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四章:進展 アダム視点
34.陛下と神様?
「ロイター辺境伯、わしが選んだ婿とは仲睦まじく過ごしているようだな」
声が聞こえて振り返ると、そこには陛下がいた。きっとロディは陛下を見たことがないだろうと思い、ロディの耳元で「あれが王様、国王陛下だよ」と教えてあげた。
「陛下、私とロイター辺境伯の婚姻をお命じ下さったこと、感謝申し上げます。私たちは毎日幸せに暮らしています」
僕より先にロディが答えてしまった。構わない。ロディも丁寧な言葉が上手くなったものだ。
僕はというと抱き上げられているし、何を話しても締まらないだろうから黙っておく。
ロディは意図して言ったわけではないだろうが、ロディの発言により、僕とロディが王の紹介ではなく、王命により結婚したと周りに知れた。
それでやっと「『破壊神』イケメン攫う説」を提唱していた奴らが口を閉じた。
そして、ロディは陛下の斜め後ろに立っている人に向かって話しかけた。
「神様も来ていたんですね。あの時は意味が分かりませんでしたが、後で分かりました。この未来を教えてくれたんですね。白いパンありがとうございました」
は? 神様? 斜め後ろの存在感の薄い中性的な人に向かって話しているんだよな? それとも僕たちには見えない本物の神様がロディには見えているのか?
急にロディは空想世界に旅立ったんじゃないよな?
陛下はくつくつと笑っているけど、周りはポカンとしている。陛下には意味が分かっているのか? 僕には分からない。
「少し話をしよう」
陛下にそう言われて、僕たちは移動することになった。
僕は『破壊神』ですけど大丈夫ですか?
ロディには下ろしてもらい、陛下たちとは少し距離をとって歩いた。
部屋に入るよう言われたが、僕は王族と同じ部屋に入っていいんだろうか? 迷っていたら、ロディに手を引かれて中に入ってしまった。
「そこに掛けて」
「はい」
結構近いがいいのか? 陛下に逆らうことはできないし、ソファにロディと並んで腰掛けた。
「ローデリック、神様発言は面白かったよ。ネーベル、説明してやったらどうだ?」
「神様の名前はネーベル様と言うのか」
ロディは陛下の斜め後ろに立っている中性的な人を見つめながら呟くように言った。やっぱりあの人のことなのか?
「お久しぶりですね。私は神様ではありませんよ。陛下の補佐や影として働いているネーベルと申します」
「地下の柵のある部屋にいる時、白いパンをくれました。甘いトロトロが入っていてこの世のものとは思えない美味しさでした。そして未来を予言してくれました。神様ではないのですか?」
「私はあなたの噂を聞いて陛下の指示で調査に行っただけです。あの環境は酷かったので、救い出すのでお待ち下さいという意味でお伝えしました。未来の予言などできません」
「そうですか」
ロディは少し残念そうだった。
「それよりなぜ私が分かったのですか? 姿を変えていたはずですが」
「その首からかけている黄色の石が花の形で綺麗だと覚えていました。次に会ったらお礼を言いたかったのです。ありがとうございました」
「なるほど、それは盲点でした」
僕には何の話をしているのか全然分からなかった。
ロディが『石男』に牢に閉じ込められている時に、会った人らしい。
詳しくはまた今度聞いてみよう。
「ローデリック、救い出すのが遅くなってすまなかったね。アダムヘルムであればキミを受け入れてくれるんじゃないかと思ってな。逆もな。ローデリックからは幸せだと聞いたが、アダムヘルムもこの婚姻で未来に希望は見えたか?」
まさか誰からも避けられ『破壊神』などと呼ばれ、親にさえ見放された僕のことを気にかけてくれる人がいるなんて、知らなかった。
「はい。毎日幸せです。陛下には感謝しています」
声は少し震えてしまった。ちょっと泣きそうになった。だってロディに出会ってから、僕の世界は変わったんだ。今でも変わり続けている。
「それはよかった。それと、聞いたよ。あの事件には裏があることを」
「え?」
そんな話、僕は知らない。どういうことだ? 誰から聞いた?
「まだ調査中だが、もしかしたら協力を依頼するかもしれない。これ以上巻き込みたくはないが、その時が来たらキミの両親から話が行くだろう。今は二人で心を癒し、幸せな日々を過ごしてくれ。わしから今話せることはそれだけだ。この後は会場に戻ってもこのまま帰っても構わないよ」
これ以上は話してくれないということか。裏があるなんて初耳だし、両親が関わっていることを匂わせてきたのも意味が分からない。
モヤモヤするが……
今日は久々の夜会で、こんなに嫌な目に晒されたのも久しぶりだったから疲れた。『石男』のことは気になるが、もう帰ってロディに甘やかされてのんびり過ごしたい。
「ロディ、帰ろうか」
「そうだな。あの会場は気味が悪い」
だよな。気味が悪い。的を射た言い方だと思った。怖い、不愉快、不快、色々あるが「気味が悪い」が一番しっくりくる。
「気味が悪いとは、はははっ、ローデリックは面白い。またいつか話をしよう。ではな」
そう言って陛下はネーベルと護衛騎士を連れて部屋を出て行った。
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