無表情令嬢は死亡フラグを回避したい!!

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魔法の練習

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クレア・ヴィルデンブルフとして転生して約1年。これまで過ごしてきてわかってきたことがある。
それは、クレアとしての私にかかる恩恵である。
結論から言うと、私が転生するまでにクレアに身についていた習慣、記憶(名前など)については、そのまま受け継ぎ、無意識の内に行動に移す事ができる。
しかしそれはクレア本人の記憶度合いに依存するらしく、4歳までのクレアが例え経験していても本人の記憶にあまり残って居ないようであれば自分で意識して動かなければならない。

例としていくつか挙げてみると、食事マナーや習慣的な挨拶、読み書き、家族や使用人の名前等は覚えているが、勉強していなかったであろう国名や、他の家の名前等については自分で勉強しなければ全く知識が無い。
マナーや読み書きを覚えなくて済むだけ大分有難いのだが地理系や刺繍、音楽、基礎的な勉強など公爵令嬢としての出来を左右する部分を自分でなんとかしなければいけないのは少しきつい。
これらのものと同じく、4歳のクレアには未経験だった、上達しなければならない大事なことが1つある。

そう、魔法である。


「ぐぬぬぬぬぬぬ…!固まれー!!!!」

そんなこんなで今、私は魔法の練習をしています。

「あははーぜーんぜん変わんないねぇ。」

隣でケラケラ笑っているのは父が呼んでくれた魔法の師匠アルト。
この世界の魔力の基本属性は火、水、風、プラスで誰でも使える無属性。
私のような氷属性などは基本属性からの派生系にあたるのだが、なんとアルト師匠は基本属性全ての適正を持ち派生系まで網羅するスーパーマンである。
外見からは父と同じくらいの年齢に見えるものの、父曰く「俺が学生だった時から何も変わってない」そうなので、謎多き人物だ。

そんなアルトに付き添って貰いながら私は庭の噴水を凍らせようとしていたのだが…全然変わらない。

「バケツの水凍らせるので限界なのかしら…」

「んーいや、そんなこと無いと思うけどなぁ。クレアは平均より魔力量多い方だし。」

ちなみに、この世界での魔法は自身の魔力を使って生み出すもので、この個人が持つ魔力量は人によって差がある。
魔力量が多いとより規模の大きい魔法を使えたり、長く魔法を放つことができるなどのメリットがあるが、魔力が尽きるとその分完全回復までの時間も長くかかるため使い過ぎには注意が必要だ。
体内に残る魔力量が少なくなると疲労感が現れ、睡眠などの休憩を取ることで魔力量は回復できる。魔力量の回復はほぼ体力の回復と同じような形だと説明すればわかりやすいだろうか。

そしてアルト師匠曰く私は魔力量が平均よりは多いとのことなのだが、全く噴水の水は凍らない。

「うーん…お父様は噴水の水バッキバキに凍らせてたのに…。」

「キースが本気出したら噴水の水所じゃなくて庭全体バッキバキに凍るよ。」

「え、お父様そんな強いんですの??」

「強い…うーん、どうなんだろ?まあ多分?僕よりは全然弱いけどね!」

「そうなんですの…即ち私はまだまだってことですのね…。」

(こんなんで学園入学して悪い成績取ったらどうしよう…というか追放されても1人で生きていけないかも…。)

自分の出来なさにしょぼくれていると師匠が慌てて励ましてくれた。

「大丈夫!クレアもキースと魔力量はそう変わらないだろうしいつかできるようになるよ!…んで、なんで凍らないかなんだけど…うーん、もしかしたらイメージの問題かな?」

「イメージ?」

魔法にイメージなんて関係あるのか?そう疑問に思っているとアルト師匠は何やら勘づいた顔つきに変わった。

「あ、もしかして。クレア、氷の魔法が基本の3つの魔法のどれに近いかとかキースに教わった?」

「いえ、全然。」

「なんだキースそんな基本のことも教えてないのか!まあ忙しいっぽいし、しょうが無いかなぁ。…よし、じゃあクレア。基本の3つの魔法の属性は?」

「火、水、風ですわ。」

「うんうんそうだね。じゃあ氷属性はどれに近いと思う?」

(火と氷は正反対だし…風は関係無さそうだし…やっぱ水かな?)

「うーん、水ですか?」

「ぶっぶー、なんと正解は火でしたー。」

「えっ!?」

まさかの答えに愕然とする。
だって火と氷とか正反対じゃないか!

