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四章:進展 アダム視点
37.『ポコポコ』
部屋に入ると、ソファに座った。
メイドがお茶を淹れ、僕と隣に座るロディの前に置いて、部屋を出て行った。僕の前にはハドリットがいる。僕の後ろには護衛のアストロとトミーとフライツが立っている。
使用人たちとの距離が案外簡単に縮まってしまったことに少し驚いている。
「ハドリット、両親はあの後、王都に何度か来ているか?」
「ええ、何度もお見えになっています」
やはりそうか。
「何か聞いているか? 僕に何か言っておくようにとか、それ以外でもいい」
「アダムヘルム様に何か聞かれることがあれば、『必要があれば連絡をするから今は動くな』と伝えるようにと言われております。詳細は聞いておりません」
「そうか」
陛下も詳しくは話す気がないようだった。両親もか。ロディを危険に晒すわけにはいかないし、僕は時が来るまで知らないふりをして今までと同じ生活をするしかないようだ。
大聖堂の見学も今回は見送るか。王立図書館も。
しかし両親が僕の事件を調べるために動いているなんて知らなかった。あの事件で僕を怖がって逃げたのだと思っていた。なぜ言わなかったのか。
危険に晒さないため? 領地に引っ込んでいれば危険がないと考えたのか?
ふざけるなという怒りと、見捨てられたわけではないと知った安堵。僕はどの感情を持てばいい?
「アダム、おいで」
「うん」
ロディは僕をひょいっと抱えて膝の上に対面で乗せ、抱きしめてくれた。なんで分かった?
大丈夫だって抱きしめてくれる腕がほしかった。あの時は一人で、誰もいなかった。今はロディがいる。
……あれ? 今日のロディはいつものイケメンの匂いじゃない。石鹸でもない。ロディに変わりはないんだが、いつもとは違ういい匂いだ。
「ロディ、今日は『モジャ』を持っていないのか?」
「うん。今日は『ポコポコ』をポケットに入れてる」
「ん? 『ポコポコ』とはなんだ? 初めて聞く気がする」
草か? ポケットに入れたということは植物だよな?
しんみりした気分が、新たな謎生物『ポコポコ』によって、もうどうでもよくなった。今は『ポコポコ』の方が気になる。
「庭に生えていたから、庭師のボンにもらえないか聞いて一本もらったんだ」
「そうか。『ポコポコ』も草なのか?」
「どうだろう? 草か花か種かもしれない。ボンに後で聞いてみる」
後ろでも「『ポコポコ』ってなんだ?」「またいい匂いがする草ですか?」「分からん」なんて護衛たちが話している。だよな。俺もその正体が分からない。そして気になって仕方がない。
ということでボンを呼んだ。『ポコポコ』を一本持ってきてくれと言って。
「『ポコポコ』はこちらの花です」
「なるほど」
茎は緑だが、その茎の先に紫の粒みたいなものが並んでいて、よくみるとそれは小さな花だった。『ポコポコ』というのは正式名称なのか?
「これを束ねて部屋に置いておくといい匂いがするんだ。枯れたら匂いが強くなって、でも枯れると紫のところがポロポロと落ちてしまうんだ。この紫のポコポコしたところが可愛いだろ?」
ロディが『ポコポコ』についての説明をしてくれた。なるほど。それで『ポコポコ』という名前なのか。え? そうなのか?
ロディはその花の部分が落ちてしまわないように、ハンカチに包んでポケットに入れていた。
正体が分かってスッキリだ。
領都の敷地では見たことがない気がするが、花になんて興味を惹かれたことが無かったから、見ていないだけであるのかもしれない。
ロディが見つけてないことを考えると、領都の屋敷には無いか、冬にしか咲かない花なのか。領都の冬は雪が積もるからな。生えていても見つけられないかもしれない。
あとでボンに聞いたら、『ポコポコ』の正式名称は「リゼラ」というらしい。寒い時期に咲く花でロイター領でも育てているのではないかとのことだった。領地に戻る頃にはもう咲いていないかもしれないが、庭師に頼んで育ててもらおう。
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