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「カリオ、もうすぐ着くからね」
「はい」
「きっと驚くよ」
「え?」
王都の防壁の大きな門を抜けると、そこは花吹雪が舞って、沿道にはたくさんの人が並んでいる。
「ジルベルト様! おかえりなさい!」
「ジルベルト様!」
「新国王誕生おめでとう!」
ジルベルトの帰りを歓迎する人たちの声が聞こえる。そして、新国王誕生を祝う言葉も聞こえた。
圧倒されるカリオを横に、ジルベルトは馬車の窓を開けて手を振っている。
そのまま馬車は王城へ向かうと、ジルベルトとカリオは別の部屋に案内され、使用人に囲まれて着替えさせられた。
「あ、ありがとうございます」
なぜ着替えさせられているのか分からなかったが、カリオは周りの使用人にお礼を言った。
「お支度ができましたら、こちらへ」
執事がカリオを迎えに来ると、カリオは言われるがままその執事について行った。
通された部屋にはジルベルトがおり、ジルベルトも着替えて、頭には王冠が乗せられている。
カリオは王族となど関わったことがないのだから、その王冠の持つ意味を知らない。王族であれば王冠はみんな被るものなんだろうと結論付けた。
「ジルベルト様、いつも美しいですが、着飾った姿は本当に本当に美しいですね」
「そうか。嬉しいよ。カリオもとても可愛いよ」
ジルベルトとカリオの周りを妖精たちがクルクルと踊りながら飛んでおり、そんな妖精たちの姿にカリオは癒されていた。
「みんなも一緒にきたんだね。僕1人で心細かったから嬉しい」
カリオはジルベルトに手を引かれて部屋を出た。
『新国王陛下と、婚約者様のご入場です』
そんな声が響くと、ジルベルトはカリオを連れて壇上を進んでいった。
眩しい光に照らされ、2人に向けられた拍手と好奇の目に、カリオはただひたすら戸惑うことしかできなかった。
「カリオ、驚いた?」
「僕、今でもよく分かっていませんが、皆さんはなぜ下にいるのですか? 新しい王様というのはどこに?」
「ふふふ、カリオは本当に可愛い。新国王は私だ。そしてその婚約者はカリオだよ」
「え?」
驚きすぎて大声を出しそうになったカリオは、慌てて口を両手で押さえた。
そしてジルベルトに促されるまま、真ん中に置かれた金色の椅子に座らされた。
何が起きているのか理解できないまま国王陛下のお披露目は進んでいき、カリオは気がつくと知らない部屋でベッドに押し倒されていた。
重なる唇でやっと現実に戻ってきたカリオは、ジルベルトの深い口付けを受け入れた。
「あ……んん……」
「カリオ、たくさん愛し合おう」
「はい」
ジルベルトの熱い視線がカリオの思考を溶かす。優しく体を撫でるジルベルトの手に、快感が迫り上がって甘い吐息が漏れる。
「ああ……」
「カリオ、可愛いよ。カリオの好きなところたくさん触ってあげるからね」
「あ……待って……ジルベルト、さま……ああ……」
ジルベルトが目覚めてから、毎日抱かれているから、カリオのそこは指の1本や2本は簡単に受け入れてしまう。
「カリオ、気持ちいい?」
「あっ……ああ……きもちいい、です……」
「挿れてほしい?」
「はい……挿れて……ください……」
カリオが潤んだ瞳でお願いすると、ジルベルトはゆっくりとカリオの中に入っていく。
「はう……あっ……」
「愛してるよ、カリオ。結婚しようね」
「え?」
「えって酷いな~、もう発表しちゃったから逃げられないよ」
「あっ……あ……ジルベルト、さま……だめえ……はげし……あぁ……」
カリオの返事が気に入らなかったのか、ジルベルトの律動は激しくなり、カリオは嬌声をあげながら髪を振り乱した。
「カリオ、結婚してくれるよね?」
「あ……でも……や……あ……」
「もっと気持ちよくならなきゃ素直になれない? それならもっと激しくしてあげるよ?」
「だめえ……そんなにしたら……おかしくなっちゃう……」
「じゃあ言って。私のこと愛してるって言って」
「あっ……あ、愛してます……ジルベルト、さま……愛してます……」
カリオから一番聞きたかった言葉を聞き出したジルベルトは、ようやく律動を収めるとカリオを宝物のようにそっと抱きしめた。
「ジルベルト様、僕は平民ですよ?」
「違うよ。伯爵まで爵位は上げたし、魔法使いとして最も権威ある魔導都市から、上級魔導師の称号も貰ってる」
「上級魔導師!? そんな、僕なんかがそんなもの貰えるわけない」
「論文は書いてほしいって言ってたけどね」
「論文? え? 何の?」
「解呪だよ。魔導都市の教授たちも私の解呪に何度か来てもらったんだ。最後に来たのは30年くらい前だった気がする。
彼らですら諦めた解呪を魔法で解いたのはカリオだ」
「そうだけど……」
「カリオは凄いんだよ」
難しい顔をして悩んでいたが、カリオはハッとした。その事もそうだけど、ジルベルトが王様とはどういう事だろうか?
