【短編】ハイエナくんは実は

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 ハイエナ人族は手癖が悪いのが一般的な認識で、だからハイエナ人族の僕は嫌われている。
 ハイエナ人族だってそんな奴ばかりじゃない。僕の両親だって人の物を盗んだりしたことはない。
 だけど、おばあちゃんは色んな物を盗んだと武勇伝を語り、おばあちゃんと仲良しのおばさんも盗んだ物を自慢していたから、ハイエナ人族に手癖が悪い人がいるのは分かっている。
 ハイエナ人族は雄より雌の方が強くて好戦的だ。だけどそれを知っている人は少ない。

 嫌われ者の僕は、いつも通り独りぼっちで学校の廊下を歩いていた。
 あれ? これは馬人族のトロイくんのノートじゃないかな?
 廊下の端に落ちてたノートを拾ってみると、ノートの裏に『トロイ』と名前が書いてあった。
 拾ったんだから持ち主に返す。それは普通のこと。

「トロイくん、廊下にノート落ちてたよ」
 僕はトロイくんを見つけると声をかけた。

「は? 無くなったと思ってたら、やっぱりフェアトの仕業だったか! さすがハイエナは手が早いな! 本当に意地汚い!」
 僕はいきなりトロイくんに罵倒され差し出したノートは奪い取られた。
「トロイ、ノート見つかったの?」
「フェアトが盗ってたんだ! クズめ!」
「あ~仕方ないよフェアトはハイエナだしさ、種族の特性ってのは変えらんねーだろ」
「二度と俺らに近づくんじゃねぇ!」

 近くにいた犬人族のポリーくんと二人で、まるで僕がトロイくんのノートを盗んだみたいに大騒ぎされた。
 周りのみんなも「やっぱりハイエナは手癖が悪い」とか「ハイエナは意地汚い」とか陰口を叩かれて、僕はその場を足速に立ち去った。

 酷いよ。もし盗むならさ、自ら本人に返したりしないと思う。僕は拾っただけなのに。感謝してとは言わないから、盗んだと決めつけるのはやめてよ。

 もう落とし物を拾っても本人に直接返すことはやめようと思った。
 見つけても拾わなければいいんだけど、困っている人を見捨てるほど自分は落ちぶれていないと思いたい。種族の特性で鼻がいいってのも考えものだ。

 落とし物を見つけたら、持ち主が分かる場合は机にこっそり入れておいたり、誰もいない時にロッカーに入れておいたりするようになった。
 持ち主が分からないものは教卓の上に置いておいた。
 僕は誰かに、「ハイエナだけどいい奴」って思われたかったのかもしれない。誰かに見つけてもらいたかったのかもしれない。

 ある日の学校帰り、クラスでも周りに冷たい視線を送って、孤高のような存在の黒豹のライデンシャフトくんを見かけた。彼はすごく格好よくて、クラスみんなの憧れの的だ。そんなライデンシャフトくんが駅で困ってるお婆ちゃんに声をかけて助けてあげていたんだ。

 格好いい!
 だってライデンシャフトくんは何もしなくても存在だけで輝いていて、真っ黒で艶々の髪も綺麗だし、金色の目も綺麗、顔の造形もすっごく綺麗で運動神経もいいし頭もいい。
 普段は誰も寄せ付けない感じだけど、困ってる人を助けるなんて一面を見てしまったら、もう心から尊敬する。一気に好きになってしまった。

 クラスでもライデンシャフトくんのことを目で追ってしまう。僕だけが知ってるって優越感を感じながら、遠くから眺める日々が続いた。

 少しでも彼に近づきたくて、僕は困ってる人を助けるようになった。でも、見つからないようにこっそりとするんだ。
 誰かに見つかって、また謂れのない非難をされるのは嫌だ。

 今までは落とし物を見つけたら拾って届ける、ってことしかしなかったけど、困ってる人を見つけたら助けるようになった。

 亀人族のヘルツくんは背が低いから高いところのものを取るのが大変そうだ。だから授業で使う資料や道具をこっそり下の方に移動してあげた。
 うさぎ人族のアンビさんはうさぎなのに人参が嫌いだから、給食の時に人参を入れないようにしてあげた。

 他にも、ゴミ捨てを当番の人が忘れている時にやったり、黒板消しを誰もいない時に綺麗にしたり、花瓶の水を変えたり、小さいことをやってた。

 誰にも感謝されることはない。だって僕はこっそりやってるからね。誰かに褒められなくても、認められなくても、何もせず教室の隅で身を潜めるように過ごしていた日々よりずっと楽しかった。
  
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