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六章:開放 アダム視点
47.救出
ボロい小屋からロディのペンダントの魔力を感じた。そしてロディの魔力もあった。ロディ、今助ける。
僕は迷わず建物を吹き飛ばした。木でできた馬小屋のような建物は魔術で簡単に吹き飛んだ。
「ロディ!」
「アダ、ム……」
「こんなもの!」
ロディの首には鎖に繋がれたベルトが巻かれている。酷い趣味だ。ベルトを引きちぎって投げ捨てる。ロディを抱え、吹っ飛ばした建物ごと、トルネードに人も武器も建物の残骸も全て閉じ込めた。
ロディは僕の腕の中で苦しそうに息を荒げている。顔も赤い。幸い服を着ているし着衣は乱れてはいない。痛めつけられて血が出ているってこともない。
何をされた? 毒か? 慌てて解毒魔術を発動するが、ロディの僕を見上げる視線がとろりと蕩けていることに気付いた。ハァハァと乱れる息がなんとも色っぽい。
とにかく早く帰ろう。こんなところに長居する気はない。
「竜巻は朝まで止まらないから。運が良ければかすり傷程度かもね。運が悪ければ四肢の欠損か、最悪死ぬかも。僕の夫に手を出した罰だよ。次やったら命は無いからね。じゃあね」
あんな奴ら死んでもいいんだが、ロディはそれを望まないんだろう。
怪我くらいして当然。むしろすればいい。
飛んで帰る途中で、敵陣に向けて犯人の居場所は北東のトルネードだと伝えた。余計なことをした奴らを帝国の兵たちも許しはしないだろう。あいつらのせいで武器も失うことになったんだ。
そして憂さ晴らしに敵陣の天幕に雷を落としていくつか焼きながら帰った。
上空を飛んでいる時にも何度か解毒の魔術を使ってみたんだが、ロディの様子は変わらなかった。いや、むしろ……
イケメンから劣情を煽るような吐息が漏れていて……
「ロディ、もしかして媚薬盛られた?」
「あっ……んん……」
「そっか、媚薬だと解毒魔術は効かないからな……僕のこと欲しい?」
「アダム……欲しい。アダムだけが欲しい」
これは夫である僕の役目。ロディ、何もされてないよね? 大丈夫だよね? ロディはイケメンだ、キスくらいされているかもしれないと思ったら、腸が煮えくり返る。
しかし媚薬で発情してしまったロディにトロトロに溶かされ、甘い蜜に絡められると、もうそんなのどうでもよくなってしまった。ロディが無事で、僕を愛してくれる。それだけで幸せだ。
「アダム、愛してる」
「アダム、好きだ」
「アダム……」
ロディ、僕も愛してるよ。言葉にはなかなか出来ないけど、愛してる。
その日のロディは、無理だって言っても離してくれなくて、苦しくてたまらなかった。それなのに嫌じゃないんだ。
ロディの熱が僕を溶かして、大切そうに抱きしめられて、でも激しく揺さぶられる。
二人が混ざって、本当に一つになったみたいだと思った。
僕はいつの間にか寝ていて、朝になって起きると、腰が取れていた。
本当に取れたのかと思った。動かないし、それなのに痛みはあるし、巨大な岩でも乗せられたのかと思うほどだった。
ゆっくりと治癒を流していく。
ふぅ~
それでも完全には治らないか。それとこの体の怠さ。もう今日はベッドから一歩も出ないと宣言したいくらいの倦怠感だ。
怠い体の首だけを動かして横を見ると、イケメンがあどけない顔で眠っていた。
シーツはぐちゃぐちゃだし、色々体液的なものも……
いつもは最後の片付けや掃除まで全部ロディがやってくれるんだが、今回はロディも寝落ちしてしまったようだ。
浄化で綺麗にしたけど、シーツのぐちゃぐちゃだけはどうにもならなかった。
横になったまま、魔術が堪能でよかったなと思いながらゴロゴロしていると、軍団長アンガスが訪ねてきた。
敵兵たちが撤退しているからうちも撤退していいか? とのことだった。
敵兵はもう戦えない。なぜなら僕が武器を鉄の塊にして捨てたからな。