「あ、今火と氷とか正反対じゃん!とか思った?」

「まさか読心術でもお持ちで?」

「まさか、そう顔に書いてあったよ。そうそう、なんで氷属性が火属性と種類が似てるかの説明をしたいんだけど…まず基本属性の根本的な考え方から説明しようか。」

「お願いします!」

「まず最初に水魔法ね。水魔法の根本的な考え方は自分の魔力を変換して物体を生み出すこと。」

そう言うと師匠は手のひらから球体の水を生み出す。

「こうして生み出した物体…ここでは水ね。これを自由に動かしたり操作したりできる。水属性を得意とする人は、その魔力を変換する対象が水ってだけで、魔力変換系の魔法は水属性に近いって考えになる。」

「ほうほう。」

「で、次に風属性ね。風属性の根本的な考え方は、魔力を使って自然の物自体を操ること。風属性の人は、自分で風を起こすんじゃなくて、自然に発生してる風を操って魔法として行使してるって訳。…はいここで問題です。今僕が噴水の水を操っているこの魔法は水と風、どちらに近いでしょうか!」

「うーんと、…風?」

「ふむふむ。理由は?」

「水属性は魔力を変換して生み出したものを操るから…自然に元々あった水を動かすなら風の方が近いと思ったからです。」

「ピンポンピンポーン!大正解!飲み込みが早いねぇ。」

「最後に、大本命の火属性。火属性は、物質内のエネルギーを魔力によって操作して行使する魔法。」

「物質内のエネルギー…?」

「簡単だから火で例えてみようか。物体って何でも温度、熱エネルギーがあるでしょう?その熱エネルギーを増大させてあげると物は発火する。つまり火属性魔法は物質の熱エネルギーを増大させてあげて行使してる訳よ。…だから、火属性魔法は自分のすぐ近くで発火させることも、遠くのものを発火させることも出来る。」

「そうなると、氷属性は物質から熱を奪うのが根本的な考え方ってことになりますの?」

「そうそう!さすがキースとノクナレアの娘!覚えが早いなぁ。前にキースが結晶や動物を氷で作ってくれたことがあっただろう?あれは空気中の水蒸気から熱を奪って、それを造形したものなんだよ。」

「じゃあ、それを意識してやってみようか。」

「はい!」

集中して噴水の方に手をかざす。

(熱を奪う…熱を奪う…)

何となく感覚が掴めてきた気がしてきて目を閉じてさらに感覚を研ぎ澄ます。




「…レア、クレア!!ストーップ!」

「へ?」

アルト師匠の声に気が付き目を開ける。
すると目の前の噴水どころか近くの草木まで凍らせ霜が自分の足元まで迫っていた。

「えっ!?なんでこんなことに!?」

「ちょっと集中しすぎたね、今戻すからちょっとまってて~」

「すみません…」

「いやいや凄まじい成長だよ、あとは魔力の調節と操作覚えようね。」

アルト師匠の手によって凍っていた水や草木がみるみる元通りに戻っていく。
水はともかく草木が枯れてしまったらどうしようと心配していたがなんとか問題なく戻りそうだ。

「進捗はどうだ?」

そこに通りがかった父がひょこっと顔を出してきた。

「お父様!」

「いやぁ今日で凄まじい成長したよ。あとは魔力操作覚えれば良い感じかなぁ。」

「なるほど…そうか、助かったよアルト。お前は教えるのが上手いからきっとクレアも成長すると思ったんだ。」

「どういたしまして~まあ僕は基本のこと教えただけだからほぼこの子の才能だけどね。さすが君の子だよ。魔力量も君に負けず劣らずだし。」

「ふむ。なるほど。」

「基本教えただけで噴水の水残らず凍らせるのは才能だよ!」

「ふむ。…わかった。」

神妙な面持ちで何か考え込んだ後、父はガシッと私の肩を掴み真剣な顔で言った。

「…クレア。父さんはお前の選んだ道は尊重したいと思っている。思っているが…くれぐれも、くれぐれも騙されて王国の魔法師団なんかに引き抜かれるんじゃないぞ?あそこはブラックだからな。」

「あ、はい…?」

困惑する私を他所にアルト師匠は呑気に私の頭を撫でている。
ご機嫌なアルト師匠とは反対になぜか父の表情は暗くなっていった。

(思ったより娘の才能が無くて落胆してるとか…?)

エリート街道まっしぐらな父から生まれた子にしては実力不足なのかもしれない。そう思った途端、私の負けず嫌いに火がついてしまった。

追放エンドを目指す私にとっては正直日常生活が送れる程度の実力があれば十分なのだが、父の期待には応えたくなってしまうのが子というものなのだ。多分。

(私、師匠のもと一層鍛錬を積んでもっと強くなってみせます!!!)

何やらコソコソ話している2人を他所にメラメラと闘志を燃やしている私なのであった。














「私とノクナレアの子なのであれば、魔力量が多いとは薄々勘付いてはいたがここまでとは…」

「正直魔力量だけで言えば師団長レベルだもんねー、エドの後釜はこの子かな~♪」

「やめろ縁起でも無いこと言うな。あんな遠征と残業だらけの職場に娘はやらん。」

「やっと遠征から帰ったら、クラウス喋れるようになってて号泣してたもんねエド。」

「なんなら父親なのに顔覚えられてなくてショック受けてたな。」

「うわー、可哀想。」


ちなみに父と師匠がこんな会話を繰り広げていたのを当人は知る由もない。



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