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想いは突然
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最近はゲームで繋がりながらもスマホで会話することが多くなった。
スマホをディスプレイとキーボードの間に立てて、お互いの顔を見ながらゲームをする。
狩りをしている時の有花は表情をころころと変える。キャラが攻撃を受けると痛そうに顔を歪めたり、モンスターを倒したらホッと頬を緩ませたり、カヤが攻撃を受けると辛そうな顔をして、カヤのスキルが決まると嬉しそうに目を輝かせ、たまに他人のお墓を見つけると、泣きそうな顔で助けたいと訴えてくる。
そんな有花とシイクを見ながら会話したり狩りをするのはとても楽しい。
ただ、それが楽しすぎて、実際に会ってみたいという想いがどんどん膨らんでいた。
オフ会……そんな言葉が脳内を支配し始めていた。
そんなある日、突然シイクが言った。
「会いたいです」
「会いたいって、誰に?」
「もう! カヤは意地悪です!」
「意地悪ってことはないはず」
「意地悪じゃなかったら人でなしです!」
「それは酷い言われようだ」
「じゃぁなんなんですか!」
頬を膨らませて怒るシイクはとても可愛い。
いつかその頬を突いてやりたいと思う。
「ごめん、悪かった。俺に会いたいってことでいいね?」
「ほんとうにカヤは意地悪です」
「ごめんごめん、でも俺だって会いたいよ」
「ほんとですか?」
「うん」
「だったらすぐに会いに来てください」
「さすがに大阪―東京間はすぐに会いに行ける距離じゃないな」
「私から行けたら今すぐでも飛んでいくのに……」
「まるで駄々っ子だな」
シュンと肩を落とすシイクもやっぱり可愛い。
出来ることならその小さな頭を撫でてあげたい。
ほんとうに、ほんとうに撫でたくなってきた。
今まで実際に会うなんてことは考えていなかった。
それなのに、今はその気持ちを抑えられなくなっている。
「わかった、次の休みに会いに行く。それでどう?」
「ほんとに?」
「うん」
「絶対ですか?」
「約束するよ」
「何時にどこで待ち合わせしましょうか?」
「それは新幹線のチケット次第かな。取れたら到着時刻と到着ホームを教えるから、そこで待ち合わせはどう?」
「了解です。ちゃんと私の事見つけて下さいね」
「そっちこそ」
そんな話をしながらもう一台のモニターで新幹線のチケットの予約をする。
高速バスの方が値段は安いが八時間近くもバスに揺られるのはしんどそうだ。
飛行機という手段もあるが、空港までの移動がめんどくさそうなのでパス。
「カヤ、どこ見てるんですか?」
「あぁごめん、パソコンで新幹線のチケットを予約してた」
「えっ! 取れました?」
「もちろん、窓側をキープしたよ」
「チケット見たいです」
「まだ手元にないよ。明日みどりの窓口で貰ってくる」
「貰ってきたら見せて下さいね」
「了解!」
「あー早く会いたいです」
「うん、俺も楽しみだ」
「どんな服着て行こうかな、カヤはどんな服がお好みですか?」
「ん~、エッチな服?」
「馬鹿ッ!」
「冗談だよ。それより東京全然知らないから案内よろしく」
「私も普段出歩かないので全然詳しくないですよ? カヤは行ってみたい所とかないんですか?」
「そうだなぁ、……お台場とか?」
「私も行ったことないです」
「たしかコミケとかあるとこだよな?」
「そうですけど、今は開催されてませんよ」
「だよなぁ、ならつまらないかな」
「だけど大観覧車がありますよ。乗ったことないけど必見です」
「乗ったことないのに必見っておかしくない?」
「これに書いてました」
そういってシイクは東京の観光雑誌をスマホのカメラに映した。
「るるぶか、まさか東京の人間が東京の観光ガイドブック買うの?」
