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3.ハグとりんご
しおりを挟む僕は気付くと、あの牢屋みたいな窓のない部屋じゃなくて、ふわふわのベッドで寝てた。
隣にはバエルがいる。
「ミケ、起きたか?」
「うん。」
「ミケは可愛いな。ミケは何歳なんだ?まだ幼いだろ?」
「僕は19歳です。」
「そうだったのか。まだ赤ん坊ではないか。だから泣いていたのか。可哀想なことをしたな。」
赤ちゃんではないけど。もう成人もしているし。なんで赤ちゃんだと思ったのか分からない。
「赤ちゃんじゃありません。昨年成人しました。」
「は?人間はそんな赤ん坊で成人を迎えるのか?」
「僕は赤ちゃんじゃない。バエルは何歳なの?」
「私は330歳くらいだったと思う。数えるのが面倒で忘れた。」
「330歳!?そんなに生きられるの?」
「普通だろ。まだ若い方だ。アスモデウスの爺さんなんかは1200歳を超えたと言っていた気がする。」
「悪魔って長生きなんですね。」
「あぁ、なるほど。人間は短命なのか。ミケは何歳まで生きる?」
「たぶん60歳くらいだと思う。」
「そんなに短命なのか・・・。すぐではないか。とりあえず魔法でもかけておくか。今度ベルゼバブに生命の実を取りに行ってもらおう。あいつもミケのことが気に入っていたしな。」
気に入ってたって・・・それは犯すのが楽しいってことだよね・・・。
血が出るみたいな痛いこととか、噛みつかれたり殴られたりはしなかったと思うけど、複雑な気持ちだ。
バエルは僕のことを犯したんだろうか?何度も意識を失ったから知らないうちに犯していたのかもしれないけど、分からない。
「ミケ、お腹は空いていないか?噂によると人間は石を食べると聞いたんだが、どんな石か分からず用意できていない。」
「え?石?そんなの食べないよ。」
「じゃあ何を食べるんだ?」
「野菜とか、穀物とか、果物とか、あとお肉も。」
「ふーん、そうか。じゃあとりあえず果物を採ってこよう。」
「うん。」
バエルが鈴みたいなのを鳴らすと、急に何かモヤモヤした煙みたいなのが漂って喋った。
「主人様、お呼びですか?」
「庭から果物をいくつか採って持ってきてくれ。」
「畏まりました。」
煙が消えてしばらくすると、また煙が現れてベッドの横の机の上に果物らしきものが置かれた。
りんごみたいな形だけど真っ黒で紫の斑点がある。それって毒じゃないの?
「これは食べられるか?」
「毒じゃないの?毒は食べられない。死んじゃうと思う。」
「それはダメだ。そうか我らは問題なく食べることができる物でもミケにとっては毒の可能性があるのか。それは困ったな。人間界に採りに行くか。」
「おいモク、人間界へ行って人間が食べるものを持ってこい。」
「畏まりました。」
また煙みたいなのが現れて返事をして消えていった。
「僕を人間界に帰してくれたりは、しませんよね・・・・?」
「それはダメだ。お前は私のものだ。」
「そっか。」
「嫌なのか?帰りたいのか?」
うーん、どうだろう?帰りたいのかと聞かれても、生まれてから良いことなんて無かったし、これからも拾われて暴力を振るわれて、犯されて捨てられてってのを繰り返すのなら、帰っても仕方ないとも思う。
でも、ここには僕が食べられそうなものが無いし、また犯されるかもしれない。そうだとすると、どっちにいても変わらない気がした。
「どっちにいても同じ気がしてきました。
どうせ僕は誰にも愛されることなんてないから。痛めつけられて、捨てられたり拾われたりするだけ。」
「ふーん、ミケは愛されたいのか?」
「うん。愛されたい。抱きしめられたい。」
そう口にしたら、少し涙が溢れた。
「そうか。私が抱きしめてやろう。」
「え?」
バエルが何言ってるのか分からなくて驚いていると、次の瞬間にはバエルの腕の中だった。
温かくて、包まれてて、これが抱きしめられるって感覚なんだと初めて知った。
バエル、ありがとう。僕の夢が一つ叶ったよ。叶うことなんて無いと思ってたから、僕は感動していた。僕の夢を叶えてくれたバエルが、僕のことを私のものだって言うから、僕はここにいてもいいと思ったんだ。
「バエル、ありがとう。僕はずっとここにいることにする。」
「そうか。ミケ、抱きしめられると嬉しいか?」
「うん。嬉しい。温かくて幸せ。」
「そうか。よかったな。今日もミケを喜ばせるために遊んでやろう。」
「僕が喜ぶ?バエルも喜ぶ?」
「ん?私か?喜ぶぞ。」
「そっか。嬉しい。」
しばらくするとまた煙が現れて、リンゴをかごいっぱい置いていった。
リンゴなんてすごく高いものなのにこんなにたくさんいいの?
「これは食べられるか?」
「うん。これは見たことある。」
「食べていいぞ。」
「うん。ありがとう。バエルも食べる?」
「私は食べない。これは魔力が感じられないからな。」
「そうなんだ。」
魔力?果物にも魔力があるものがあるのかな?
バエルがモクって呼ばれてる煙に頼んで持ってきてくれたリンゴは甘くてとても美味しかった。
「美味しいか?」
「美味しいです。」
「そうか。よかったな。」
バエルは優しく僕の頭を撫でてくれた。
お腹いっぱいだ。リンゴだけでお腹がいっぱいになるなんて贅沢だな。
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