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学校案内
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コンコン、というノックの合図を聞き寮の廊下に出ると、扉の前に二人の少女が待っていた。一人は落ち着いた雰囲気の上級生、もう一人は私と同じ制服を着た新入生、マーガレットだ。
「初めまして、スカーレット・ミラーと申します。申し訳ございません、妹が急にお誘いしてしまったみたいで…」
上級生――マーガレットの姉が、穏やかに微笑む。
「初めまして、クレア・ヴィルデンブルフと申します。とんでもございません、初日で不安もありましたのでこうしてお誘い頂けてとても嬉しいです。」
「同じ新入生で、しかも隣の部屋がまさかヴィルデンブルフのお嬢様なんて。私挨拶に行ってとてもびっくりしちゃった!」
「そうですね…マーガレット、せっかくこんな機会ですから敬語は無しで構いませんわ。クレアとお呼び下さいませ。」
「…!本当ですか!嬉しいです、クレア様!…あ。」
「その調子だと敬語が抜けるのはまだまだ先かしらね…。無理はしなくていいわ、好きなように呼んでちょうだい。」
「ふふ、全くマーガレットったら。さて、時間もあまりない事ですし。まずは迷子にならないように二人を中心部まで案内するわね。」
スカーレットの一言で、三人並んで寮を出る。
夕日を浴びた学園は、思わず足を止めてしまうほど美しかった。石畳の道の下を流れる魔力が、規則正しく脈打っている。
「ここが学園の中心部。覚える場所は多いけど、最低限だけね。」
スカーレットはそう言って、前方の大きな建物を指さした。
「まずは講義棟。二人とも、今日から座学はここよ。」
「わあ、大きい……!」
マーガレットが目を輝かせる。
建物を包む結界は安定していて、心地よい。思わず魔力の流れを追ってしまう。
「次は実技訓練場よ、放課後は申請を出せば誰でも自由に使うことができるわ。」
訓練場では、上級生たちが魔法を放っていた。魔力が弾ける音に、マーガレットは身を乗り出す。
「早くああいうのやりたいな…!」
「基礎からだから、焦らなくていいわ」
スカーレットの言葉は優しい。二人の会話を聞いているととても和やかな気持ちになる、普段家でもこんな感じなのだろう。
「それから図書館。困ったらここ。新入生でも入れる区画は多いから授業で困った時や、勉強したい時はここを使うといいわ。」
静かな建物の前で、マーガレットがひそひそと話しかけてくる。
「ねえねえ、クレア様。ここ通うことになりそうな気がしませんか?」
「……多分」
「ですよね!何となくそんな気がしたんです!」
なぜか納得された。
無表情すぎて真面目な堅物だと思われているのかもしれない。
私はどちらかと言うと座学より身体を動かすことの方が好きなのだが。…誠に遺憾である。
「最後に中央広場。待ち合わせ場所に使われることが多いわ」
噴水のそばで、姉は足を止めた。
「これで一通り。あとは少しずつ覚えればいいわ」
「ありがとうございます」
「助かりました!」
二人分の声に、スカーレットは小さく笑った。
「二人とも、困ったら遠慮なく聞いて。特に新入生のうちはね」
マーガレットはくるりとこちらを向く。
「じゃあ改めてよろしくお願いします!クレア様!」
「こちらこそ」
「…そういえば、少し時間もあるし。寮に帰るついでに中庭に寄りましょうか。皆さんお茶会で使う場面もあるでしょうし。」
「お茶会…!楽しそう…!」
「あら、マーガレット?お茶会は時には女の戦場なのよ?」
「私は平和に美味しいお茶とお菓子を食べたいです…。」
しょぼくれるマーガレットにやれやれと呆れ顔のスカーレット。
「そしたら、今度三人でお茶会でもいかがですか?クレア様さえ宜しければですが…」
「はい、是非。今回案内頂いたお礼にお気に入りの茶菓子をお持ち致しますわ。」
今回の学校案内を通してだが、ミラー家の二人は特に害のある人間には見えなさそうだし友好関係を築いても悪くないかもしれない。
是非、と了承の返事をするとスカーレットは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あらまぁ、そうしましたら我が家自慢のハーブティーもお持ちしますので、是非今度一緒にゆっくりお話させて下さいませ。」
