60 / 75
八章:決着 アダム視点
60.イケメン怖い
また昨夜もロディにトロトロに溶かされて、甘い蜜で絡め取られた僕は、やっぱりこのままじゃいけないと思って訓練場へ向かうことにした。
適当に口が固そうな兵に聞いてみようと思う。
兵舎裏に『モジャ』がたくさん生えているとか言っていたな。そこもちょっと見てみよう。
ロディを真似て、『モジャ』の香りで心を落ち着けてから向かおうと思った。
おお、あった。夏にかなり成長したのか、今年はまだこんもりと『モジャ』が残っていた。
しゃがんで二本ほど茎を折る。スゥーっと香りを吸い込んで、いい香りを肺に取り込む。そこで気づいた。ロディの香りは、『モジャ』とロディの香りが合わさったもので、『モジャ』だけではイケメンの香りを完全再現することができないと。
そうか。じゃあ『モジャ』の香水をつけているからといって、みんながイケメンの香りってわけじゃないんだな。
「アダムヘルム様?」
急に後ろから名前を呼ばれて振り向くと、ロディと仲良しのイケメン、ランスがいた。
僕は思わずロディとお揃いのペンダントを握ってしまった。
「ふはっ、大丈夫ですよ。アダムヘルム様とロディの仲に割り込んだりしませんから」
バレていた。イケメンが笑っている。この前は無表情だったくせに、この笑顔、イケメンはずるい。
「僕は別に……」
しどろもどろになりながら目を背けると、風が吹いてランスの髪がサァーっと靡いた。
光が透けて黄金のように綺麗な色だ。思わず目で追っていた。ロディの輝く銀色の髪には負けるけど。
「俺、結婚してて娘もいるんで心配しないでください」
「あ、そうなんだ」
嫉妬心が湧いてザワザワしていた僕がバカみたいだ。僕はロディのことになると余裕がなくなる。
なんだかものすごく恥ずかしい。
もうランスでいい。どうせ恥ずかしい思いをしたんだ。恥ずかしいのがあと一つくらい増えたってどうってことない。
「ランス、相談していいか?」
「え? 俺でいいんですか? 俺のが優れていることなんて槍の使い方くらいしかないと思うんですけど」
「いや、そんなことはない。ランスは子どもがいるんだろ?」
ランスは不思議そうに僕を見てきた。僕はすぐに目を逸らして手に持った『モジャ』を見つめた。
僕は話した。
「夜にベッドでゴニョゴニョがゴニョゴニョで、そしてゴニョゴニョだ。どうしたらいい?」
「はい? ゴニョゴニョばかりで全然何を聞きたいのか分からない」
だよな。しかし格闘という隠語はランスには伝わらない。言葉に出せずどう伝えていいのか分からなくなった。
「ロディのセックスに満足できないってことですか?」
「い、いや……逆、だ」
イケメンがそんな言葉を口にするなんて……
「じゃあ自分の夫は床上手という自慢ですか?」
「そうではない」
「じゃあなんです? 激しすぎて辛いってことですか?」
「そうでもない。その、ロディばかりに頼りすぎているんだ」
とうとう言った。これで伝わるか? 分かってくれるか?
「うーん、ああ! エッロい仕掛けをしてロディの度肝を抜きたいということだな」
僕の威厳は消えた。ちょっとだけ丁寧に話してくれていたのに、ランスはそんな言葉も使わなくなった。
「そ、そう、かな……」
合っているのか?
「それ俺に聞く? 俺の嫁は女だから男同士は分からん。ジェムとモークが適任そうだ。行くぞ」
ランスに腕を掴まれ、僕は戸惑いながらジェムとモークとかいう人物の元に連れて行かれることになった。
知らない兵に色々知られるのは恥ずかしい。しかもベッドの上でのことなど……
しかしなんだかランスに逆らえなかった。
ランスはジェムとモークと言ったのに、二人だけと思いきや、僕は十数人に囲まれることになった。
休憩室に入ると、ランスが大声で言ったんだ。
「アダムヘルム様がロディにエッロい仕掛けしたいんだとよ! いい案ある奴いる~?」
「へえ~面白そうじゃん」「やっぱ透けた下着だろ」「だいたい二人はどっちなんだ? ロディが受ける側か?」「逆だろ」
僕が羞恥に悶えていると、勝手に盛り上がって、どんどん人が集まっていったんだ。
そして僕は大勢に取り囲まれ、僕がロディに任せっきりなのだと告白することになった。
恥ずかしすぎて両手で顔を覆って、もう手を退けることはできない。
「アダムヘルム様は無知で可愛いな~」
「アダムヘルム様でもできないことがあるんだな」
そして、なんかとてもオープンに色々と教えてもらった。
口でするとか、上に乗るとか、誘い方とか、こんな下着があるとか、どこの店のオイルがいいとか、そんなことも教えてもらい、なんだか兵と距離がグッと近づいた。
「アダム~! あ、いたいた、ここにいるって聞いて迎えにきたよ~」
こんな卑猥な話をしているところにロディがきた。まさか聞かれてないよね?
「あ、うん。もうお茶の時間?」
「みんなで集まって何してたの?」
「えっと、その、ざ、雑談だ」
「そっか」
ロディは両手を広げて輝くような笑顔で待っている。
こんな話をした後で、僕はロディの胸に飛び込むのか?
もう十分恥ずかしい思いをしたんだから、一個増えても変わらない。僕はロディの胸に飛び込んだ。
ギュッと抱きしめられて、そのまま抱き上げられた。
ヒューとか口笛なんかで囃し立てられながら休憩室を後にすることになった。
僕は、相談する相手を確実に間違えた。ランス怖い。イケメンは危険だ。
あなたにおすすめの小説
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
脳筋剣士と鈍感薬師 ~騎士様、こいつです~
季エス
BL
「ルカーシュは、駄目よ」
その時胸に到来した思いは安堵であり、寂しさでもあった。
ルカーシュは薬師だ。幼馴染と共に、魔王を倒すために村を出た。彼は剣士だった。薬師のルカーシュは足手纏いだった。途中で仲間が増えたが、それでも足手纏いである事に変わりはなかった。そうしてついに、追い出される日が来たのだ。
ルカーシュはそっと、瞼を伏せた。
明日、明日になったら、笑おう。そして、礼と別れを言うのだ。
だから、今だけは、泣いてもいいかな。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
契約書はよく読めとあれほど!
RNR
BL
異世界で目が覚めた、就職浪人中の美容系男子、優馬。
最初に出会った美しい貴族青年は、言葉が通じないが親切に手を差し伸べてくれた。
彼の屋敷に招かれた際、文字は読めないもののなにかの書類にサインをすると、その彼と結婚したことになっていて……。
この世界で何をする? また無職生活? 本当にそれでいい? 葛藤する日々と、それを惜しみない愛情で支える夫。
理想の自分と、理想の幸せを探す物語。
23話+続編2話+番外編2話
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。