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第二章
御伽噺 2.
話を切りだしてくれるのをずっと待っていたのに、食事の間中、コウは赤毛の話題には一切触れなかった。
彼が口にしたのは、イースター休暇で訪れた旅の思い出や、ショーンの従弟のこと。僕の休暇にはどこへ行こうかと、そんな当たり障りのないことだけだ。そして、ニーノの料理をことのほか喜んでくれていた。ニーノは、伝えた通りに海産物をメインにメニューを組んでくれていた。ロブスターのスープや、スズキのローズマリーソース焼きに舌鼓を打つコウを見ていると、僕まで幸せな気分になれたよ。ニーノは簡単なリサーチで的確に好みを捉えてくれる。だから彼とは友人でいられる。自分の好みを押しつけてくることがないから――。ワインは例外だけどね。まぁ、これに関しては仕方がない。多少強引でも許せるくらいに、彼の趣味は洗練されている。誰にだって、これだけは譲れない、というこだわりはあるものだ。
あえて今晩の討議について今話すことを避けている、とも見えないコウの様子を訝しくは思ったけれど、こののんびりとした至福の時間を自分からぶち壊す気にもなれなくて。コウもそうなのかもしれない。今は食事を楽しみたい、きっとそういうことなのだと判断した。
食事を終えて店を出てからは、ハイストリートをぶらついた。「買い物は?」と訊ねると、「ドラコに頼まれてる夕食のパンだけだよ。本当は、きみと散歩に出たかっただけ。このところずっと家に籠りっきりだったからさ」と、コウはすまなさそうに照れ笑いする。また――。コウを使い走りのように扱う赤毛に、ムカつく思いを押し殺す。
「それじゃあ――、パンはいつもの店で買うことにして、少し遠回りして裏通りを歩こうか? それとも、コミュニティマーケットを見に行く? せっかくの日曜日だし」
「え? いつもマリーがチーズを買っているところだよね? 今日はお休みじゃないの?」
「日曜日だけアンティークの市が立つんだ。好きだったよね?」
「好きっていうか……」
小首を傾げ、コウはなんともいえない曖昧な笑みを浮かべる。
「前は探し物をしていたから――。それで必然的に覚えていったっていうか。そういうの、好きとは違うよね。でも面白そうだし行ってみようよ」
なんとなく解せなくて立ち止まった僕の腕に、コウは軽く手を掛ける。
「何を探してたの?」
僕の問いに不安げに瞳を揺らし、僕を見あげる。
「ん?」
彼のうなじに手を回し置き、指で優しく擦りあげた。温かな肌がピクリと反応する。抱きしめたい。キスしたい。そんな自分の意識を逸らすために、そのまま肩に滑らせて歩きだした。
「――地の精霊の宝」
蚊の鳴くような、コウの声。
「以前にもそれ、言っていたね。白雪姫――、母のことだって。それに僕もそうなんだっけ?」
「地の精霊の宝はアンティークの何かだと思ってたんだ。精巧な細工物だろうって。だから、骨董屋さんを巡っていて」
そうして見つけたのは地の精霊ではなく、あの忌々しい赤毛そっくりの火の精霊の人形だったわけか……。
言い難そうにコウは目線を地面に落としている。心なしか歩調が鈍り、乱れている。
「それ、民俗学のテーマか何かなの? 教えてくれる? 有名な御伽噺なら、僕でもコウの話についていけるかもしれない」
ケルト信仰の話よりはよほど取っつきやすい。それに、赤毛がああもしつこく僕のことを白雪姫と呼ぶ理由もこの辺りにあるのではないか、という気がしていた。コウの世界と僕がどんなふうに結びつくのか知りたかった。
「白雪姫は――、きみのお母さんのことじゃなくて御伽噺のだよ、最後に王子さまと結婚するだろ? あれは人間の王子さまじゃなくて、地の精霊なんだ。白雪姫が継母から逃れて逃げ込んだのは、現実の人間世界と彼ら精霊の世界が重なり、入り口となる森。彼女を助けたのも人間じゃない、森に住む炭鉱小人たちだ。彼らがあんなに大切にしていた白雪姫を人間の王子に渡すはずがないんだ。彼らの精霊王だったから、しぶしぶ姫を託したんだよ」
母の美貌は精霊の血をひいているから――。あのとってつけたような美辞麗句は、こういった御伽噺の解釈からきていたのか――。
「なるほどね」
至極納得して頷いた。
「白雪姫が何度も殺されるって描写もさ、変だろ? 小人たちは何度も彼女を助けて忠告するのに、白雪姫はその忠告にいっさい注意を払わないなんて」
「確かに」
「白雪姫の臨死体験は通過儀礼なんだよ。精霊界へ行くための。人間としての欲望と自分の躰を捨てなければ、異界へ行くことはできないんだ――。死と再生の繰り返し。境界を超えるための儀式でもあったんだよ。だけど小人たちにはそんな高尚な意味が解らない。それに、精霊王に彼らの白雪姫を取りあげられるのが嫌だった。だから何度も邪魔をしたんだよ」
