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二章:ロディ視点
13.朝のこと
緊張していたから、夜はすぐに寝た。疲れていたのか、それともこのふわふわなベッドが気持ち良すぎたのか、朝までぐっすりだ。明日はこの床に敷いてあるふわふわの毛皮の上で寝てみようと思う。朝はまだちょっと寒くて、着替えて外套ってやつを羽織って外に出て、剣の素振りの練習をした。
この剣は、ちょっと長くて重い。馬車でここにくる時に『キラキラした石がついた服を着た男』がくれた。
街の入り口に立っている騎士が持っていたみたいな剣で、ずっと触ってみたかったから嬉しかった。馬車で移動中には素振りなんてできないし、宿に泊まった時に朝早く起きて、ちょっと振るったりしていたけど、まだ重くて長くて慣れない。
俺はそれまでずっとナイフを使って『毛玉』や怖い生き物を狩っていたから、剣を使って戦ったことはまだない。
あ、これはいい匂いがする草だ。森の家に住んでいた時に束ねて部屋に置いていた。モジャモジャの草だから、俺は勝手に『モジャ』と呼んでいる。
こんなところに『モジャ』が生えてるなんて。手入れされた花壇じゃないから摘んでもいいかな?
三本ほど摘んで、いい匂いだなって思いながら、部屋に持ち帰ろうと『モジャ』をポケットに入れた。
その後、剣を振るっていたら、騎士みたいな人がいっぱい来た。
「ここで何してる!」
「剣の素振りを……」
「どこから入った!」「何が目的だ!」「敵のスパイか?」
囲まれて怒鳴るように話されると、体が強張る。あの『キラキラした石がついた服を着た男』みたいに、魔力が少ないことを責められて、魔術を浴びせられるのかもしれない。身を守るのはこの剣だけ。剣があっても、剣の攻撃は受けられるけど、魔術を使われたら受け止めることはできない。
この男たちは俺を殺すつもりで攻撃するんだろうか? ここで俺は死ぬんだろうか? 怖い。
そう思ったら、アダムが上から飛んできた。それで俺のことを婿だと紹介してくれた。
「みんなおはよう。彼は僕の婿としてきてくれたローデリックだ。ロディも戦いの心得があるようだから、訓練に参加してもらうのは構わないが、傷つけるなよ」
「はい! 申し訳ありません。ローデリック様、失礼いたしました。どうかお許しを」
「「「申し訳ありません」」」
男たちは俺に大声で謝って去っていった。
俺は大声が苦手なのかもしれない。どうしても魔力のことで罵倒されていた記憶が蘇って体が強張ってしまう。
それより、アダムがとても寒そうな格好をしているのが気になった。俺はちょっとぐらい寒くても病気になんかならないけど、アダムは小さくて細いから心配だ。上に何も羽織らず飛んできてくれたのは、俺を心配してくれたんだろうか。
俺は外套を脱いでアダムにそっとかけた。
そしたら、アダムは見苦しい姿を見せたと言って慌てて飛んでいってしまった。
見苦しくない。薄着で寒そうだと思ったけど、駆けつけてきてくれて嬉しかった。
でも、迷惑をかけてしまった。大人しく部屋にいればよかった。アダムが風邪でも引いて熱を出したら俺のせいだ。
失敗したと反省しながら部屋に戻ると、屋敷で働くメイドという人が、風呂の用意をしてくれた。手伝いましょうかと聞かれたけど、それは断った。地下室から出て全身をブラシで洗われた時、とても痛かったし、髪まで切られた。これ以上短くなったら、髪がなくなってしまうかもしれない。
嫌なことを思い出した。
嫌なことを思い出して、憂鬱な気持ちになりながら、セドリックに呼ばれて食堂に行った。
あぁ、また上手く食べられない食事だ。たくさん並べられたナイフとフォークとスプーン。スプーンだけでいいのに。
練習のためにもちゃんと使って食べなければならないのは分かってるけど、ちょっと食事が憂鬱になる。
あ……スープが溢れてしまった。スプーンで掬って飲むのはどうにも慣れない。水のようにコップに入れて口をつけて飲むのではダメなんだろうか。葉っぱの野菜も上手くスプーンに乗せられなくて、誰も見てないことを確認して指で摘んでサッと口に運んだ。豆は転がってスプーンで掬えなかったからフォークで刺して食べようとしたらポンっと飛んで転がってどこかにいってしまった。たぶん床に落ちたと思うが、どこにいったのか分からない。
味は美味しいんだ。食べたことのない味付けだったり、野菜にトロリとかかったちょっと酸っぱいのが美味しい。薄い肉も柔らかくて美味しい。上手く食べられたら、もっと美味しいんだろう。
食事が終わる頃に、アダムに後で部屋に来るよう言われた。
食事のことで怒られるんだろうか? 豆を飛ばしたし、スープを溢した。葉っぱを指で摘んだのがバレたんだろうか? それとも勝手に外で剣を振るって騒ぎを起こしたから怒られるのか?
なにで怒られるんだろう?
怒られることを想像して、罰として魔術で痛いことをされるのかもしれないと思うと、部屋に行くのが少し怖くなった。怒られたら、いつものように膝をついて地面に額を押し付けて謝ろう。許してくれるまでちゃんと謝ろう。
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