「おかしいですか? 私、東京に住んでますけど、あまり観光スポットとか行ったことなくて、こういう本を見ているだけでも行った気分になれて楽しいんです」
「まぁ俺も大阪に長いこと住んでるけど、大阪の観光スポットなんていつでも行ける気がして、わざわざ行こうと思わなかったな」
そして翌日、新幹線のチケットを受け取ってきた。
「新大阪7時33分発ののぞみ88号に乗るから、東京駅には10時3分に到着予定。ちなみに15番線で車両は10号車だから」
「チケットを写メに撮って送ってくれれば間違いようがないと思います」
「なるほどその手があったか」
「さてはカヤは現代の先端技術を使えてない人ですね?」
「そうさ俺はどうせ一世代前の人類だからな」
「そこまでは言ってません」
うふふっと笑う彼女はやっぱり可愛い。
東京で会う約束をしてからはゲームにログインはするものの、ほとんど狩りに行かなくなった。べつにゲームに飽きた訳ではないが、こうしてシイクと話をしていることが楽しい。
ゲーム内でキャラ同士が酒場のテーブルを囲んだり、広場のベンチに並んで座ったり、安全な狩場の片隅で人目を忍んだり、とにかく二人が近くにいて、その上でスマホで顔を見ながら会話を楽しんでいた。
土曜日の早朝、一哉はマンションを出た。最寄りの近鉄線の駅から電車に乗りなんばに向かう。そこから大阪メトロ新御堂筋線に乗り変えて新大阪駅に着いたのは7時過ぎ。
そして7時33分、一哉はのぞみ88号に乗り込んだ。
今日は実際に会うまで電話もLineもしないでおこうという約束になっている。
そのほうが出会った時の感動が大きいと思うからだそうだ。
女の子の考えはよくわからない。まぁそんなものなのかなと了承した。
約二時間半後に新幹線は東京駅に到着する。そこでもスマホは使わず、自分たちの目でお互いを探そうという流れになっている。
「どっちが先に見つけるか競争です」とシイクはとても楽しそうだった。
「負けた方は勝った方のお願いをなんでも一つ聞かなくちゃいけないんです、いいですか?」そういうシイクはどことなく小悪魔みたいだけど、やっぱり可愛い。
スマホをディスプレイとキーボードの間に立てて、お互いの顔を見ながらゲームをする。
狩りをしている時の有花は表情をころころと変える。キャラが攻撃を受けると痛そうに顔を歪めたり、モンスターを倒したらホッと頬を緩ませたり、カヤが攻撃を受けると辛そうな顔をして、カヤのスキルが決まると嬉しそうに目を輝かせ、たまに他人のお墓を見つけると、泣きそうな顔で助けたいと訴えてくる。
そんな有花とシイクを見ながら会話したり狩りをするのはとても楽しい。
ただ、それが楽しすぎて、実際に会ってみたいという想いがどんどん膨らんでいた。
オフ会……そんな言葉が脳内を支配し始めていた。
そんなある日、突然シイクが言った。
「会いたいです」
「会いたいって、誰に?」
「もう! カヤは意地悪です!」
「意地悪ってことはないはず」
「意地悪じゃなかったら人でなしです!」
「それは酷い言われようだ」
「じゃぁなんなんですか!」
頬を膨らませて怒るシイクはとても可愛い。
いつかその頬を突いてやりたいと思う。
「ごめん、悪かった。俺に会いたいってことでいいね?」
「ほんとうにカヤは意地悪です」
「ごめんごめん、でも俺だって会いたいよ」
「ほんとですか?」
「うん」
「だったらすぐに会いに来てください」
「さすがに大阪―東京間はすぐに会いに行ける距離じゃないな」
「私から行けたら今すぐでも飛んでいくのに……」
「まるで駄々っ子だな」
シュンと肩を落とすシイクもやっぱり可愛い。
出来ることならその小さな頭を撫でてあげたい。
ほんとうに、ほんとうに撫でたくなってきた。
今まで実際に会うなんてことは考えていなかった。
それなのに、今はその気持ちを抑えられなくなっている。
