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再会と止められない想い
48.心配症
「エリー、どこだー?」
あれ? 聞き覚えのある声だ。もしかして団長?
僕が草を掻き分けてそっと覗くと団長がいた。脅かさないでよ。敵兵かと思って怖かったんだから……
隣では教授がクスクス笑っている。もしかして団長が来たことに気づいてましたか?
「団長、どうしたんですか?」
「よかった。森に入ったと聞いて慌てて追いかけてきたんだ」
団長は一瞬で距離を詰めると、僕のことをぎゅーっと抱きしめた。
「団長は心配症ですねえ、私がついているから大丈夫ですよ。エリアスくんのことも研究室のみんなのことも、私が守ります」
今日の教授は頼もしい。
「あなたは強いのか、それなら俺が来なくても大丈夫だったか……」
団長は僕を抱きしめた腕を緩めることなく、肩を落とすという器用なことをした。
「強くありませんよ。これです。特性の唐辛子爆弾! 魔物だろうが人間だろうが、吸い込んだら呼吸困難と目と喉の激痛に襲われます!」
教授が天高く掲げたものは、拳より少し小さい片手で握れる玉のようなものだった。
唐辛子爆弾……唐辛子の他に何が入っているのかは知らないけど、想像しただけで危険そうだ。
よく一人で森に入る教授が何も対策していないとは思っていなかったけど、そんなものを作っていたなんて知らなかった。
「研究に研究を重ね、今の最新バージョンが出来上がったんです。
安心して。実験は二足歩行の魔物を相手にしたから。決して人間では実験していませんよ」
それって本当ですか?
研究を重ねたということは、何度も使ったってこと?
無茶をする人だ。
「それは面白いな、敵兵で実験してみるか?」
「いいんですか? それは楽しみです!」
危険だからやめた方がいいと思う。風を上手く操れなければ、味方に被害が出るし、敵とはいえもがき苦しむ人を見るのはちょっと怖い。
「エリーは危ないから絶対に来たらダメだ」
言われなくても、僕は戦場に行く気はない。行ったらすぐに殺されてしまうと思う。
教授って戦場まで行って検証結果を確認するんだよね?
危険じゃない?
僕が止めたとしても教授の意思が固ければ僕ではどうしようもない。
研究室のみんなも困った顔をしている。
僕たちにできることは無事帰るよう祈ることくらいだ。
「やはり大玉を作って投石器を使うか……いや、矢の先につけて着地と同時に破裂するようにするか……」
教授がぶつぶつと思考実験を繰り返しながらすごい速さで紙に計算式を書き出している。こうなってしまうと、もう誰の声も届かない。
「皆さん、教授はここに置いておいて、薬草を探しましょう」
僕は団長に抱っこされたまま、みんなを連れてムーン草の群生地まで行った。
「この森は本当に薬草が豊富ですね」
「色々な研究ができそうだ」
みんな新鮮な薬草が手に入ることが分かって嬉しそうだ。僕が団長に抱っこされていることには、誰も触れないでいてくれるのはありがたい。
「エリー楽しそうだな」
「そうですか?」
「救護班で働くエリーも素敵だったが、やりたいことをやっているエリーはより輝いて見える」
そんなこと言われると恥ずかしい……
「団長は? やりたいこと、できてますか?」
「俺がやりたいことはエリーの隣にいることだ。とても幸せだ」
そうなんだ。そんなこと言われると嬉しいけど恥ずかしい。
「僕もです」
抱っこされたまま、団長の耳元で小さい声で言うと、団長にぎゅーっと抱きしめられた。ちょっと苦しい。
降ろしてくれないから、そのまま薬草を探すのに付き合ってもらっているけど、団長は忙しいんじゃないの?
結局最後まで団長は薬草を探すのに付き合ってくれた。僕を抱っこしたまま、背中には研究室で使う大量の薬草を背負って街まで戻る。
「団長、お仕事はいいんですか?」
「ああ、心配するな。戦況は落ち着いている。帝国が他の国へも戦争を仕掛けているそうだ。そのおかげで隣国エルスターは我が国より帝国側へ兵を割いている」
そうなんだ。そっか、他の国にも……
前は戦争がどうとかより、目の前の怪我人を助けることで手一杯だった。忙しくて余裕もなかったし、考える時間なんてなかった。
何より僕自身の先の見えない未来と、世の中への絶望でそれどころじゃなかった。
色んな国へ戦争を仕掛けて兵を戦わせる帝国はとても恐ろしい。
必死に国を守っている団長がいなければ、この辺境だって危険に晒される。
尊厳は脅かされたけど、死ぬほどの恐怖は味わったことがない。それは団長がここで国を守っているからだ。
「団長、ありがとう」
「ん? いつでも森に連れてきてやるからな」
そうじゃないけど、国を守っているってことがすごく格好いいと思った。
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