22 / 75
三章:純真 アダム視点
22.初夜?
ロディが人前でキスなんてするから動揺してしまったが、気を取り直して僕の事件の話をした。
起こしてしまったことは事実で、どんなに魔術の腕をあげても、過去を変えることはできない。
分かっているけど、みんなが離れてしまうのが、一夜にして世界が全て変わってしまったのが辛かったんだと思う。
誰も近付かないんだから、誰にも打ち明けることがなかったし、もう誰にも期待なんてしてなかった。
ロディはまた僕をギュッと抱きしめてきた。もうこれは仕方ない。きっとこれは何度言っても治らない気がするし、僕もロディに抱きしめられるのが好きで、安心するんだ。
もっと早く話しておけばよかった。
ロディは、ロディだけは違うんだ。恐れることなどなかった。何を知っても、ちゃんと僕を真っ直ぐな目で見て、直視できないほど眩しい笑顔を向けてくれる。
一通り僕の話を終えると、セドリックも兵二人も気を利かせたのか部屋を出ていった。
僕は、ロディに抱きしめられたまま、キスは人前ではしたくないことを伝えることにした。
「ロディ、人前でキスをしてはいけないなんて決まりはないけど、僕は誰かに見られたら恥ずかしいし、誰にも見せたくない。その、二人だけの秘密の時間にしたいから」
「二人だけの秘密……嬉しい」
どうやら納得してくれたようだ。よかった。
「僕たち、結婚したんだな」
「結婚。そうだアダム、ベッドに行く?」
ベッド!? そういうこと? ロディは知ってるのか? 僕はさっきカーテンの裏でキスをした時、ロディは慣れてるんだと思った。でも今までの生活環境を考えると慣れているわけがない。女や男を買えるような環境とは思えない。そういった知識すらないかもしれないと思った。それなのに……
「ロディは……ね、眠い、のか?」
「まだ眠くはない。夜じゃないからな。ベッドで格闘のようなことをするんだ。愛し合うもの同士だと幸せだと聞いた」
それって……やっぱりそういうことだよな? 『石男』め、ロディにそんな知識だけはつけさせたんだな。恐ろしい男だ。
それにしても格闘のようなことと言われると、違うような気もしてきた。
「格闘のようなこととは、何をする気だ?」
「裸で抱き合って、このちーー「わぁあああ、言わなくていい」
やっぱりそういうことだった。ロディが股間に手を伸ばしてジェスチャー付きで説明しようとするから、必死に遮った。イケメンがそんなの言葉にするな。明るい場所でそんなところを握るな。
僕はロディと結婚した。正式に婚姻が受理された報告が来た。それをロディは知っている。まさか今日は初夜というやつなのでは?
ど、ど、ど、どうしよう……
その後、僕は何も話せなくなった。そもそも僕は抱く側なのか? 抱かれる側なのか? どっちだ?
『石男』はロディにどっちの知識を与えたんだ?
「アダム、嫌ならまだしなくていい。無理やり進めてはダメだと聞いている。俺はいつでもいいから、アダムが俺と格闘をしてもいいと思ったら教えてくれ」
「あ、うん」
格闘……隠語ってやつか?
ロディは顔面だけがイケメンなわけじゃないらしい。僕が覚悟を決めるまで待ってくれるなんて、中身もイケメンだった。
って、僕がしたくなったら自らしたいって言うの? そんなの恥ずか死ぬ。
「一緒のベッドで隣に寝るのはいいか? 結婚したら同じベッドで寝ると聞いた」
「いいよ」
それくらいなら。そう思って気軽に返事をしたんだけど、夜になった今、僕の隣にはこちらを向いて微笑むイケメンがいる。
なぜこっちを向いている? 仰向けになって天井を向いてくれよ。
ロディは体ごと僕の方を向いて、僕の左手を両手で包み込むように掴んでいるし、ジッと僕のことを眺めている。こんな状況で寝れる奴いる?
目を閉じてもずっと視線を感じる。
「ロディ、寝ないのか?」
「寝るのがもったいない。せっかく隣に居られるんだから、ずっと朝までアダムを眺めていたい。眠っている時の顔は見たことがないから見てみたい」
「いや、そんなの見なくていい。頼むから寝てくれ。そんなに見つめられると僕も眠れない」
そうは言ったけど、僕も見たい。イケメンの寝姿を見たい。ロディは本当に寝ない気か? どっちが先に寝て、どっちが寝顔を見られるのか、勝者はどっちだ?
勝者は僕。ウィナー!
でも僕は寝ないわけじゃない。ロディが全然寝ようとしないから、眠りの魔術をかけた。まつ毛が長いなとか、右目の目尻に小さいホクロがあるんだなとか、顎のラインが細いなとか、寝ると眉尻がちょっと下がるんだとか、もう色々とじっくりイケメンの寝顔を堪能した後、ドキドキして眠れなくなった僕は、自分にも眠りの魔術をかけて、無事夢の世界へ旅立った。
「おやすみロディ」
あなたにおすすめの小説
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
脳筋剣士と鈍感薬師 ~騎士様、こいつです~
季エス
BL
「ルカーシュは、駄目よ」
その時胸に到来した思いは安堵であり、寂しさでもあった。
ルカーシュは薬師だ。幼馴染と共に、魔王を倒すために村を出た。彼は剣士だった。薬師のルカーシュは足手纏いだった。途中で仲間が増えたが、それでも足手纏いである事に変わりはなかった。そうしてついに、追い出される日が来たのだ。
ルカーシュはそっと、瞼を伏せた。
明日、明日になったら、笑おう。そして、礼と別れを言うのだ。
だから、今だけは、泣いてもいいかな。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
契約書はよく読めとあれほど!
RNR
BL
異世界で目が覚めた、就職浪人中の美容系男子、優馬。
最初に出会った美しい貴族青年は、言葉が通じないが親切に手を差し伸べてくれた。
彼の屋敷に招かれた際、文字は読めないもののなにかの書類にサインをすると、その彼と結婚したことになっていて……。
この世界で何をする? また無職生活? 本当にそれでいい? 葛藤する日々と、それを惜しみない愛情で支える夫。
理想の自分と、理想の幸せを探す物語。
23話+続編2話+番外編2話
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。