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一章:アダム視点
5.結婚の話
*
まずい。そう思った時には遅かった。高濃度の魔力が膨れ上がっていく。この魔力の流れはどうもおかしい。僕の魔術に何かが干渉している?
ーー危ない!
叫んだ次の瞬間に僕の体は宙に浮いた。障壁を展開しても防ぎきれず、吹き飛ばされていく時はスローモーションのようにゆっくり景色が流れた。硬い瓦礫に叩きつけられると、指一本すらも動かせなかった。
ーー全部…………か? …………しろ。
ーー急げ…………。…………せ。
真っ暗な煙と砂埃で視界は閉ざされているのに、誰かの声が聞こえた。
なんだ? あの場に僕以外の誰がいたのか? そこで僕の意識は途切れた。
*
朝起きると、外が騒がしかった。
なんか変な夢を見た気がする。大事なことのような気がして、とても気になるが思い出せない。まぁいい。夢とはそんなものだ。
ベランダに出て、騒がしい下を見下ろす。
ん? あのイケメンはロディじゃないか? うちの兵士たちに囲まれている。ロディも周りの兵も武器を構えていて、ピリピリとした殺気がここまで飛んでくる。
まだみんなには紹介してなかったな。見慣れないイケメンがいたから、見回りの兵たちが警戒したのかもしれない。
僕はすぐに飛んで、ロディの横に下り立った。
一斉に距離を取る兵士たち。いつものことだけど、僕が恐れられていることがロディに知られてしまったかもしれない。
「みんなおはよう。彼は僕の婿としてきてくれたローデリックだ。ロディも戦いの心得があるようだから、訓練に参加してもらうのは構わないが、傷つけるなよ」
「はい! 申し訳ありません。ローデリック様、失礼いたしました。どうかお許しを」
「「「申し訳ありません」」」
ロディはビックリして固まっている。きっと怖かったんだろう。彼がどれくらい強いのかは分からない。剣や槍だけなら躱すことができても、攻撃魔術を向けられたらロディの魔力では障壁を張っても防ぎきれない。あの魔力量で障壁を張れるのかも分からない。
「あとでロディのことはみんなに紹介する。お前たちは訓練に戻れ」
兵たちは散っていき、僕はロディと二人取り残された。
「ごめんなさい」
「何が? 僕がもっと早くみんなに紹介しておけばよかったね。今日は屋敷のみんなと、兵たちに紹介しようと思うけどいい?」
彼は「はい」と言って、僕に上着を掛けてくれた。
そこで気付いた。僕の今の格好は素足だし、起きたばかりだったから寝巻きだ。
「み、見苦しい姿を見せた」
僕は慌てて飛んで部屋に戻った。恥ずかしい。こんな明るいところで寝巻き姿を見られるなんて……
失敗してしまった。
僕のお婿さんを守るために颯爽と現れて、余裕の表情を作って兵たちにも堂々と対応したはずだったのに。
しばらくすると、セドリックが朝食の用意ができたと呼びに来た。
「セドリック、ロディに会ったか? 様子はどうだった?」
「アダムヘルム様に迷惑をかけたと落ち込んでおられました」
そうなのか。「あいつは寝巻きで外に出てきた」と吹聴されて、笑われているのかと思った。僕が寝巻きで外に出たことは黙っていてくれたのか。兵たちから広まるだろうが、それはもう仕方のないことだ。
失敗してしまったから、少し憂鬱な気分になりながら食堂に向かった。ロディはもう席に着いていて、肩を落として俯いている。
セドリックが言っていたロディが落ち込んでいるというのは本当らしい。
僕が恥ずかしいことをしたのはどうでもいいから、たった一人でこんな辺境の地まで来た彼のことを、ちゃんと心も守ってあげないといけないと思った。
「ロディ、後で僕の部屋に来て」
普通に話してもよかったんだけど、ロディまでの距離は結構遠いから、声を張らなきゃいけない。だから僕は魔力に声を乗せて飛ばした。
婚姻の書類の話もしなきゃいけないし、昨日は結婚したいと言ってくれたけど、王命だから自身の覚悟を決めるために言ったのかもしれない。
例の事件のことも言わなきゃいけないと思った。
コンコン
「ろ、ローデリックです」
僕は魔術で扉を開けて、「入って」と入室を促した。
まだ少し俯き加減で入ってきたロディの様子に心が痛んだ。
こんなにイケメンで、きっと真面目に剣術とかやってきたんだ。魔力が少ない欠点を補うために頑張ったのかもしれない。でもそんな努力は認めてもらえず、「絶対に失敗するな!」とか言われて追い出されるようにここに来たんだろう。
「婚姻の書類のことなんだが、ロディはすぐに提出したいか? それとも結婚式をしてから提出したいか?」
「え? 俺と結婚してくれるの、ですか?」
「王命だしな」
「そうだよな……」
ロディは一度あげた視線をまた落としてしまった。違う。王命だから仕方なくではなくて、いや、それもあるんだが、僕は嫌じゃない。
「僕との結婚は嫌かもしれないけど、王命だから諦めてほしい。ロディが過ごしやすいように努力はするから、何でも言ってほしい。
その……僕はロディと結婚するのは嫌じゃない」
「俺は、魔力が少ない」
やっぱりそれはロディにとってコンプレックスなんだな。僕は別に魔力と結婚するわけじゃない。
「知ってる」
「俺は、教育というのをほとんど受けていないし、森に戻ると思って鍛えたけど、たぶん弱い」
「そうか」
教育も受けてないのか。学園に通っていれば、魔力量の少なさとこのイケメンの容姿は絶対に話題になる。見たことも聞いたこともないということは、領地かどこかに閉じ込められたりしていたのかもしれないな。閉じ込められていたのなら森に戻るというのは謎だが、森に別邸があってそこで暮らしていたのかもしれない。色々聞きたい気もするが、順を追ってお互いを知っていけばいい。
「俺は、帰る場所も無いし、アダムと結婚しなければ殺されるかもしれないから、結婚したいとは思う」
「分かった。じゃあもう直ぐにでも婚姻の書類は提出しよう」
殺されるかもしれないなんて物騒だな。やはり脅されてここに来たのか。ロディには選択肢なんてなかったんだな。可哀想に。結婚すれば少しは安心してくれるか? そう思ったのにロディは俯いたまま膝の上で拳を握りしめた。
「でも……こんな俺を貰わないといけないなんて、アダムが可哀想だ。俺を気遣って嫌じゃないと言ってくれたのか?」
これは結構根が深そうだ。僕もちょっと拗らせている自覚はあるけど、ロディも相当だな。僕の場合はもう周りが恐れているのはどうしようもないけど、ロディの場合はまだ救ってやれると思った。
「僕は魔力量のことは本当に気にしてない。教育は勉強が嫌じゃないなら家庭教師をつけてもいい。大人になったら勉強してはいけないなんて決まりはないからな。それと剣も、本格的に習いたいなら兵士の剣が上手い奴に教えてもらうよう手配する」
「なんで……」
「なんでって、ロディは僕のお婿さんだからだ」
ロディは急に部屋を飛び出して、しばらくすると戻ってきた。トイレか?
戻ってきたロディは少し目が赤いように見えた。目にゴミが入ったのかもしれない。
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校正・文体の調整に生成AIを利用しています。