無表情令嬢は死亡フラグを回避したい!!

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入学式

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そんなこんなで時は流れ、9歳になった私はいよいよセントラル学園初等部へ入学する。 

セントラル学園は全寮制であるためやむを得ない事情や長期休暇でもない限り家に帰ることは無くなる。
家族と離れるのは寂しかったが、あまりにも両親が感情を顕に号泣して寂しがったため私は逆に涙が引っ込んでしまった。

(カインが若干うるうるしながら見送ってくれたときは正直泣きそうになったけど。)

そんな親バカ両親と使用人達に見送られ馬車に揺られること数時間。
首都に到着した私は学園の門をくぐった。

「うわ…」

初等部~高等部までを同じ敷地内に有するセントラル学園はその敷地面積は膨大なもので、貴族や有名商家の子供が通う学校とあって装飾もかなり豪華である。
わかってはいたものの実際に目にすると圧倒され思わず声が漏れた。

敷地が膨大すぎるが故に首都でも中心よりかはだいぶ離れた奥地にあるこの学園は、初等部、中等部、高等部に向かう用の門がそれぞれ決められており、初等部用の門の先はこれから入学式を迎える子供達で溢れかえっている。

人の波の流れに身を委ねて何となく道を進んでいくと、どうやら受付らしい場所にたどり着いた。

「長旅お疲れ様でした。学生証はお持ちですか?」

柔らかい笑顔のお姉さんに尋ねられ、事前に送られてきた学生証を見せる。
お姉さんは学生証を確認すると、目の前の水晶に手をかざすよう促された。

周りを見る限り水晶の反応が人によって違うため恐らく魔力の測定道具か何かなのだろう。
入学式の本人確認に魔力測定までするとは…さすが名門校。
そんなことを思いながら手をかざすと2、3秒ほどで光が灯り、お姉さんからOKがでた。

「はい、確認が取れました。クレア・ヴィルデンブルフ様ですね。ご入学おめでとうございます!学生証の方お返し致します、廊下を進んで係の指示に従って下さいね。」

お姉さんが私の名前を口にした瞬間、周りの視線がバッと私に集まる。

(えっ!?私何かした…!?)

しかしそれも一瞬で、私が辺りを見渡した頃には何事も無かったかのように皆受付を済ませていた。
ありがとうございます、と学生証を受け取りそそくさと中に入り廊下を進むもやはり時折ちらちらと視線を感じる。

(これどういうこと…?顔になにかついてる?制服の着方間違えてる…??)

焦りと不安を抱え頭に?を浮かべながら入学式の会場へ向かうと、そこではわいわいと騒ぐ生徒達の姿があった。
どうやら入学式は自由席らしく始まるまでは皆お喋りに勤しんでいるようだ。

過ごし方は人それぞれで、家同士の繋がりがあったのか、打ち解けた雰囲気で喋る人、1人でぽつんと席に座る人、知り合いがいない中同じような人を見つけて話しかける人、そして

(…なんか前も似たようなやつ見た事あるな。)

中心にいる誰かに話しかけようと必死で団子状態になっている集団。
何やら集団は3つほどあるようだ。どうせそのうちの1つはクラウスだ。そうに違いない、うん。

うわ近寄らんとこ…そう思いながらそそくさとそこを後にしようとすると先程からちらちらと視線を送ってきていた1人の女の子が話しかけてきた。

「あ、あの…突然申し訳ございません、私レーヴン男爵家のアイシャと申します。ヴィルデンブルフ公爵家のクレア様ですよね…?」

突然名乗ったかと思えば名前を聞かれ、鈍い私はようやくここで気がついた。

(そうか!!さっきから感じたあの視線は公爵家とお近付きになりたい人達からの視線だったのか…!!)

そう気づいた私はめちゃくちゃ焦り始めた。なんたって私は今あの点在する集団のように1集落形成しかねない状態にあるのだ。

あんな人に囲まれながら名乗られまくり質問攻めにあうのは正直勘弁だ。
流石に公爵家の令嬢だから取り巻きぐらいは致し方ない…とは思っていたものの仲良くする子はしっかり見極めたいというのが本音だ。
ここで変に派閥を作るのは得策ではないし、何とか切り抜けられないものか、しかし聞かれているのはクレア・ヴィルデンブルフか否かなので答えはYesしかない。
内心焦っているものの表情は父譲りの仏頂面なので、澄ました顔で「え、ええ…そうですわオホホ…」と答えるなんとも奇妙な光景が出来上がってしまった。

公爵家の人間であるとわかった瞬間に目を輝かせ話を続けようとする彼女、そして横目にそれを察したのか自分も!と会話に入ってこようと集まってくる人達が見える。

(あ、これもうダメだわ。)

何とかしようとすることを諦め、死んだ魚の目をしてちらりと横の集団に目を向けると人と人との隙間から特徴的な黒髪が見えた。
どうやら横で捕まっていたのはクラウスだったらしい。

お互い頑張ろうな…と私はまだ集団が出来てもいないのにも関わらず同情の目線を送っていると、ふとあの赤い目がパッとこちらをむき目線が合った気がした。

(まあ気のせいか、そろそろちゃんと話を聞かないと誰が誰だかわかんない…)

