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一章:アダム視点
3.お婿さんの到着
婿を送ると手紙が届いてから一月ほどすると、見慣れない馬車がうちに来た。
とうとう僕のお婿さんが来たらしい。
当主自ら出迎えてみるか。哀れな『破壊神』の生け贄くんの顔でも眺めに行こう。ちょっとだけいい服を着てベランダに出る。
僕の部屋は眺めのいい三階の中央にある。広いベランダに出ると街が見渡せるとてもいい部屋だ。
そこから飛翔魔術で飛び立ち、停まっている馬車から降りてきた男の前に下り立った。怖がらせないように、ちゃんと距離は取っている。
僕が空から飛んできたからか、唖然として固まっている男の前に立ち、自己紹介をする。
「ようこそ北の辺境へ。僕がロイター辺境伯家当主のアダムヘルム・ロイターだ」
「お初にお目にかかります。ローデリックです」
僕のお婿さんはイケメンだった。
透き通るような色白の肌で、短めの銀色の髪を根本だけ少し立たせている。深い青の瞳はくっきりと切れ長の二重で長い睫毛が縁取っていた。体型は騎士のようだ。でも騎士ほどゴリゴリに筋肉で武装しているわけではない。
この人、僕の婿に送られるなんて一体何をしてしまったんだろう?
僕は『破壊神』の生け贄として捧げられた哀れなイケメンを見た。本当に綺麗な顔だ。思わず見惚れてしまいそうになる。
このイケメン、かなり肝が据わっているらしい。少し離れてはいるが、『破壊神』の僕が前に立っても怖がるような素振りは見せなかった。
「ん?」
「どうかされましたか?」
僕はローデリックと名乗る男が、ここに送られた理由が分かってしまった。まぁいい。犯罪者や問題を起こした者ではないことが分かったんだから。
「そっか。あなたは魔力が少ないんだね。だから僕のところに送られた」
「アダムヘルム様は分かるの、ですか? 俺、いや、わ、私の魔力が少ないことが」
動揺したんだろう。思わず『俺』と言ってしまった彼は、きっと普段は丁寧な言葉なんて使っていない。
「丁寧な言葉なんて使わなくていいよ。面倒だし。僕も使わないから。僕のこともアダムでいい」
「分かった。俺のことも短くして呼んでくれていい」
「うん。ロディって呼ぶことにする。それでさっきの質問だけど、分かるよ。他人の魔力量」
僕はかなり多い。他国は知らないけど、このシュトラール王国では貴族は魔力量が多い。魔力が多ければ多いほど優遇されるし、いい縁談に恵まれ、仕事でもいいポストに就ける。魔力が多くても僕みたいな例外はいるけど。
逆に魔力が少ないと、冷遇されたり、最悪家から追い出されたりするとか。
平民の平均が150前後、貴族は300くらいだろうか。高位貴族は500とかもいる。現王も多い。たしか750くらいはあったんだったと思う。ちなみに僕は1500を超えた。
超えたというのは、僕は魔力量が元々多い上に後天的に増える体質だからだ。
例の事件当時は800くらいだったから、その時点で陛下を超えていたんだけど、そこからまだ増えた。どこまで増えるのかは僕にも分からない。
なるほどね。僕は大事な北の守りの要だけど、あまりロイター家に力を付けてほしくないってことか。だから魔力が少ないこの男を僕に送りつけてきた。陛下が考えそうなことだ。
この男の魔力量は、平民の平均を大きく下回る18。貴族社会ではさぞ生き難かっただろう。平民にはこのくらいの数値の者はたまにいるが、多くはない。
貴族でここまで少ない者は初めて見た。見かけないのは、なかなか生まれないのか、生まれても捨てられたり殺されたり、存在を隠されたりするのかもしれない。
「すみません……」
彼は小さな声で呟くと、ガックリと肩を落としてしまった。
「別にいいよ。僕は魔力の多さなんてどうでもいい」
魔力が多い者同士を掛け合わせても、必ずしも魔力が多い子が生まれるとは限らない。魔力の多い者同士を番わせて、魔力が多い子の品評会なんて気持ち悪くないか? まるで野菜の品種改良みたいだ。だから僕はこの考えには反対。
僕は相手を選べる立場でもないんだけどさ。
彼には僕の言葉が意外だったらしい。驚いた表情を浮かべている。魔力が少ないことを知られたら、追い出されるとでも思っていたんだろうか? 家では酷い扱いを受けてきたのかもしれない。
でもこの肉体を見た限り、彼は魔力が少ないというハンデを背負っていても、努力を重ねてきたことが分かる。イケメンってこと以外にも結構好印象だ。恥ずかしいからそんなこと言えないけど。
彼は急に僕の前に来ると跪いた。
「俺と結婚してください。俺を婿にもらって下さい。『毛玉』を食べさせてあげます。アダムの役に立てるよう頑張るから、どうかお願いします」
僕の手を取って、そんなことを言った。
深い青の澄んだ目が、すごく綺麗だと思った。こんなイケメンにそんな目で見つめられたらドキドキしないわけない。
僕は何も言えなかったんだけど、『毛玉』って何だ? と思ったけど、ちゃんと頷いた。
そしたら彼は僕に向けてニコッと笑いかけてくれたんだ。
ヤバイヤバイ! イケメンスマイルの破壊力すごい!
『毛玉』は謎だが、そんなのもうどうでもいい。とにかく彼は見目麗しい。
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