「邪魔? 命を助けることが邪魔することなの? それじゃ、王妃の存在意義は? 美しさをねたんで彼女を殺そうとしたっていうのも、違う意味があるの?」
「魔法の鏡がお妃の意識を操ったんだ。白雪姫を手に入れるために。精霊王が直接人間の命を奪うわけにはいかないから――」
「精霊王が魔法の鏡?」
「白雪姫に恋したんだ。白雪姫の類話は英国ケルトの伝承にもあるんだ。そこではお妃が問い掛けるのは鏡じゃなくて深い井戸の中で、まさしく冥界の入り口なんだよ。そして、そこに住む鱒がその問いに応えるんだ。鱒って魚は、精霊の化身とされてるんだよ」
「鱒――の姿をした精霊が王妃を操って、毒林檎を作らせ白雪姫の命を奪ったってこと?」
「命を奪ったっていうか、仮死状態で境界を越えさせたんだ」
「面白いね」
コウはまっすぐ前を向いたまま淡々と話してくれている。初めにみせたあの戸惑いは消え、彼の舌は滑らかだ。精霊の世界なんて僕には想像もつかないない。けれど、それを真剣に信じていた人々がいることは理解できる。魔法や奇跡に様々な願いや祈りを託していたのだろう。呪いすらも。そしてコウの言うように、その邪さを逆に利用しようとする者もいたのかもしれない。
心理学的にはまた違った解釈が成り立つのだけれど、コウの解釈もこれはこれで興味深い。
「コウのその説でいくと、白雪姫は仮死状態になる前から王子を知っていて、自ら毒林檎を齧ったってことになるのかな? 助けてくれて、自分の身を心配してくれている小人たちを振り切って――」
「そういうことになるね。不思議だよね。死なないと精霊の国には行けないからって、死ぬと解っていて毒の林檎を食べるなんて――。そして精霊王は、そんな彼女の躰を殺して魂として迎え入れるのではなく、生きたまま自分の国に迎え入れたんだもの」
「コウ、」
そのまま行き過ぎようとする彼の腕を慌てて掴んだ。
「着いたよ、コミュニティマーケットだ。ほら」
頭上にかかるえんじ色の看板を指差してみせる。
「あ……。え?」
「アンティーク市は屋内だよ」
開け放たれたドアからコウは意外そうに中の様子を窺っていたが、僕の袖をくいくいと引っ張ると、背伸びしてそっと囁いた。
「アンティークっていうよりも、こじんまりしたフリーマーケットのイメージだね。あんまり高級そうじゃないっていうか……」
「確かに、美術品って意味の骨董とは違う品揃えかもしれないね」
「入ろうよ」
琥珀の瞳が生き生きと輝きを増している。好きなわけじゃない、って言っていたくせに――。
彼が口にしたのは、イースター休暇で訪れた旅の思い出や、ショーンの従弟のこと。僕の休暇にはどこへ行こうかと、そんな当たり障りのないことだけだ。そして、ニーノの料理をことのほか喜んでくれていた。ニーノは、伝えた通りに海産物をメインにメニューを組んでくれていた。ロブスターのスープや、スズキのローズマリーソース焼きに舌鼓を打つコウを見ていると、僕まで幸せな気分になれたよ。ニーノは簡単なリサーチで的確に好みを捉えてくれる。だから彼とは友人でいられる。自分の好みを押しつけてくることがないから――。ワインは例外だけどね。まぁ、これに関しては仕方がない。多少強引でも許せるくらいに、彼の趣味は洗練されている。誰にだって、これだけは譲れない、というこだわりはあるものだ。
あえて今晩の討議について今話すことを避けている、とも見えないコウの様子を訝しくは思ったけれど、こののんびりとした至福の時間を自分からぶち壊す気にもなれなくて。コウもそうなのかもしれない。今は食事を楽しみたい、きっとそういうことなのだと判断した。
食事を終えて店を出てからは、ハイストリートをぶらついた。「買い物は?」と訊ねると、「ドラコに頼まれてる夕食のパンだけだよ。本当は、きみと散歩に出たかっただけ。このところずっと家に籠りっきりだったからさ」と、コウはすまなさそうに照れ笑いする。また――。コウを使い走りのように扱う赤毛に、ムカつく思いを押し殺す。
「それじゃあ――、パンはいつもの店で買うことにして、少し遠回りして裏通りを歩こうか? それとも、コミュニティマーケットを見に行く? せっかくの日曜日だし」
「え? いつもマリーがチーズを買っているところだよね? 今日はお休みじゃないの?」
「日曜日だけアンティークの市が立つんだ。好きだったよね?」
「好きっていうか……」
小首を傾げ、コウはなんともいえない曖昧な笑みを浮かべる。
「前は探し物をしていたから――。それで必然的に覚えていったっていうか。そういうの、好きとは違うよね。でも面白そうだし行ってみようよ」
なんとなく解せなくて立ち止まった僕の腕に、コウは軽く手を掛ける。
「何を探してたの?」
僕の問いに不安げに瞳を揺らし、僕を見あげる。
