【完結】うちの子は可愛い弱虫

cyan

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35.部下キーノ

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「君たちは伸び悩んでいたんだったか?
 皆と同じところを伸ばす必要はない。得意なところをより伸ばすのでもいい。自分の強みや好きなことを考えてみたらどうだ?」

 私は魔法陣が好きで、ずっと魔法陣を勉強していた。そこから色々学んだこともある。
 そして、それがノアとの関係を進めてくれた。一生懸命に学んだことは、きっと、何かしらの役に立つようにできているんだと思う。

 私は、上から目線で偉そうなことを言ってしまっただろうか・・・。急に不安になって俯いた。彼らが不満な顔をしているのかもしれないと思うと、とても顔など見れなかった。

「副団長、後で少しだけ話を聞いていただけないでしょうか?」
「分かった。ここでか?聞かれたくないのなら私の部屋でもいいが。」
「副団長の部屋でも、いいでしょうか?」
「あぁ。構わない。」

 しかし、私は今まで他人とそれほど深く関わってこなかったのに、話なんかできるんだろうか?いや、魔法の相談なら少しくらいは分かるかもしれない。それに、副団長として部下の相談に乗るというのは必要なことな気もする。
 何の相談かは分からないが。まさか罵倒されたりはしないよな?

 もし魔法の相談でなく、隊長や同僚との関係についての悩みだったらどうしよう。そんな相談をされたら、私に答えられることは何もない。困ったな、私に答えられる相談ならいいんだが、私に答えられることなどほんの僅かだ。
 話をただ黙って聞くだけでいいなんてことはないだろうし。

 憂鬱な気持ちになりながら、剣士たちの身体強化の練習を見守り、そして終わると魔法騎士2人と共に副団長室へ向かった。
 足取りが重くなる。まだそれなら罵倒の方がいい。よくはないが、その方がまだマシではある。

「2人同時でいいのか?」
「できれば1人ずつお願い出来ますか?時間はあるでしょうか?」
「あぁ、時間は問題ない。」

「じゃあ俺が先に。終わったら呼びに行く。」
「じゃあ俺は第5訓練場で魔法の練習をしている。」

 2人でそんな会話をしながら、1人は訓練場へ向かった。

 ソファーに座ってもらい、紅茶を淹れて彼の前に置いた。この男の名前は確かキーノだったか。

「あの、時間を取っていただきありがとうございます。」
「いや、いい。話したいこととは何だ?」

 緊張してとても低く掠れた声が出てしまった。恥ずかしい・・・。

「す、すみません。貴重な時間を・・・怒っていますか?」
「いや、怒ってはいない。話してくれ。」
「はい。」

 彼が怯えた様子を見せたので、きっと私のことが怖いのだと思う。私も怖いから、できれば早く本題に移ってほしい。

「攻撃のレパートリーが少ないことに悩んでいて。」

 私は魔法の相談であることで、ようやく少し緊張が解けて、ホッと息を吐いた。

「なるほど。今できる攻撃は?」
「火、水、風、初級はできます。中級は火力が足りないので、数を撃つことができません。」
「一番得意なものは?」
「風です。」
「分かった。火力や魔力量ではなく、種類を増やすことを希望しているんだな。」

 魔力量を探ってみる。他の魔法騎士と比べて特別に多いことはないが、少ないということもない。それならやはり魔法の出力に問題があるのか、もしくは単純に知識不足か。

「はい。できることなら、そうしたいです。」
「魔法を見せてもらえるか?魔力量は魔法騎士としては平均で劣ることはない。魔法を見てみないことには魔法の使い方に問題があるのか、知識不足なのかが分からない。」
「分かりました。魔力量、分かるんですね。」
「あぁ。」

 魔力量が極端に少ない者は魔法騎士を続けていくのは難しいだろうが、そうでなければ訓練次第でなんとかなるだろう。
 部屋を出てもう1人の魔法騎士が待つ第5訓練場へ2人で向かう。

「副団長は、やはり魔力量がとても多いんでしょうか?」
「そうでもない。魔力量だけを見ればキーノよりは多いが、それほど大きな差はない。」
「ぇえ!?そうなんですか?」
「そうだ。」
「使い方と知識、どちらも不足している気がしてきました。」
「そうか。とりあえず見てみよう。」

「あれ?キーノもう話は終わったのか?」
「副団長に魔法を見てもらうことになったんだ。」
「俺も見ていいか?」
「構わない。」

 もう1人の魔法騎士のカルムだったか?が私とキーノが訓練場に現れたことで、魔法の練習をやめて近づいてきた。

「キーノ、火、水、風と初級魔法を的に向けて撃ってみてくれ。」
「はい。」

 バシュッ、バシャッ、シャッ

「「「・・・・。」」」

 キーノとカルムがこちらをじっと見ている。

「ん?今のはウォーミングアップか?」
「いえ、初級魔法・・・です。」

 魔力の変換が曖昧で、確かに1番マシだったのは風ではあったが、それが得意だと言っていた理由か。

「嫌かもしれないが、少し触れていいか?」
「あ、はい。」

 私はキーノの腕を掴んで的に向かうように上げた。

「私がまず火球をやってみるから、人差し指を的に向けて体内の魔力にしっかり集中しておけ。」
「はい。」

 キーノの体内の魔力に干渉し、魔力を少し集めて凝縮し、爪の先ほどの火球を撃ち出した。

「あ、」

 他人の魔力のため、いつもの感覚とは違い思ったより威力が出てしまったため、慌てて的の向こうの壁に障壁を展開した。
 ふぅ、危なかった。的を貫いたのはいいが、万が一壁を抜けてしまったら危険だからな。

「・・・あの副団長、今のは?」
「火球だ。的を貫いてしまったから壁の外にいかないように障壁を展開した。」
「火球・・・」
「キーノの魔力を撃ち出したんだから、キーノの魔法だ。」
「俺の魔法・・・。確かに自分の魔力が動いているのは分かりました。しかし魔力の減りがほとんどない。小さいのにあの威力。今まで魔法だと思っていたものは魔法ではなかったのだと言われたようです。」
「違いは分かったか?」
「魔力をほんの少し集めて、固めて、変換する時が違う気がしました。」

「固めてというのは少し違う。凝縮した。水と風もやるか?」
「お願いします。」

 私はキーノの腕を掴んで、水と風も飛ばしてみた。今度は的を貫かない程度に上手く撃つことができてホッとする。

「キーノは風が得意と言ったが、別にそうは思わなかった。変換するときのイメージが他の魔法よりマシだっただけだろう。火の方がやりやすい気がした。」
「凄い。俺、こんな魔法を撃つことができるんですね。」
「あぁ、そうだ。」
「副団長、ありがとうございます!」

 感動したように私の両手をギュッと握り、少しその手が震えていた。こいつも、もしかして私と同じで人との付き合いが少し苦手で緊張していたのか?

 さっそく練習を始めたキーノは、まだ全く同じように撃つことはできないようだったが、魔力を凝縮することはなんとなくできるようになり、変換もマシになっていった。

  
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