【完結】破壊神のお婿さんはイケメンらしい

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三章:純真 アダム視点

21.僕のお婿さん

  


 コンコン
 二人だけの世界をせっかく楽しんでいたのに、野暮な連中が襲撃してきた。
 セドリックと、ロディにつけていた護衛二人だ。

 ロディは僕を抱えたままカーテンの裏から出ていった。変なところから出てきたからって、淫らなことなんてしてないからな。着衣は乱れてないぞ。とは言っても、抱えられている時点で、もう何の弁明もできない気分だ。こうなったら下手な言い訳はせず、口を閉ざすに限る。

 護衛二人は、事件のことを勝手に話したことや、僕のことを怖がって傷つけたと謝罪してきた。
 百人中百人が同じ反応なんだし構わない。気にしてないって言ったら嘘になるけど、そうだろうなって諦めていた。期待だってしていなかったから平気だ。

「私も、アダムヘルム様が学園を退学してこちらに戻ってきた頃、『近付くな』と言われ、そっとしておいた方がいいと思っていましたが、その後、情けなくも距離感を上手く図ることができず、近付くことができなくなってしまいました。使用人は皆、アダムヘルム様を恐れているわけではないのです。距離をとっていることで、それ程までに傷ついておられるとは、思い至らず、申し訳ございませんでした。
 ローデリック様の言葉で目が覚めましたローデリック様、ありがとうございます」

 セドリックが言った言葉は、僕の心を揺らした。みんなも僕と距離を取ってたけど、僕もたぶんみんなのことを避け、近づけないようにしてた。それでどんどん距離が離れて、そして修復不可能になっていたんだと知った。
 そんなところにロディが来て、その壁を『破壊神』のお婿さんらしくバコーンと破壊した。ロディはイケメンで優しいだけじゃなく頼もしい。これが僕のお婿さんだ。

「ロディ、何言ったの?」
 ロディを見上げたら、なぜかロディの顔から血の気が引いていった。なんで? いいこと言ってくれたんじゃないの?

「皆さん、その……怒鳴って、申し訳ありませんでした。反省しています。罰は受ける。柵のついた地下室に閉じ込めてもいいし、魔術の的でもいい……」
「は? 柵のついた地下室? 牢ってこと? そんなところにロディを入れたのか? 魔術の的にしたのか? どういうことだ?」
 僕は耳を疑った。ロディのことを牢に入れて魔術の的にした奴がいるのか? 罰だと言って?
 僕のお婿さんだぞ? 何をしてくれたんだ? そんな奴は爆発させてやろうか?

 そう思ったのに、ロディは僕をギュッと抱きしめて、震える声で言った。
「アダム怒らないで。ここに来てからは地下室には行ってないし、魔術の的にもされてない」
「誰にされた?」
「キラキラした石がついた服を着た男」
 なんだそれは。急に夢か幻か空想世界が舞い降りたか?

 とりあえず聞いてみようではないか。
 僕の事件の話も、ちゃんと自分の口から話そうと思うし、ロディの話もこの際だからちゃんと聞こう。閉じ込められて飼い殺されていただろうことは分かっているが、それ以上のことは聞いていいのか分からなかった。僕たちは結婚したし、永遠を誓ったんだから、全部共有して全部二人で受け止めると決めた。
 ついでというわけじゃないが、セドリックと護衛のトミーとフライツも巻き込んで情報共有を行う。護衛の二人については信用できるのか不明だが、問題がある内容であれば、口外できないよう契約魔術を使えばいい。

 部屋に入るよう言うと、セドリックも護衛二人もちゃんと部屋の中に入ってきた。そしてソファの向かいに座るよう促すと、ちゃんと三人は座った。僕とロディが隣同士で座っていて、向かいに三人が座っている。こんなに僕の近くに来るのはロディだけだと思っていたが、本当に呆気なく、ロディによって僕たちの間にあった壁は取り払われたらしい。

 まずはロディの話を聞いた。
 ロディが言う『キラキラした石がついた服を着た男』というのは、空想世界の住人ではなく、恐らくロディの父親だ。兄という可能性も考えたが、幼い頃から大人だったっぽいから父親。もしくは祖父という可能性もあるか?
 森に置き去りにされたというのは、一種のゲーム感覚で、魔力が少ないロディが死んでも構わないと、森に捨てていたのではないか?
 孤児院に預けた方がまだ良心的だと思えるが、発覚するのを恐れたのかもしれない。成長して、面影があったりすると疑われたりする可能性はある。
 殺さなかっただけマシ、と言える状況には思えない。死んでもおかしくないところに幼い子を置いて、魔術で攻撃もしていたようだし、憂さ晴らしに使っていたのかもしれない。許すまじ。『キラキラした石がついた服を着た男』この名称は長いな。『石男』とでも呼ぶか。
 そして謎の『毛玉』という生物や魔物を狩って街で売って、そこで初めてロディは人の世界に触れた。
 しかし例の『石男』はロディが少し知恵をつけて街に来ると、地下牢に閉じ込めて魔術の的にしていたとか。
 なんてことをしてくれたんだ。僕の大事なお婿さんに。

 こんなことをする奴は、他でもどうせ碌なことをしていない。徹底的に暴いて地獄に突き落としてやると決めた。
 まずはロディを完璧紳士に仕立て上げ、社交界デビューさせて、驚く顔が見たいな。悪事を暴かれて、引き攣った顔も見たい。
 ロディは二十一年も苦しめられた。その痛みを絶対に味わわせてやる。セドリックや護衛たちもやってやるぞと息巻いている。
 いつの間にかロディは、セドリックや護衛たちの心まで掴んでいたようだ。慕ってもいいが僕の夫だからな。

 退屈だった毎日に、ロディのおかげで色がついた。ずっとロディと一緒にいれば、どんどん色が増えて、二人で作る生活が色とりどりになるんだと思った。ロディがお婿さんとして来てくれてよかった。これからは何があっても僕が守る。

 ロディは昔の話をする時、ギュッと拳を握りしめて、何かを耐えるように小さく震えていた。だから僕はその拳をそっと包み込んだ。パッとこっちを向いたロディの顔は、ちょっと驚いていて、そして優しいイケメンスマイルが発動された。僕の心臓がドクンと鼓動して、一気に全身へ血液が巡っていく。
 不意打ちは無しだよ。僕のお婿さんはイケメンだ。きっと自覚してないんだろうな。

「話してくれてありがとう。ロディ、辛いことを思い出させてごめん」
「アダム、俺のこと嫌いになってない?」
「嫌いになるわけないだろ。ロディは僕の大切な夫だ」
 そう言ったら、周りに人がいるのにロディは僕をヒョイっと抱き上げて膝に乗せると、ギュッと抱きしめて、キスをした。

「ろ、ロディ! 待て、ひ、人前でキスなど……だ、だ、ダメだ」
 僕はパニックだ。セドリックと兵にキスしているところを見られた。
 分かっている。ロディはさっき聞いた限り、森や牢で生活をしていたのだから、常識を知らない。いや、僕だってそんなに常識を知っているわけではないけど、人前でキスをしている人を見たこともあるけど、僕は、僕は、僕は……人前でキスなんて恥ずかしい。

「人前ではダメなのか。ごめん。もうしない」
 めちゃくちゃ落ち込んだ感じでそんな風に言われて、もしかして僕の方が間違っているのかと、ちょっと心が痛んだ。
 その話はちゃんと後で二人でゆっくりしようと思う。


  
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