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五章:戦争 ロディ視点
45.撤退
コンコン
「俺だ。アダムヘルム様、入りますよ」
この声は『軍団長』だろうか?
朝になってアダムを腕に抱きしめたまま眠ったふりをしていた。言わなければならないことがあるけど、怖くて言えなくて、少しだけ時間稼ぎをしていたんだ。
「そこで報告しろ」
最近アダムは目の前で、兵からの報告を受けているけど、今のアダムはベッドに力無く寝そべっている。これは完全に俺のせいだ。
だからベッドから出ることなく『軍団長』からの報告を聞くことにしたんだと思う。
「帝国が撤退している。あんた昨日の夜暴れただろ」
「僕の宝が汚されそうになったからな」
「あ~、じゃあ仕方ないな。報告終わり。用意した兵糧やなんかは街で祭りでも開いてパーっとやるか?」
「それでいい」
「じゃあこっちの兵も撤退する」
「アンガスに任せる」
アダムへの報告を済ませると『軍団長』は部屋をさっさと出て行った。
暴れたってアダムのことだろうか? 宝ってのは、俺のことか? 俺もアダムのこと宝物だと思ってる。同じで嬉しい。
「ロディ、何をされた?」
「アダム、ごめん。優しくできなくて、それに、攫われたから……」
俺はアダムに無茶をしたことを、まず謝りたかった。
「何をされたかは言えないの? キスした? 格闘は?」
「してない。担いで攫われて、暴れて、草を嗅がされて、目が覚めて、毒を飲まされて、我慢大会だと言われて、俺が毒で死んでいくのを、みんなで酒を飲みながら眺めていた」
うまく説明できなかった。色んなことがあって、怖くて苦しくて……
そういえば、俺はまだ生きているんだな。毒を飲まされたのに、アダムが毒をなんとかしてくれたんだろうか?
「そっか。着衣も乱れてなかったし、未遂ってところか」
「もう、会えないんだと思った」
「大丈夫だ。僕がロディを見捨てるわけがない」
俺は、自分は弱いから戦えないけど、アダムやみんなが戦っている様子を見たくて近くまで行ったことを正直に話して謝った。
あんなところに行ったのは俺が悪いんだ。罰を受ける覚悟もできている。
夜に苦しむアダムをたくさん求めてしまったことも謝った。
「心配したんだから! 僕が行くのがもうちょっと遅かったら、ロディあの男たちの餌食になってたんだからね!」
「ごめんなさい」
俺は怒るアダムに謝ることしかできなかった。
魔術の的にされるのかと思って怖かったけど、俯きながら謝る俺を、アダムはギュッとしてくれた。
「無事でよかった」
そんな風に俺の身も心も救ってくれたアダムに、ちょっと涙が出た。アダムに怒られたから、まだ少しだけ胸がドキドキしている。
「ロディ、世の中には変態がいるんだ」
「変態……」
アダムは、あの赤い髪の男たちが俺に何をして、何をしようとしたのかを教えてくれた。
俺は、あの見知らぬ男たちに、無理やり格闘の相手をさせられるところだったのだと聞いて血の気が引いた。組み手の格闘ではない。ベッドの上で愛し合う行為の格闘だ。
そんなの嫌だ。俺が愛しているのはアダムだけだ。他の者と肌を触れ合わせるなんて、想像しただけで気持ち悪くなった。
アダムは言った、愛していなくても欲望を満たすために格闘する者がいるのだと。それは知っていたけど、結婚しているのに他の相手としたり、何人もと交わったりすると聞いて理解ができなかった。理解はできなくても、そういう人がいるのだと知ることはできた。
「アダム、俺はアダム以外としたくない」
「僕もロディ以外としたくないし、してほしくないよ」
アダムが俺と同じ気持ちだと知って安心した。俺が他の人とするのも嫌だが、アダムが他の人とするのも嫌だ。
アダムは俺と永遠を誓ったんだ。誰にも触れてほしくない。抱きしめたくて、肩にチョンッと触れた。ダメだったら諦めようと思ったんだ。
