【完結】破壊神のお婿さんはイケメンらしい

cyan

文字の大きさ
46 / 75
六章:開放 アダム視点

46.消えたお婿さん

  

 街の守りは問題ない。今回はロディがいるからいつもより多めに屋敷には兵を残しているし、戦闘狂の帝国の奴らの気が済むまで戦ってやればいいだけだ。
 面倒だが、人を殺して武勇を立てようとするような国でないだけマシか。
 彼らは戦いが好きなだけだ。帝国国内でも各地で闘技大会などが頻繁に行われているのだとか。
 男女問わず強い奴が人気で、戦いが趣味みたいなものらしい。

 ただ、注意しなければならないのが、たまに他国から流れてくる傭兵たちや、戦争に乗じて悪さをしようとする奴らだ。
 それは帝国側だけではない。
 ロイターの兵たちや、ロイターの領民ならそんな心配はないが、戦争に参加して稼いでいる傭兵には注意が必要だ。
 戦いを目的としている傭兵ばかりとは限らない。参加するだけで日当が出るということで日銭を求めて来る者や、手薄になった街で狼藉を働く者、敵味方関係なく戦いを挑む者もいる。

 街は安全とはいえ、そんな奴らもやってくるため、戦争の間は屋敷に街の人たちが集まる。
 街全体を守ることをは難しいが、屋敷の敷地の中くらいなら、残った兵で守ることができる。
 ロディが参加しないと言ったのはちょっと意外だったが、僕は少しホッとした。

 危険には晒したくない。いくら防御結界が付与されたペンダントを渡していても、不安はあるんだ。
 参加するというなら、護衛で囲んでちょっと参加してすぐに撤退してもらうつもりだった。

 敵兵が国境付近に陣を張ったのを確認したため、ロディや街の人たちに見送られて進軍を開始した。子どもの頃は僕も父親を見送っていた。
 いつか自分も参加するだろうと思っていたが、まさかいきなり大将として参加するとは思っていなかった。

 僕にはみんなが近寄りたがらないから、混戦になった時に地上にいると邪魔になる。それに気づいてからは、飛びながら上から魔術で攻撃をするようになった。
 初めて戦争に参加した頃は、加減が分からずとても苦労したものだ。軍団長のアンガスが殺しを目的とした戦争ではないと報告書をあげてくれたときにはホッとした。魔術で距離が離れていても、人を殺すのは怖い。
 僕はちゃんと結界を張っているから、矢が飛んできても、魔術が飛んできても、かすり傷だって受けたことはない。

 ある程度の日数戦うと、帝国のみんなは満足して帰っていく。もしくはかなり被害が多くなると帰る。
 僕が大将をするようになってから、領地を切り取られたり、街まで進行を進められたりしたことはない。早々に押し返したことはあるが。

 今回もいつもと同じように一日目の戦いが終わった。街まで帰るには遠いから、国境近くに作った砦まで戻る。
 砦があるから、ちゃんとした食事が出せるし、快適とまではいかないがしっかりと雨風凌げる場所で寝ることができる。

 初日から飛ばすことはしないから、まだ魔力にはかなり余裕がある。

「なんだ? 街から緊急の魔術が打ち上ってるぞ」
 兵の一人が気づいて、その後、周りの者もなんだなんだと窓に寄っていった。
 街からの緊急を知らせる魔術はかなりの数が打ち上げられ、大変なことが起きているのだと理解した。街にはロディがいる。
 焦った僕はすぐに飛翔魔術で飛んで街まで戻った。

「何があった?」
「ローデリック様がどこにもいません!」
「お部屋にも、敷地内もみんなで探し回りましたがいません。冒険者ギルドにもいませんでした」

「は? まさか帝国がロディを攫ったのか?」
 索敵を広げ、街を探ってみる。ロディは魔力が少ないからなかなかそれらしき人物を探すのは難しい。
 しばらく探ってみたが、ロディらしき人物はいない。こんな時に森に行くわけがない。戦地に戻りながら索敵を広げたが、ロディは見つけられなかった。

 帝国め、卑怯な手を使いやがって!
 僕が脅威だからといって、僕の弱点でも調べ上げて、僕を戦闘不能にするつもりだな?
 迷いはなかった。

 敵陣の真ん中に下り立ち、堂々と敵大将を探す。
 いたいた。初日を終えてさっそく酒盛りをしているようだ。
 焚き火を囲んで歌いながら踊って、まるで祭りのような騒がしさだ。

「おい! 僕のロディを返せ!」
 僕は雷を当てて大将の動きを封じると、魔力でできたロープで大将をぐるぐるに巻いて、敵陣の中を引き摺りながらロディを探した。

「僕の夫を攫った奴はどこだ!」
「ロディを返せ!」
 足場の悪い場所を引き摺り歩いたせいで、大将は殴ってもいないのにボコボコの顔になっていた。
「た、頼む、俺は知らねぇ、助けてくれ……」
「いいからロディを返せ!」

 敵陣を引き摺り回しながら、雷の魔術の応用で鉄を上空に集めていった。剣や槍だけでなく、鉄でできた防具や盾も一緒に引っ張り上げた。

「頼む! もうやめてくれ、撤退するから」「その剣だけは……」「お願いだやめてくれ!」
 顔を引き攣らせながら、周りからもそんな声が聞こえてくる。
 僕は上空でまとめ上げた奴らの武器を高温でぐにゃぐにゃにして丸めて鉄の塊にすると、陣の中央にドカーンと落とした。

 これだけしてもロディを出さないということは、ここに犯人はいないのか?
 攫ってどこかへ連れ去ったということか?
 敵大将を投げ捨て、僕はまた飛翔魔術で飛びながら索敵を広げて探し始めた。

 そう遠くまでは行っていないはずと考え、敵陣近くから探していく。
 そこで引っかかったのは、ロディの少ない魔力ではなく、僕がロディにあげた防御結界のペンダントの魔力だ。急いでその場所へ向かう。
 待ってろロディ、すぐに助ける!


 
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

脳筋剣士と鈍感薬師 ~騎士様、こいつです~

季エス
BL
「ルカーシュは、駄目よ」  その時胸に到来した思いは安堵であり、寂しさでもあった。  ルカーシュは薬師だ。幼馴染と共に、魔王を倒すために村を出た。彼は剣士だった。薬師のルカーシュは足手纏いだった。途中で仲間が増えたが、それでも足手纏いである事に変わりはなかった。そうしてついに、追い出される日が来たのだ。  ルカーシュはそっと、瞼を伏せた。  明日、明日になったら、笑おう。そして、礼と別れを言うのだ。  だから、今だけは、泣いてもいいかな。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

契約書はよく読めとあれほど!

RNR
BL
異世界で目が覚めた、就職浪人中の美容系男子、優馬。 最初に出会った美しい貴族青年は、言葉が通じないが親切に手を差し伸べてくれた。 彼の屋敷に招かれた際、文字は読めないもののなにかの書類にサインをすると、その彼と結婚したことになっていて……。 この世界で何をする? また無職生活? 本当にそれでいい? 葛藤する日々と、それを惜しみない愛情で支える夫。 理想の自分と、理想の幸せを探す物語。 23話+続編2話+番外編2話

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。