【完結】破壊神のお婿さんはイケメンらしい

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一章:アダム視点

2.僕のこと

 

 国の北の守りは大事だ。我ロイター領が接地するラディウス帝国はとても好戦的な者が多く、しょっちゅう戦を仕掛けてくる。
 昨年派手に押し返しているから、今年は戦を仕掛けてくることはないだろう。
 毎年のように雪解けの季節を過ぎると戦を仕掛けてくる、ラディウス帝国からこの地を守るのは、なかなかに大変なんだ。だから婿という名の暗殺者を送られたとは考え難い。
 後継もいない今、僕がいなくなれば北の守りは崩壊する可能性が高いからだ。

 しかしな……『破壊神』と呼ばれている僕の元に来るなんて、何者だ? 罪人か? 何か問題を起こした奴が厄介払いも兼ねて選ばれたのかもしれない。『婿』ということは男だしな。

 辺境を守るためと理由をつけて社交の場に出なくなって数年。のんびりとしがらみのない生活を送ってきたが、面倒ごとが舞い込んだ。

「セドリック、この手紙を読んでみるといい。驚くから。すぐに部屋だけでも整えておいてくれ」
 僕はセドリックの目の前に手紙を飛ばし、顔の前で読みやすいように手紙を広げて見せた。

 もう僕はあの事件の時ような失敗はしない。魔力操作だって上手くなったし、でかい魔術を撃とうと思えばできるけど、必要ないことはしない。今は生活を便利にするためと、国や領地を守るためだけに魔術を使っている。
 二度とあんな失敗をしないよう、日々訓練と研究は続けている。それは自分の能力に不安があるという理由もあるが、もう趣味みたいなものだ。

 父と母は、あの事件が起きて僕が自ら学園を退学すると、僕に当主の座を譲って隠居した。今はこの領都ではない、もう少し国境から離れた街に家を建てて暮らしている。
 両親はたまに王都へも行っているらしいけど詳しくは知らない。

 学園に通う前は、家族みんなで一緒に食卓を囲んだりもしていた。戦争で父が不在になることは多かったけど、それでも大きな体でいつも僕を抱き上げてくれた。母は母で魔術が得意だったからよく魔術を教えてくれた。今僕が色々と生活に魔術を取り入れているのは母の影響も大きいと思う。
 いつも両親は褒めてくれた。護衛と一緒に森で魔物を狩ってくると褒めてくれたし、どんな簡単な魔術でも初めてできた時には褒めてくれた。懐かしいが全て過去のことだ。
 今は顔も出さない。最後に顔を見たのはいつだっただろう? もう何年も会っていないから忘れた。

 成人して間もない僕が、慣れない領地経営に忙殺されていた頃に、両親との手紙のやり取りも自然となくなっていった。きっと両親であっても怖いんだ。『破壊神』と呼ばれる僕のことが。
 親にまで恐れられるなんて……あの頃のことを思い出すだけで指先から冷えていく。

 領地経営については引き継ぎ用に一冊のノートが残されているだけだった。
 学園を退学して領主邸に戻った僕を迎えたのは、数が減った使用人と当主を僕に譲り渡すという内容が書かれた書状、そして引き継ぎのノート一冊。両親は既に旅立った後だった。
 戦争だって最初はやり方が分からなかった。十二歳で学園に入るから、それより幼い年齢で戦争に参加させるのは可哀想だと思ったのかもしれない。十五で当主を引き継ぎ、十六になった春に初めてラディウス帝国が攻めてきた時、僕は右も左も分からなかったのに、『破壊神』なら問題ないと思われたんだろうか。
 でも『破壊神』でよかったこともある。ロイター辺境伯家が抱える兵は多い。若干十五歳で兵のトップになった僕だけど『破壊神』だから舐められるってことがなかった。屈強な肉体を持つ歴戦の兵であっても、僕を恐れて距離を取るんだ。

 今ではちゃんと領地の経営はできているし、領民を守ることもできている。案外一人でもなんとかなるものだ。
 テーブルのグラスに視線を落とし、手酌で指一本分ほど注ぐと、透明な中身をグイッと一気に飲み干した。喉が焼けるように熱い。領主になって覚えたウォッカは、いつもストレートで飲む。僕には忘れたいことが多すぎる。


 
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