でもアダムは嫌がらなかったから、そのままギュッと抱きしめた。
ずっと俺だけのアダムでいてほしい。
「戦争、一日で終わったから今年は秋ごろにも攻めてくるだろうな。武器や防具の準備ができればの話だけど」
アダムは俺の腕の中で少し身じろぐと、急に戦争の話をしだした。
「春はもう終わったの?」
「僕の夫が攫われたからね」
「アダム、残念に思ってる?」
俺のせいだ。俺がこっそり見に行ったりしたから……
「別に。僕は戦争なんて面倒だし金がかかるし好きじゃない」
「そっか」
戦いを楽しみにしていた兵たちには申し訳ないことをした気持ちでいっぱいだ。
アダムが起こしたトルネードは、帝国の陣からも見える位置だった。俺を攫った男たちは、翌朝になって戦いに水を差して無体なことをした奴らとして、帝国兵たちの餌食になっただろうとアダムが言った。
こうして今年の春の戦争は、俺が攫われたことにより早々に幕を閉じた。
結局すごい威力のアダムの魔術ってのは見れなかったし、兵のみんなが戦っている姿も見れなかった。
後で聞いたら、夕食の時間になって俺がいないことに気づいた使用人たちがアダムに魔術を飛ばして、アダムが荒れ狂って敵陣をメチャクチャにしたらしい。
俺を迎えに来るまでに、敵の兵糧を全部燃やして、武器を全部上空でまとめて鉄の塊にしてポイっと捨てた。そして敵陣にいた『大将』という一番偉い人を吊し上げて、「ロディを返せ」と引き摺り回した。
それでも見つからなくて、俺がつけているペンダントの魔力を探ったら、敵陣じゃない外れたところにある小さい小屋に俺がいたから、吹き飛ばしてトルネードに閉じ込めたんだとか。
俺を攫った男たちは帝国の兵ともまた違う人たちだったようだ。
戦に紛れて人を攫ったり、物を盗んだりする人たちがいて、そのような人たちだったんじゃないかってことだった。
「ロディ、そのペンダント返して」
「はい。これが罰ですか?」
俺のお気に入りの御守りのペンダントを取り上げることが、今回のことに対する罰なのかと思った。
「違う。僕以外が一分以上ロディに触れたら触れた相手が気絶するように作り直す。あと、ロディは魔力が少なくて探すの苦労したから、僕から一定以上距離が離れたら解除するまで魔力を発信し続けるようにする。それが完成したら返すけど、返すまでロディは僕から見える位置にいてもらうから」
「分かった」
俺の御守りがどんどん強化されていく。
「難しいようなら、別のアクセサリーで対応するから」
「分かった。アダムのは作らないの? アダムは強いから攫われたとしても自分で逃げられるかもしれないけど、俺だってアダムのことが心配だから、アダムの危機に俺が駆けつけられるようにしてほしい」
「分かった。僕の位置情報が探知できる魔道具でも渡しておこうか?」
アダムがどこにいるか分かる魔道具があれば、アダムが行かないような場所にいたらおかしいって気づくことができる。
*
「おいお前、敵大将の夫を攫ってくるとかふざけるなよ」
「だってそんなの知らないじゃ~ん」
「命があるだけマシってことでしょうか」
「どこがマシだ。もう既に俺の腰は使い物ならん」
「五年男娼か……刑期終える頃には俺らみんなメスになってんな」
「悪いことはするなってことだ」
「もう覚悟決めたんだ?」
「俺は真面目に男娼になる!」
「なんだ、お前にとっては罰じゃなくて天職じゃねーか」
「俺ももう食っていけるならそれでいい。客はイケメンがいいな」
ロディを攫った男五人は帝都の娼館へドナドナされていった。
アダムに壊された武器や防具の賠償金として五人には五年間無給の労働が課せられることになった。
数年後、予約待ちの売れっ子男娼になった者がいたとかいないとか……
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校正・文体の調整に生成AIを利用しています。