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7.ユキ救出作戦(misaki視点)
しおりを挟むカフェテリアで、ボーッとコーヒーを飲んだ。
だんだん温くなって、味もない。
帰るのも億劫だ。歌えない俺が都心に戻ったところで何になる?
未来へ……
見えない未来って怖い、不安だ、希望なんて簡単に持てない、それでも生きていてほしい。
ユキが一番好きだと言った歌。今の俺の気持ちを表したみたい。ユキへの歌みたいだ。
「ねえ聞いた?不味くない?」
「ユキくんと高村先生でしょ?今日もあんな状態の彼を外に連れ出して。」
ユキという単語が聞こえて急に聴覚が研ぎ澄まされた。
「わざと衰弱させてるんでしょ?」
は?どういうことだ?
「ユキくん綺麗だから狙われちゃったんだね。前の病院ではノーマルに血飲ませたらしいわよ。」
「何人もの患者にしたとか。」
ノーマルに血?番になれないのになぜそんなことをするんだ?
スマホを取り出して検索してみる。
『ドラッグがノーマルに血を飲ませると、ノーマルは依存症になりドラッグが定期的に血を与えないと衰弱する』
なぜそんなことを?意味が分からない。
「そろそろユキくんヤバいから、今夜あたり無理やり飲ませるかもしれないわね。」
「やるとしたら警備が薄くなる明け方かしら?見回りしっかりしないとね。」
「高村先生って自分の血持ち歩いてるって本当?」
「本当本当。私見たもん。てか自慢された。気に入ったクランケがいたらすぐに飲ませられるようにしてるって。」
「ああーあの人、番コレクションしてるもんね。」
「そうそう。ユキくん簡単に落ちなかったから躍起になってるみたい。」
「それで治療せずに病気が進行して助けを求められるのを待ってるってこと?なんであんな人が医者やってんの?」
「それは貴重なドラッグ様だからでしょー」
治療せずわざと進行していくのを近くで見ているのか?
さっきの違和感はそれか。ドラッグが近くにいるのにユキはかなり病状が悪化しているように見えた。それなのにあいつはユキに触れなかった。顔を近づけたのも、わざとなのか?
苦しめて無理やり番に?
そして、そろそろヤバいって何だよ。嫌だよそんなの。幸せに生きているのなら黙って去ろうと思った。でもそうじゃないなら、黙って見ていることなんてできない。
ユキのことは俺が助ける。俺が幸せにする。
夜になるまでトイレに隠れ、消灯時間を待った。
そしてユキの部屋に忍び込むと、ユキに触れる。これで少しは回復すると信じて。
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