ということでこっちの兵の撤退を許可した。
話をしているとロディが目を覚ましたが、申し訳なさそうにシュンとしている。
「ロディ、何をされた?」
一応これは聞いておく必要があった。された内容によっては、奴らを殺しにいかなければならない。
「アダム、ごめん。優しくできなくて、それに、攫われたから……」
「何をされたかは言えないの? キスした? 格闘は?」
「してない。担いで攫われて、暴れて、草を嗅がされて、目が覚めて、毒を飲まされて、我慢大会だと言われて、俺が毒で死んでいくのを、みんなで酒を飲みながら眺めていた」
あいつら変態だったのか。イケメンに媚薬を飲ませて発情していく姿を眺めながら酒を飲んでいたとか、いい趣味してんな。
ロディが耐えられなくなったら容赦無く犯すつもりだったんだろう。
ロディを助けた時、もうかなり薬は効いてる感じだった。
ーーアダムだけが欲しい。
そう言ったロディ。どんなに欲望が湧き上がっても、僕以外を求めたりはしないってこと? そこまで僕のことを深く愛してくれているんだと思ったら、本当に愛しいなって思った。
しかしロディが白状した内容は、自分から戦場を見にいったということだった。
怒りが湧いて、怒鳴ってしまったが、ロディが小刻みに震えながら謝罪を繰り返す姿に、それ以上責め続けることはできなかった。
ロディの手首には赤く擦れた痕がある。昨日は気づかなかったが首にも。鎖に繋がれ、手も拘束されていたのか……
ずっと痛くて怖い思いをしてきたのに、またそんなことをされたのかと泣きそうになった。
治癒で表面的な傷は治るけど、恐怖や辛い感情までは治せない。
浅はかだったのは確かだが、ロディは知らないんだ。戦場というものを。
世の中には変態がいるし、悪い奴がいるってことを。どんな奴からも僕が守ってみせる。
ロディに世の中には変態や悪い奴がいるのだと、何をされそうになったのかを教えた。ロディは格闘は結婚している者同士がするのだと思っていたらしい。
そんなことをされそうになっていたのだと知って、顔色を悪くした。やっぱり分かっていなかったんだ。
媚薬というものの存在も知らなかった。毒を飲まされて死ぬと思っていたようだ。
「アダム、俺はアダム以外としたくない」
「僕もロディ以外としたくないし、してほしくないよ」
僕がそう答えると、ロディはあからさまにホッとした。僕だってホッとしてる。ずっと僕だけのロディでいてほしい。
ロディからペンダントを回収し、魔道具工房へ持ち込んだ。
「僕以外が一分以上ペンダントの主に触れたら、触れた相手が気絶するようにしてほしい。
それと、僕から一定以上距離が離れたら魔力を発信し続けるようにしてほしい。解除するまでずっとだ。
あと、僕の位置情報が表示される魔道具も作ってほしい」
「アダムヘルム様、まさかとは思いますが、奴隷でも買われましたか?」
「僕の夫用だ」
束縛の酷い夫というような目で見られたが、ロディを守るためには必要だし、ロディだって僕の居場所が分かる魔道具を持つんだ。お互いを心配しているだけなんだから、そんな目で見ないでほしい。
全部を付与するというのは無理だった。
ペンダントには、防御結界の応用で一分以上僕以外が触れたら雷で気絶するものを付与してもうことにした。
僕から距離が離れたら、魔力を発信するのは一緒に付与できないから、もう一つペンダントを作るか、指輪やバングル、ブローチなどに付与するとのことだった。指輪か、それはいいな。
それならお揃いの指輪をつけて、ロディには魔力が発信されるもの、ロディに渡す魔道具には僕の指輪の位置情報を登録すればいいと言われて、お揃いという言葉に惹かれて提案を受け入れた。
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校正・文体の調整に生成AIを利用しています。