「ジルベルト様、王様になったの、ですか?」
「なったよ」
「前の王様は?」
「私の二つ前の王、私の弟なんだけど、眠りの呪いはあいつとその派閥の奴らがかけた呪いだったんだ。その代償だね」
「代償?」
ジルベルトが妖精たちに頼んで調べさせたところ、ジルベルトにかけられた呪いの代償は彼らの直系の子々孫々まで続く生命力だった。
カリオが呪いを解いたことで呪いの契約通り、代償は払われた。
関わった者とその子孫は瀕死の状態となり、そこに反発していた派閥の連中が押し寄せて鉄槌を下していったのは自然な流れだったんだろう。
散々民を苦しめ、自分たちだけ甘い汁を吸い続けた者たちが消えたことは、民にとっても吉報となった。
「僕のせい?」
「違うよ。あいつらは酷い奴らだったんだ。因果応報ってやつだね。そしてカリオは英雄となった」
「え!? どういうこと?」
「カリオが解呪したことを私が広めた」
「うん」
「それだけだよ。呪いをかけられて可哀想な私と、その呪いを解いた英雄の結婚でお祭り騒ぎになっている」
カリオは驚いて声も出せず、ポカンと口を開けていた。
呪いの代償とジルベルトは言ったが、彼がそれに乗じて何かをしたことは明らかだった。だが、カリオにそれを話すことはない。
カリオの前では優しく頼もしい王でいたいと願うジルベルト。そのカリオを見つめる目は優しい。
「私だけでは王になれなかった。カリオのおかげだよ。でも、私が下手なことをすれば簡単に引き摺り下ろされてしまう。カリオ、私を側で支えてほしい」
「分かりました。僕にできるか分からないけど、頑張ります」
「ありがとう。カリオ、もう一度抱いていいか?」
「はい。どうぞ」
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「うう……」
「カリオ、大丈夫か? 私はここにいるからな。
すぐに医師を呼べ!」
ジルベルトは倒れ込んだカリオを横抱きにしてベッドに運んだ。
最近のカリオは体調が優れず、食べ物をすぐに戻してしまう。
医師の診断でも、特に悪い部分は見つからないし、呪いでもないようだが、理由が分からない。
「お前たち、何か知っているのか?」
カリオの体調が優れないのに、クルクルと楽しそうに踊り回る妖精たちにジルベルトは聞いた。
<カリオの願い>
「どういうことだ?」
<僕たちが叶えた>
「カリオに何をした?」
<赤ちゃんほしいって>
「は? まさかカリオは妊娠しているのか?」
<そうだよー>
<カリオが喜ぶことはジルも喜ぶって言ってた>
「だがカリオは男だ。男、だよな?」
<カリオは男>
<ちょっとだけ体の中弄った>
「お前たち、そういうことは私やカリオに許可を得てからやってくれ。
カリオは病気ではないんだな?」
<カリオは健康>
<ジルも健康>
<2人は幸せ>
「カリオ、驚くなと言っても無理だろうが、冷静な気持ちで聞いてほしい」
「はい。やっぱり僕はもうすぐ死ぬんですね」
「いや、そうではない。カリオは健康だ。病気ではない。その、妊娠しているらしい」
「は? 僕は男ですよ」
「だよな。妖精たちがカリオの体を弄ってしまったようだ」
「本当? ジルベルト様、それ本当?」
「ああ、妖精が教えてくれた」
「そっか。嬉しい」
カリオはそう微笑むと、一筋の涙が頬を伝った。
「ジルベルト様、僕たちが結婚した時は、2人きりで広い王宮に住むのが少し寂しかったんです」
「そうか」
「こんなに賑やかになるとは思っていなかったです」
「そうだな。カリオ、体の具合はどうだ? もう中に入ろう」
「ジルベルト様は心配し過ぎですよ。もう5人目なので僕は慣れました」
「私はまだ慣れない」
<カリオは幸せ>
<ジルも幸せ>
<2人は幸せ>
<みんなは幸せ>
(終)
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