【完結】破壊神のお婿さんはイケメンらしい

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八章:決着 アダム視点

58.嫉妬と意地悪

  

 僕たちに相談に訪れた日から数日後、トミーとクルートは馬に乗って王都へ向かった。
 馬なら十日もかからずに着けるだろう。

 そして今年もロディが楽しみにしている【『毛玉』狩り大会】の季節がやってきた。
 帝国は秋になっても戦争を仕掛けてくることはなさそうだし、今年も『毛玉』を美味しくいただく楽しい祭りを開催することになった。

「アダム、今年も出ていいか?」
「もちろんだ。今年は誰と出るんだ?」
「今年はカミーユとランスと一緒に出る」
「ランス? それは誰だ?」
 たぶん兵の誰かだと思うが、てっきりアストロやフライツと出ると思っていたから、聞きなれない名前に動揺した。ロディのお気に入りってことはないよな?

「ランスは最近仲良くなった。兵舎裏の『モジャ』を摘みに行った時に何回か会ったんだ。他の兵は香水を使うようになったけど、ランスは『モジャ』のフワッとした感触とモジャモジャした感じを可愛いと言ってくれたんだ」
 むぅ、そんな輝くような笑顔で他の男の話をするなんて……
 いつも眩しいイケメンスマイルが、今日はドキドキではなくザワザワした。

 僕だって『モジャ』を可愛いと思っている。『モジャ』というよりは『モジャ』を愛でるロディが可愛くて仕方ない。『モジャ』を摘みに行って会うって、まさかロディを待ち伏せしていたんじゃないよな?

 元々、人と距離をとっていたから、兵と関わるのは軍団長を任せているアンガスくらいだった。遠くから訓練を見学することはあったが、顔と名前を覚えているのはアンガスと、ロディの護衛を主にやってくれているカミーユ、アストロ、トミー、フライツくらいだ。
 兵の人選や人材の管理もアンガスに任せていたし、これからはもう少し関わっていくべきかもしれない。

「ランスを紹介してほしい」
「いいよ。今から行く?」
 今からか。心の準備が…………いや、こういうことは先延ばしにしてはいけない。
「行こう」
 そう言うと、ロディは僕の手を取って部屋を出た。

「ランスー!」
 第四訓練場に着くと、ロディーがランスを呼んだ。
 こっちに走ってくるのは……サラサラの金髪の一部を三つ編みにして白いリボンで結んだ、イケメンだ。近づいてくると目つきは鋭いものの、スッと通った鼻筋に薄い唇、目は切れ長でロディより濃いネイビーのような色。負けた……

「ロディどうした? アダムヘルム様を連れてくるなんて珍しいな」
「アダムが『毛玉』狩り大会に出てもいいと言ったから、ランスとカミーユと出ようと思ったんだ。それで紹介してほしいと言われた」
「あぁ、なるほど。ランスです。武器は槍で、風の魔術を少し使える」
 表情は乏しいが、イケメンは表情が乏しくても許されるんだ。ずるい。

「ロディに怪我がないようよろしく頼む」
 僕はそれだけしか言えなかった。ロディと繋いだ手にちょっと力を込めたのは許してほしい。それと、さり気なさを装ってロディとお揃いのペンダントに触れたのも許してほしい。
 チラッと僕が触れたペンダントに視線を向けたけど、ランスの表情は変わらなかった。

「分かりました」
「じゃあランスまた明日」
「うん」
 ランスはロディに色目を使うわけでもなく、すぐに訓練に戻っていった。

「アダム、疲れてる? 部屋に戻ったらいっぱい抱きしめたい」
「あ、うん」
 ロディは周りを気にすることなく僕を抱き上げて、宝物みたいにギュッと抱きしめて歩き始めた。イケメンの香りがして、温かくて、僕が心配するようなことは全然ないんだと分かった。
 顔では負けても、ロディを思う気持ちは負けない。

 僕を抱きしめたまま部屋まで戻って、ロディはそのままソファに座った。
「アダム、辛いことがあるなら言って。情けないが言われないと分からないんだ」
「辛いことなど何もない。ロディが好きだからたまに嫉妬するだけだ」
 自分で言って酷く情けない気持ちになる。でもこんなこと隠したって仕方ない。

「アダム可愛い。大好きだ」
 最近ロディはたまに服の裾から手を入れて背中を直に撫でてくる。フライツの真似か?
 温かい手が気持ちよくて、ちょっとゾワゾワして、はぁ~っと吐息が漏れた。

「アダム、これ好き? もっとしてほしい?」
 そんなこと答えるのは恥ずかしい。でも、ロディには抗えないんだ。
「うん、好き。もっとして」
「これだけでいいの?」
 たまにロディは意地悪だ。ちゃんと素直に言えば、ロディは応えてくれる。だから僕はロディの服の裾を握りしめて言う。

「格闘、したい」
「うん、いいよ。俺もそう思ってた」
 分かってたけどそう言ってくれるロディだから身を任せられる。

「アダム、意地悪言ってごめん。大好きなんだ」
「うん。僕も好きだよ」
 甘い蜜に絡められて、僕はロディにされるがまま快楽だけを享受する。

「ロディ、僕だけ好きでいて」
「アダムだけ愛してる」
「うん。僕も」
 まだ僕はロディに面と向かって愛してるが言えない。でも分かってくれるよね?
 僕だってロディだけを愛してる。

 肌を合わせると、ロディの熱が伝わってくる。この温度が心地いい。本当に一体になっていくみたいだ。

「ロディ、いつも僕はロディに任せてるけど、それでいいのか? 僕も何かした方がいい気がするんだが、何をすればいいか分からない」
 身も心も満たされて、幸せの余韻に浸る。お風呂で全身を丁寧に洗われながら、僕はロディに尋ねてみた。

「アダムは可愛いアダムを見せてくれるだけでいいよ。俺はそれだけで幸せだから」

 これってさ、誰に相談すればいい?
 できれば眉毛のじいさんに相談したいところだが、ハーマイン家が雇っている者になど接触できない。
 となると、恥を忍んでセドリックに閨の先生を用意してもらうか?
 兵に聞くか? 一体誰に?
 口が固そうな、トミーか? トミーは今は不在だ。フライツなんかどうだろう? いや、頻繁に顔を合わせる者に聞くなど恥ずかしくて顔を合わせ難くなる。
 僕は小さな悩みを抱えることになった。


  
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