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四章:進展 アダム視点
35.甘える
「ロディ、屋敷に着いたら一緒に風呂に入らないか?」
「入る。体が臭くて堪らない」
ロディは貴族がつけている香水の匂いが苦手らしい。胸ポケットから『モジャ』を取り出し、萎れた葉を眺めている。
僕は『モジャ』という草の存在を知ってから、香水を作ることを計画した。これがなかなかに人気で、兵や冒険者を中心に流行っている。
人気が出るかは分からなかったし、目立った産業がない村に小さな工場を作り、細々と始まった香水製作だったが、このまま需要が増えるようなら工場はもっと大きなものにしなければならない。今のところ領都とその周辺だけだが、この先は分からない。
兵も冒険者も、『モジャ』をわざわざ摘みに行くのは面倒だと思っていたらしく、彼らは香水を使うようになった。ロディは香水より生の葉っぱを持ち歩く方が好きらしい。『モジャ』は感触もふわふわして可愛いんだとか。
草を可愛いというロディが可愛いよ。
「アダムは何もしなくていいよ」
ロディは僕の正装を脱がそうとしたが、普段着ている服と違って仕組みが複雑すぎて困っている。
「ごめん。できないかもしれない」
「いいよ。メイドに来てもらおう」
しゅんと眉尻を下げているイケメンもまたいい。
二人してメイドに服を脱がせてもらうと、一緒に風呂に入った。ロディが体も髪も全部洗ってくれる。ザバーッと泡を流し、湯船に浸かると、ロディに後ろから抱え込まれた。
「アダム、俺は何もできなかった。アダムを悪意から守りたかったのに」
「十分だ。僕は今日、楽しかった。見たか? ロディが僕を愛してるって抱きしめた時の周りの奴らの顔。あれが見られただけで僕は満足だ」
これは本当のことだ。陛下が僕を気にかけてくれたことも嬉しかったけど、ロディが側にいて、僕を躊躇いなく抱きしめてくれたのが本当に嬉しかったんだ。
「ロディ、愛してる」
さっき、僕だけ言えなかったからな。まだ目を見て言うのは恥ずかしい。ロディが後ろにいるから言えた。
「アダム、キスしていい? ダメ?」
「いいに決まってる」
頭だけ後ろを振り向くと、ロディの美しい顔が目の前にあった。僕はまだ慣れない。顔が近いというだけでドキドキしてしまうんだ。
触れた唇は柔らかくて、舌も柔らかい。でも甘くて熱い。たがが外れたみたいに夢中でロディを求めた。
ロディが僕の股間に手を伸ばした。キスだけで昂ってしまったのが恥ずかしい。
「ああっ……」
「アダム可愛い。一回出したらベッドに行こうね。嫌なら格闘はしないけど、抱きしめていていい?」
「いいよ」
ベッドに寝そべって、ロディの胸筋の谷間で微睡んでいた。今日は『モジャ』の香りはしない。さっき風呂に入ったばかりだからだ。
ロディはキスだけで満足なのか? 赤ちゃんを寝かしつけるように、抱きしめた僕の背中をトントンとリズムよく叩いてくる。
何だこの心地いい感じは。ロディは僕に色んなものを与えてくれる。ドキドキだけでなく癒しまで与えてくれる。ロディに神様と勘違いした人の話とか聞きたかったんだけど、もう寝てしまいそうになる。
「ロディ……」
「ん? アダムどうした?」
目が合ったイケメン。ほわほわと今にも眠りそうだったのに、感情は癒しからドキドキと欲望へと変わっていく。
今日は疲れたし、そんなつもりはなかった。
あぁ、でももうダメだ。ロディの甘い蜜に絡め取られたい。どんどん欲望が湧き上がってくる。
「キスしたい。ロディ……」
その先も期待して、イケメンの頬を指でなぞって、察しろよと視線だけで訴えてみる。
ロディはたくさんキスしてくれる。ダメだもっとほしい。
もっと僕に触れてよ。何度も期待を込めて視線を送るのに、ロディは気付いてくれない。もう、焦ったいな。
「アダム、何か言いたいことがあるの?」
そうだけど、そうじゃない。気付いてほしいんだ。言いたいわけじゃなくて……
僕が押し黙っていると、ロディがイタズラが成功したようにふふふっと笑った。
え? まさか気付いてて、僕の反応を見て楽しんでた?
「アダム、可愛い。格闘する?」
「……する」
僕はこのイケメンの掌の上で転がされてる。
いいや、それがロディなら許す。僕を翻弄していいのはロディだけ。
「ろでぃ……ぼくだけ愛して」
「アダムだけだよ。アダムだけがほしい。愛してるよ」
ロディはいつも僕がほしい言葉をくれる。
ロディの熱で溶けて、ロディと甘く絡み合っていく。これを求めてたんだ。
気がつくと僕は寝ていて、でも全然寒くない。ロディが僕を包み込んでいるから。このままずっとこうしていたいな。少し体は怠いけど、起きたらロディが抱えて運んでくれるからいいんだ。
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