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17.ランディーと兄
しおりを挟む目が覚めると、私は兄上の腕の中にいた。そして兄上もソファーに座ったまま寝ている。
そういえば、兄上は私のことを守ると言っていたな。本当に守られる日が来るとは思わなかった。
「兄上、ありがとう。」
「んん?うーん、あぁ、ランディー起きたのか?」
「はい。」
「掴まれたところは大丈夫か?痛くないか?」
「大丈夫です。」
素肌に爪を立てられたわけじゃないから、痛かったが傷になったりすることはないだろう。
「兄上、キスしたい。」
「ダメだ。もう夕飯の時間じゃないか?食堂に行くぞ。」
兄上は私を立たせると、私の手を取って部屋を出た。
まさか断られるとは思わなかった。嫌じゃないと言っていたし。キスはおやすみの時にしかしないものだと思っているんだろうか?寝る前なら応えてくれるかもしれない。
少し残念に思いながら、私は兄上と食堂に向かった。
食事をとると、父上と兄上と共に父上の書斎に向かった。午後は兄上と共に寝ていたし、執務が溜まっているのかもしれない。
「父上、今日リオがランディーを襲おうとした。」
「何だと!」
「私が駆けつけて引き剥がして追い出した。」
「そうか。ランディー大丈夫か?」
「はい。心配をかけてごめんなさい。」
「いや、ランディーが謝る必要はない。」
「それでリオを立ち入り禁止としたが、まだ使用人全てに伝わっていないかもしれない。」
「分かった。それは私が皆に伝えておく。」
執務の話ではなくその話だったか。
「ランディーもリオのことはそれでいいか?」
「はい。」
「話したくないなら無理にとは言わないが、何があった?」
私は少し前からリオに結婚を迫られていて、断ってもしつこいため困っていたこと、他を当たるように言ったのが気に入らなかったのだと思うと話した。
「なるほど。ランディーにとってリオは昔の婚約者で、今は別に何とも思っていないということだな?」
「はい。婚約していたのは過去のこと。少し苦手で、今は友人とも思えなくなりました。」
「何をされた?」
「肩をギュッと掴まれて痛かった。でもそれだけです。殴られたりはしていません。」
「そうか。分かった。向こうにも抗議はしておく。ランディー、しつこく結婚を迫ってきたり、触れようとする者がいたらすぐに言いなさい。」
「はい。」
そうか、この国ではキスどころか触れるのも良しとされていないのか。
「今後はランディーの友人や知人が訪ねてきても、部屋に2人きりにはしない。戦闘可能なメイドか執事を必ず部屋に1人は置くことにしよう。」
「それがいいですね。」
そんな大ごとに・・・。
私がリオの手を振り払えなかったせいだ。
純粋な力という部分では敵わないが、小さい魔法を当てたりすればよかった。
それだけ話すと、私は兄上と部屋に戻ることになった。
「兄上、面倒をかけてすみません。」
「気にすることはない。みんなランディーのことを守りたいだけだ。」
7年も離れていたせいで、父上とはまだ上手く馴染めていない気がする。というか、心配ばかりかけている。
優しい兄上がいてくれてよかった。
私は少し不安になって隣を歩いている兄上の手を握ると、兄上はギュッと握り返してくれる。
寝る前のキスはやっぱり触れるだけの軽いものだったけど、繋いだ手からは兄上の優しさが伝わってきて私は幸せだった。
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