「クレア!」

「はい?」


急に呼ばれたかと思えば人をかき分けてこちらに歩いてくるクラウスの姿が目に入る。
そして近づいて来たかと思えば私に話しかけてきていた人達を遮って私の手首を掴む。

「悪い、こいつ借りる。」

「えっ!?ちょっと!」

そのまま無言で私の手を引っ張ったまま会場の端まで連れていかれた。

「ちょっと、急にどうしたの?」

「いや、ただの人避け。」

比較的人気の無い場所についたかと思えば、クラウスはあっけらかんとした様子でこう言うので思わずため息をついた。

「…何かあったかと思って少し心配した私が馬鹿だったわ。」

「お前だってちょうど良かっただろ。」

「まあ、否定は出来ないけど。」

だろ?と得意げな顔で言われるのは腹立つが正直助かったので何も言えなかった。

婚約者だということもあってか、クラウスと2人でいると周りの視線は感じるものの話しかけてくる人はいない。

改めて落ち着いて会場を見渡してみるとやはり集団で集まっているところが目立っていた。

「あそこにいらっしゃるのはレオンハルト様かしら。あともう1人は…」

「ウルティアだ。ウルティア・ヴァレンタイン。名前は聞いたことあるだろ?」

「ええ。…ウルティア様はレオンハルト様と婚約されてらっしゃるけど、皆様お構い無しなのね。」

「王子としては慕ってくれる人を邪険にする訳にもいかないしな、例えそれが権力目的だとしても。ウルティアもレオンハルトが王位を次ぐってなると王妃になる立場だしな。」


「一応私達も慕ってくれる人を邪険に扱ってはいけないと思うのだけれど…」

「あれは完全に権力目的だろ?めんどくさいし吐き気がする。」

うげぇ、と舌を出して明らかに面倒くさそうな顔をするクラウス。
ゲームでは見られなかった年相応の子供っぽさが垣間見えて少し微笑ましい。

(まあ…正直顔がいいだけのクソガキだということに変わりはないんだけど…。)

「権力だけじゃないかもよ?もしかしたら愛人枠とか、あなた顔かっこいいんだし。」

「いや流石に今からそんなアプローチされても困る…」

特に考え無しで言った一言だったのだが、急にクラウスはニヤっとした表情でこちらを向いて

「というか、お前俺のことかっこいいって思ってた訳?」

と言い放った。

(くっっっっそ顔がいい!!!!)

前世のオタクの私が出てきてしまうほどには首をコテン、と傾げ口元を緩ませるクラウスは大変お顔がよろしかったのだが、これでクレアはクラウスに惚れている、という関係が成立してしまうと

クレアが嫉妬→ヒロインいじめ疑惑→処刑

のルートが成り立ってしまうので

「とても整ってる顔立ちだと思うわ、お父様譲りなのかしらね、レオンハルト様もお顔立ちが整っていらっしゃるから人気がでそうね。ええ、それはとてもとても。」

凄い勢いで誤魔化した。なんならレオンハルトも巻き込んで。
オタク特有の早口かつ一息で言いきってしまったがスルーしてくれることを願う。

「あ、そうそう。私別に愛人は作っても構わない派だからね。跡継ぎ問題とか面倒くさいから子供はあちこちで作らないで欲しいけど。」

「おい、いきなり何の話してるんだ」

この歳で話す内容では無いのはわかっているけど焦ってとにかく予防線を張りたい私の口は止まらない。

「あ、なんならあれだからね。本当に好きな子出来たら婚約解消しても大丈夫よ、親に掛け合うのは全面的に協力するわ、私はどうせ家はカインが継ぐし婚期乗り遅れても何とかなるから!」

クラウスの両手をガシッと握って私はあなたの味方です!というアピールを熱弁した。
愛人作っても婚約解消してもいいなんていう都合のいい女、なれるのは私くらいだろう、うんうん。

そんなアピールに呆気に取られたのかクラウスはしばらくポカンとしていた。
しかししばらくすると急に顔を顰めて

「なあ、それって…」

何かを言いかけたようだが、「いや、なんでもない。」と止めてしまった。

それから入学式開式の時間になり、クラウスと私はそのまま隣同士の席に座った。

空気を読んでか話しかけてくる人はいなかったものの好奇の視線に晒されものすごくむず痒い思いをしたことをここに記しておく。




























『あなた顔かっこいいんだし』

(俺もお前の顔はかわいいというか、綺麗だと思ってるよ、…絶対言えないけど。)

普段無表情で、よくわからない婚約者から出た自分の容姿を褒める一言に思わずからかってしまった。その反応が見てみたくて。

その後出てきた言葉は予想外で、少し後悔することになったけど。


『愛人は作っても…』

『好きな子出来たら婚約破棄して大丈夫』


(なあ、それって…お前が俺を好きになることは無いってこと?)

所詮家同士が決めた婚約、そこに好きという感情が無いことなんてわかりきってはいたけれど。


(…ちょっとムカつく。)


「あー、やめだやめ!!」


そうして、彼は胸の奥にチクリと芽生えた感情を自分に言い聞かせるようにかき消した。
彼がその正体に気付くのは、まだだいぶ先の話



 




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