「ん?」
彼のうなじに手を回し置き、指で優しく擦りあげた。温かな肌がピクリと反応する。抱きしめたい。キスしたい。そんな自分の意識を逸らすために、そのまま肩に滑らせて歩きだした。
「――地の精霊の宝」
蚊の鳴くような、コウの声。
「以前にもそれ、言っていたね。白雪姫――、母のことだって。それに僕もそうなんだっけ?」
「地の精霊の宝はアンティークの何かだと思ってたんだ。精巧な細工物だろうって。だから、骨董屋さんを巡っていて」
そうして見つけたのは地の精霊ではなく、あの忌々しい赤毛そっくりの火の精霊の人形だったわけか……。
言い難そうにコウは目線を地面に落としている。心なしか歩調が鈍り、乱れている。
「それ、民俗学のテーマか何かなの? 教えてくれる? 有名な御伽噺なら、僕でもコウの話についていけるかもしれない」
ケルト信仰の話よりはよほど取っつきやすい。それに、赤毛がああもしつこく僕のことを白雪姫と呼ぶ理由もこの辺りにあるのではないか、という気がしていた。コウの世界と僕がどんなふうに結びつくのか知りたかった。
「白雪姫は――、きみのお母さんのことじゃなくて御伽噺のだよ、最後に王子さまと結婚するだろ? あれは人間の王子さまじゃなくて、地の精霊なんだ。白雪姫が継母から逃れて逃げ込んだのは、現実の人間世界と彼ら精霊の世界が重なり、入り口となる森。彼女を助けたのも人間じゃない、森に住む炭鉱小人たちだ。彼らがあんなに大切にしていた白雪姫を人間の王子に渡すはずがないんだ。彼らの精霊王だったから、しぶしぶ姫を託したんだよ」
母の美貌は精霊の血をひいているから――。あのとってつけたような美辞麗句は、こういった御伽噺の解釈からきていたのか――。
「なるほどね」
至極納得して頷いた。
「白雪姫が何度も殺されるって描写もさ、変だろ? 小人たちは何度も彼女を助けて忠告するのに、白雪姫はその忠告にいっさい注意を払わないなんて」
「確かに」
「白雪姫の臨死体験は通過儀礼なんだよ。精霊界へ行くための。人間としての欲望と自分の躰を捨てなければ、異界へ行くことはできないんだ――。死と再生の繰り返し。境界を超えるための儀式でもあったんだよ。だけど小人たちにはそんな高尚な意味が解らない。それに、精霊王に彼らの白雪姫を取りあげられるのが嫌だった。だから何度も邪魔をしたんだよ」
「邪魔? 命を助けることが邪魔することなの? それじゃ、王妃の存在意義は? 美しさをねたんで彼女を殺そうとしたっていうのも、違う意味があるの?」
「魔法の鏡がお妃の意識を操ったんだ。白雪姫を手に入れるために。精霊王が直接人間の命を奪うわけにはいかないから――」
「精霊王が魔法の鏡?」
「白雪姫に恋したんだ。白雪姫の類話は英国ケルトの伝承にもあるんだ。そこではお妃が問い掛けるのは鏡じゃなくて深い井戸の中で、まさしく冥界の入り口なんだよ。そして、そこに住む鱒がその問いに応えるんだ。鱒って魚は、精霊の化身とされてるんだよ」
「鱒――の姿をした精霊が王妃を操って、毒林檎を作らせ白雪姫の命を奪ったってこと?」
「命を奪ったっていうか、仮死状態で境界を越えさせたんだ」
「面白いね」
コウはまっすぐ前を向いたまま淡々と話してくれている。初めにみせたあの戸惑いは消え、彼の舌は滑らかだ。精霊の世界なんて僕には想像もつかないない。けれど、それを真剣に信じていた人々がいることは理解できる。魔法や奇跡に様々な願いや祈りを託していたのだろう。呪いすらも。そしてコウの言うように、その邪さを逆に利用しようとする者もいたのかもしれない。
心理学的にはまた違った解釈が成り立つのだけれど、コウの解釈もこれはこれで興味深い。
「コウのその説でいくと、白雪姫は仮死状態になる前から王子を知っていて、自ら毒林檎を齧ったってことになるのかな? 助けてくれて、自分の身を心配してくれている小人たちを振り切って――」
「そういうことになるね。不思議だよね。死なないと精霊の国には行けないからって、死ぬと解っていて毒の林檎を食べるなんて――。そして精霊王は、そんな彼女の躰を殺して魂として迎え入れるのではなく、生きたまま自分の国に迎え入れたんだもの」
「コウ、」
そのまま行き過ぎようとする彼の腕を慌てて掴んだ。
「着いたよ、コミュニティマーケットだ。ほら」
頭上にかかるえんじ色の看板を指差してみせる。
「あ……。え?」
「アンティーク市は屋内だよ」
開け放たれたドアからコウは意外そうに中の様子を窺っていたが、僕の袖をくいくいと引っ張ると、背伸びしてそっと囁いた。
「アンティークっていうよりも、こじんまりしたフリーマーケットのイメージだね。あんまり高級そうじゃないっていうか……」
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