「わかった、次の休みに会いに行く。それでどう?」
「ほんとに?」
「うん」
「絶対ですか?」
「約束するよ」
「何時にどこで待ち合わせしましょうか?」
「それは新幹線のチケット次第かな。取れたら到着時刻と到着ホームを教えるから、そこで待ち合わせはどう?」
「了解です。ちゃんと私の事見つけて下さいね」
「そっちこそ」
そんな話をしながらもう一台のモニターで新幹線のチケットの予約をする。
高速バスの方が値段は安いが八時間近くもバスに揺られるのはしんどそうだ。
飛行機という手段もあるが、空港までの移動がめんどくさそうなのでパス。
「カヤ、どこ見てるんですか?」
「あぁごめん、パソコンで新幹線のチケットを予約してた」
「えっ! 取れました?」
「もちろん、窓側をキープしたよ」
「チケット見たいです」
「まだ手元にないよ。明日みどりの窓口で貰ってくる」
「貰ってきたら見せて下さいね」
「了解!」
「あー早く会いたいです」
「うん、俺も楽しみだ」
「どんな服着て行こうかな、カヤはどんな服がお好みですか?」
「ん~、エッチな服?」
「馬鹿ッ!」
「冗談だよ。それより東京全然知らないから案内よろしく」
「私も普段出歩かないので全然詳しくないですよ? カヤは行ってみたい所とかないんですか?」
「そうだなぁ、……お台場とか?」
「私も行ったことないです」
「たしかコミケとかあるとこだよな?」
「そうですけど、今は開催されてませんよ」
「だよなぁ、ならつまらないかな」
「だけど大観覧車がありますよ。乗ったことないけど必見です」
「乗ったことないのに必見っておかしくない?」
「これに書いてました」
そういってシイクは東京の観光雑誌をスマホのカメラに映した。
「るるぶか、まさか東京の人間が東京の観光ガイドブック買うの?」
「おかしいですか? 私、東京に住んでますけど、あまり観光スポットとか行ったことなくて、こういう本を見ているだけでも行った気分になれて楽しいんです」
「まぁ俺も大阪に長いこと住んでるけど、大阪の観光スポットなんていつでも行ける気がして、わざわざ行こうと思わなかったな」
そして翌日、新幹線のチケットを受け取ってきた。
「新大阪7時33分発ののぞみ88号に乗るから、東京駅には10時3分に到着予定。ちなみに15番線で車両は10号車だから」
「チケットを写メに撮って送ってくれれば間違いようがないと思います」
「なるほどその手があったか」
「さてはカヤは現代の先端技術を使えてない人ですね?」
「そうさ俺はどうせ一世代前の人類だからな」
「そこまでは言ってません」
うふふっと笑う彼女はやっぱり可愛い。
東京で会う約束をしてからはゲームにログインはするものの、ほとんど狩りに行かなくなった。べつにゲームに飽きた訳ではないが、こうしてシイクと話をしていることが楽しい。
ゲーム内でキャラ同士が酒場のテーブルを囲んだり、広場のベンチに並んで座ったり、安全な狩場の片隅で人目を忍んだり、とにかく二人が近くにいて、その上でスマホで顔を見ながら会話を楽しんでいた。
土曜日の早朝、一哉はマンションを出た。最寄りの近鉄線の駅から電車に乗りなんばに向かう。そこから大阪メトロ新御堂筋線に乗り変えて新大阪駅に着いたのは7時過ぎ。
そして7時33分、一哉はのぞみ88号に乗り込んだ。
今日は実際に会うまで電話もLineもしないでおこうという約束になっている。
そのほうが出会った時の感動が大きいと思うからだそうだ。
女の子の考えはよくわからない。まぁそんなものなのかなと了承した。
約二時間半後に新幹線は東京駅に到着する。そこでもスマホは使わず、自分たちの目でお互いを探そうという流れになっている。
「どっちが先に見つけるか競争です」とシイクはとても楽しそうだった。
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