「はい、お誘い楽しみにお待ちしておりますわ。」
「楽しいお茶会の予定も決まったことですし、開催場所の下見に行きましょうか。」
「初めまして、スカーレット・ミラーと申します。申し訳ございません、妹が急にお誘いしてしまったみたいで…」
上級生――マーガレットの姉が、穏やかに微笑む。
「初めまして、クレア・ヴィルデンブルフと申します。とんでもございません、初日で不安もありましたのでこうしてお誘い頂けてとても嬉しいです。」
「同じ新入生で、しかも隣の部屋がまさかヴィルデンブルフのお嬢様なんて。私挨拶に行ってとてもびっくりしちゃった!」
「そうですね…マーガレット、せっかくこんな機会ですから敬語は無しで構いませんわ。クレアとお呼び下さいませ。」
「…!本当ですか!嬉しいです、クレア様!…あ。」
「その調子だと敬語が抜けるのはまだまだ先かしらね…。無理はしなくていいわ、好きなように呼んでちょうだい。」
「ふふ、全くマーガレットったら。さて、時間もあまりない事ですし。まずは迷子にならないように二人を中心部まで案内するわね。」
スカーレットの一言で、三人並んで寮を出る。
夕日を浴びた学園は、思わず足を止めてしまうほど美しかった。石畳の道の下を流れる魔力が、規則正しく脈打っている。
「ここが学園の中心部。覚える場所は多いけど、最低限だけね。」
スカーレットはそう言って、前方の大きな建物を指さした。
「まずは講義棟。二人とも、今日から座学はここよ。」
「わあ、大きい……!」
マーガレットが目を輝かせる。
建物を包む結界は安定していて、心地よい。思わず魔力の流れを追ってしまう。
「次は実技訓練場よ、放課後は申請を出せば誰でも自由に使うことができるわ。」
訓練場では、上級生たちが魔法を放っていた。魔力が弾ける音に、マーガレットは身を乗り出す。
「早くああいうのやりたいな…!」
「基礎からだから、焦らなくていいわ」
スカーレットの言葉は優しい。二人の会話を聞いているととても和やかな気持ちになる、普段家でもこんな感じなのだろう。
「それから図書館。困ったらここ。新入生でも入れる区画は多いから授業で困った時や、勉強したい時はここを使うといいわ。」
静かな建物の前で、マーガレットがひそひそと話しかけてくる。
「ねえねえ、クレア様。ここ通うことになりそうな気がしませんか?」
「……多分」
「ですよね!何となくそんな気がしたんです!」
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「最後に中央広場。待ち合わせ場所に使われることが多いわ」
噴水のそばで、姉は足を止めた。
「これで一通り。あとは少しずつ覚えればいいわ」
「ありがとうございます」
「助かりました!」
二人分の声に、スカーレットは小さく笑った。
「二人とも、困ったら遠慮なく聞いて。特に新入生のうちはね」
マーガレットはくるりとこちらを向く。
「じゃあ改めてよろしくお願いします!クレア様!」
「こちらこそ」
「…そういえば、少し時間もあるし。寮に帰るついでに中庭に寄りましょうか。皆さんお茶会で使う場面もあるでしょうし。」
「お茶会…!楽しそう…!」
「あら、マーガレット?お茶会は時には女の戦場なのよ?」
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「そしたら、今度三人でお茶会でもいかがですか?クレア様さえ宜しければですが…」
「はい、是非。今回案内頂いたお礼にお気に入りの茶菓子をお持ち致しますわ。」
今回の学校案内を通してだが、ミラー家の二人は特に害のある人間には見えなさそうだし友好関係を築いても悪くないかもしれない。
是非、と了承の返事をするとスカーレットは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あらまぁ、そうしましたら我が家自慢のハーブティーもお持ちしますので、是非今度一緒にゆっくりお話させて下さいませ。」
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