし、百道の猛攻にガードも崩されてカウンターも許されずにサンドバッグになっている。
「ほら、どうした!さっきの大口は!どうした!早くカウンターをやってみろ!!」
「………っ。」
落雷はカウンターのタイミングを待つ。
─────────────
アリーナの内と外、優吾と落雷はまさに同じような状況に陥っている。ガードも反撃も許されない状態。しかし、ピンチはチャンスである。落雷の必殺技はこんな状況でこそ輝く。
「ピンチはチャンス……!」
「手も足も出ないこんな状況だからこそ……」
「「だからこそ、この技が当てやすい!!」」
猛攻の嵐の中、落雷はリングの端、優吾の背中には壁が迫る。そして、とうとう逃げ場がなくなった二人は体勢を一瞬で低くする。今まで二人に当たっていた拳はその姿勢のせいで空を切る。
「な……!?まさか……」
「ギ?」
百道は落雷の必殺技の準備に気づきバックステップで移動しようとしたが、すでに落雷は百道の懐へ入っていた。優吾も同じく魔族の懐へ入る。魔族の懐へ入った優吾の両手に違和感が走る。
「……これは……」
優吾の両手に走る蒼い電を焔の魔力と一緒に溜める。
赤い焔に帯びる蒼い雷。
二人は一緒に拳を高く振り上げる。
「「焔雷!!!」」
百道の顎へ落雷の拳が入り、1.5倍はある百道の巨体は思い切り後方へ飛んでいく。魔族は優吾の必殺技を受けて顔面にしびれるような痛みが走りそして、砕け散った。
『エキシビションマッチ……勝者……落雷 光!』
会場のボルテージが今までよりも最高潮になり、エキシビションマッチは終了した。
2/31:焔雷
それが苛立たしい。
とてもとても腹立たしい。
僕が誘っておいての話だが、君に追い越されてとても悔しいのだ。
だから、近道をして君に追いつきたかった。だから……
「この力で君を超える!」
「やって、みろ!俺はそんな力に頼らなくても勝てることを証明する!!」
互いにステップを踏みながらジャブを打っていく。僕は光を叩きのめそうと今までセーブしていた力を最大開放してジャブを打ち込む。人間である光の脆弱な体は数センチ宙へ浮かぶ。先ほどのことを考えれば、光はバックステップをして後ろへ下がって体勢を整えるはずだ。そう考える僕は前に出てストレートを出そうとするが、光の行動は違った。バックステップを踏むかと思われた光は宙へ浮かぶや否や前に出ていた僕へ拳をたたきつけてきた。光の拳は僕の顎付近へと命中し視界がぐらつき、僕はここにきて初めてリングに膝をつく。
「……!あり得ない……僕は、力を…」
「人外の力がどうとか言ってようだが、はぁ……俺がまだ一歩先にいるみたいだな……」
いつもより汗をかいているくせに、この目の前のライバルは僕のことを挑発する。僕よりもすでに全力を出して体力がなくなってきているくせに余裕のあるような表情でこちらを見つめてくる。魔族の力を手にしたんだ…勝たないと……僕は審判と目を合わせて脳の震えのおさまりを確認するとそのまま試合は続行される。
─────────────
数日前。落雷は優吾の良くなってきた動きを見て少し休憩をしようと一緒にベンチに腰掛ける。
「ど、どうですか……今の動きは……」
「まだまだってところだね……それより、君ってさ、決め技とかないの?」
「決め技……一応何個か……持ってはいますけど……」
「いや、君の前回の戦いを見ていて思ったけど、君は毎回決めるときに同じパンチのやり方をするよね?でもそのパンチは毎回外れる……なぜだかわかるかい?」
「いえ、全く……」
「……それはね相手との距離だよ。多分決め技をするとき毎回五分五分で決まるんじゃない?」
「確かに、50%で必ず外しますね……」
「そうだろ?そしてここぞとばかりに当てる。その確率を80%まであげたくない?」
「80%まで上がるんですか?!」
「あげられる。あと数日で俺の動きも及第点くらいには覚えられるはずだから先に俺の決め技を君にあげる。多分、ある程度は再現できるだろう。それじゃ見ててね……」
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「ギギッ!ギィ!」
魔族は口角を上げながら優吾へ連続して拳を叩き込む。優吾は防御もままならないままに距離を詰められる。しかし、優吾はこの先を見据えている。防御も反撃もできない。だが、それが確実に必殺技を当てるためのタイミングを待つ。
「……まだだ……まだ、まだ……」
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「さっきの威勢はどうしたんだ?光!」
落雷は先ほどより勢いが落ちてしまい、防戦一方となっている。しかし、百道の猛攻にガードも崩されてカウンターも許されずにサンドバッグになっている。
「ほら、どうした!さっきの大口は!どうした!早くカウンターをやってみろ!!」
「………っ。」
落雷はカウンターのタイミングを待つ。
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アリーナの内と外、優吾と落雷はまさに同じような状況に陥っている。ガードも反撃も許されない状態。しかし、ピンチはチャンスである。落雷の必殺技はこんな状況でこそ輝く。
「ピンチはチャンス……!」
「手も足も出ないこんな状況だからこそ……」
「「だからこそ、この技が当てやすい!!」」
猛攻の嵐の中、落雷はリングの端、優吾の背中には壁が迫る。そして、とうとう逃げ場がなくなった二人は体勢を一瞬で低くする。今まで二人に当たっていた拳はその姿勢のせいで空を切る。
「な……!?まさか……」
「ギ?」
百道は落雷の必殺技の準備に気づきバックステップで移動しようとしたが、すでに落雷は百道の懐へ入っていた。優吾も同じく魔族の懐へ入る。魔族の懐へ入った優吾の両手に違和感が走る。
「……これは……」
優吾の両手に走る蒼い電を焔の魔力と一緒に溜める。
赤い焔に帯びる蒼い雷。
二人は一緒に拳を高く振り上げる。
「「焔雷!!!」」
百道の顎へ落雷の拳が入り、1.5倍はある百道の巨体は思い切り後方へ飛んでいく。魔族は優吾の必殺技を受けて顔面にしびれるような痛みが走りそして、砕け散った。
『エキシビションマッチ……勝者……落雷 光!』
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