【短編】抱けない騎士と抱かれたい男娼

cyan

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俺とテオ

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ふわふわとまだ夢の中にいるような気分で騎士団に着くと、途端に現実に戻された。
テオを抱いてしまった。これで俺はその他大勢になってしまったんじゃないかと不安になった。帰ってテオがいなかったらどうしよう。
上手くできたという実感はない。むしろ下手だったかもしれないと焦る気持ちの方が大きかった。
そんな不安ばかりに気を取られて、全く仕事に集中できずボーッとしていたと思う。


「キース隊長、大丈夫ですか?体調が悪いのでは?」
「あ、あぁ、少しな。大丈夫だ。」
「そうですか。無理そうなら休んでもいいんですよ。」
「あぁ、そうだな。みんなに迷惑をかけるくらいならいない方がいいか・・・。」
「いえ、そういうことではなくて、皆が心配しています。」
「心配をかけてすまない。今日はもう帰ることにする。」
「送っていきましょうか?」
「いや、大丈夫だ。」

部下にまで心配をかけてしまった。情けないな。ちゃんとしなければ。



テオはまだいてくれるだろうか?
食事をとっていないかもしれないと思い、屋台でサンドイッチとスープを買って帰った。

「テオ。」
「え?キース仕事は?」
「落ち着かなくて皆に心配されて帰ってきた。」
「落ち着かなくて?なんで?」

よかった、まだいてくれた。

「テオがいなくなってしまうんじゃないかと思って・・・。」
「黙っていなくなったりしないよ。僕、仕事なくなっちゃったし。」
「そうか。」


「あのね、キース、聞いてほしいことがあって・・・。」
「分かった。聞こう。」

もしかして、出ていく話か?下手だと罵られるなら本当のことだからいいんだ。
嫌われてもう顔も見たくないとか、一緒には住めないとか、そんなことを言われるのかと冷や冷やしてテオが続きを話すのを待っていた。
なかなか話し始めないテオに、やはり言い難いことなのだと思って、この数ヶ月は夢のように楽しかったな、なんて現実逃避をしていた。


「・・・僕、キースのことが好きみたい。」
「は?」
「何度も言わせないで。僕はキースのことが好きなの。」
「本当か?」
「嘘言ってどうすんの。」
「それは人として?友達として?」
「違うよ。愛しい人として。だからまだここに置いてもらってもいい?」
「いてほしい。できればずっと俺の側にいてほしい。恋人になってほしい。いつかテオがいいなら結婚したい。」
「いいよ。全部いいよ。」

嘘じゃないと夢じゃないと実感したくて、俺はテオを抱きしめた。
温かい。俺も、テオも生きてる。これは夢ではなくて幻でもなくて、現実なんだとやっと分かった。


「テオ・・・愛してる。」
「キースは好きとか愛してるとかすぐ言うけど、僕はまだ恥ずかしくて言えない。」
「いい。言葉にしなくても気持ちがあればいい。」
「そっか。うん。気持ちはあるよ。」
「嬉しい。」


「じゃあもう一回しよ?」
「何をだ?」
「セックス。」
「昼だぞ?」
「キースは僕としたくないの?」
「・・・したい。」
「じゃあしよ?」
「分かった。」




「キース、大好きだよ。」
「う、、」
「なに?どうしたの?」
「・・・ごめん、出た。」

「ぶはっ、、ちょっともうキース笑わせないでよ。ふはははは、ひー苦しい。まだ入れてもないじゃん。」
「・・・ごめん。」
「いいよ。キースは本当に可愛いね。」
「テオの方が可愛い。」



きっとこれから先もこんな風に俺が失敗してそれをテオが笑ってくれる。そんな未来が想像できたから、もう何も怖くなくなった。
 
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